ただ登っていれば強くなるという幻想

僕は登る前にはなるべくストレッチをするようにしている。

怪我予防とか足上げをし易くするためというのもあるのだけれど、もうそれがルーティン化してしまいやらないと気持ち悪いからやっている。

しかしふと気づいたのだが、毎日ストレッチをしているのにも関わらずここ数年ほとんど自分の関節の可動域は以下の写真くらいから変わっていない。

でもそれも当然と言えば当然で、僕は自分の間接の可動域を広げようと思ってストレッチしているというよりは、固まった身体をいつもの状態まで戻すという程度にしかやっていないからだ。

僕らが毎日ただ通勤で歩いたところで競歩の達人にはならないし、3食ご飯を漫然と食べてもグルメにはならないし、毎日パソコンのキーボードをひたすら叩いたところで驚異的なタイピングスピードは得られないのと同じ話である。

 

そこでふと思ったのが、これはクライミングでも僕自身を含めて同じ事が起きている人がたくさんいるんじゃないかということ。

ジムで登ったり岩場で登ったりをたくさんしたところでいつもと同じような動きでいつもと同じような強度しかやらなければ、それはまるで僕のストレッチと同じように現状をキープすることはできるかもしれないけれど向上は全く期待できない可能性がある。

もちろんクライミングを始めたばかりの頃は、何も考えずにただ登っているだけで強くなるし上手くなる。

それはなぜかと言えばクライミング初心者にとってはただ登ることで新しいムーブを発見できるし、肉体的にも限界を超える負荷がかかるからだ。

上記の例に当てはめれば、歩くことの初心者である赤ちゃんはただ歩くだけで上手く歩けるようになるし、ただ食べるだけで「あーこれが塩の味ね」などと知識を付けていくのと同様だ。

でもある程度クライミングが上達してくると自分の肉体も発達するためただ課題を登るだけではおそらく自分の身体にはそれほど負荷はかからない。

よっぽど意識しない限りきっとムーブも洗練させられない。

 

とんでもなく強いクライマー達が強くなる秘訣として「ただひたすらに登れば良いんですよ」と言っているのは、半分本当で半分嘘だと思う。

彼らは常に自分の限界をプッシュするようなクライミングをしているし、どうやったら上手くなるか強くなるかムーブを洗練させられるかを考えている。

だから正しくは「ただひたすらに(上達する秘訣を考え続けながら自分の限界を超えるような課題を)登れば良いんですよ」なのだ。

3級クライマーが何も考えずに3級を100本登っても3級クライマーのままだろう。

 

でも別にいつまでも同じくらいの強さのままクライミングをやることもそれほど悪いことだとは最近思わなくなってきた。

現状の強さだって登れる課題はたくさんあるのだからクライミングは無限に楽しめる。

別に僕が限界を超えるようなストレッチで180度開脚を目指していないのも同じ理由である。

 

しかし今よりもっと上手くなって強くなって更に先に広がっているクライミングの世界を見たいなら、漫然と同じことを繰り返して同じ場所にとどまっている現状を打破しないといけない。

ただ登っていれば強くなるという幻想を捨てて、限界を超える何かをやらなければならない。

 

 

ここまで書いて、これってロクスノの考える石ころの第一回の内容とほぼ同じだということに気づき自分のネタ切れを痛感。

でも大切なことは何回言っても良いとも思う。

<ロクスノ72号>

あわせて読みたい

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。