完登クセをつける。「ゴール落ち」と「完登」の圧倒的な差

以前ライノの常連のTKGさんがこんなことを言っていた。

強い人は宿題を残さない。少なくとも、その日に宿題を回収し切るという意思が強い

この言葉を聞いて僕は相当ハッとさせられた記憶がある。

なぜなら僕の場合は

「今日はもうヨレたし、次来たときにやればいいや」(→だいたいやらない)

「ムーブはバラしたしあとは繋げるだけだ。この課題を登る実力はあるな」(→ない。下からやると繋がらない)

「これ以上やると怪我するわ」(→しない。追い込みたくないだけ)

などと考えて宿題を回収し切らないことが非常に多いからだ。

結局こういった最後のワンプッシュを日頃からできるかどうかが、コンペや岩場の土壇場の時に最後にもう1手伸びるかどうかに効いてくるのだと思う。

 

一流クライマー達の言葉の中にもこの「完登クセ」や「宿題回収」を強く意識しているものが見られる。

例えば『Rock&Snow 078』の「メンタルの研究」において、野口啓代さんはこんなことを話している。

コンペでは「登れるか登れないか」しかないので、登れない課題がそのままになりがちです。

普段の練習や岩場で、どんなに時間がかかっても「ちゃんと登り切る」ことが自信につながると思います。

 

また、『クライマーズ・バイブル』において竹内俊明さんはこう言っている。

難しい岩を登るには、メンタルを固めることが重要。

例えば日々のトレーニングで自分の限界グレードを登ること。

それは終了点タッチではダメ

完登すること。

登れたという事実を積み上げていくと、登れるようになる

(ちなにみ『クライマーズ・バイブル』の「クライマーズ・インタビュー」はそれを読むだけでもこの本の値段の10倍くらいの価値があると思います。)

 

また少し違う観点から、ガメラさんこと菊地敏之さんの伝説の本『クライマーズ・ボディ』にもこんなことが書かれている。

筋肉が同じ失敗を繰り返すと、神経系がそのように向かうようになってしまう。

目標のルートで何度も同じところで落ちるなどその典型だが、要するに多すぎる「失敗」の記憶は、失敗しないための協調性を自ら崩してしまうのである。

これは完登という良い記憶を神経に覚えさせた方が良いとも解釈できるだろう。

 

つまり少し整理をすると、「完登をして宿題を回収し切る」ことは以下の3つの面から僕らを押し上げてくれると考えられる。

1つは多くのクライマーが話すように「メンタル」の面から。

限界ギリギリの課題を完登したという事実それ自体が僕らのメンタルを作り上げてくれる。

もう1つは少しメンタルと似ているけれど「神経系」の面から。

完登できるようなクライミングを続けることが神経に良い動きを覚えさせていくことになるだろう。

最後は「フィジカル」の面から。

どんなに疲れていても課題を登り切るためにトライを重ねるということがフィジカル強化のトレーニングに繋がっていることも間違いない。

 

「完登」と「ゴール落ち」には絶望的なまでに埋められない差がある。コンペでも岩場でも。

クライミングはワンムーブを完成させる遊びではない。登り切ることを目指すことがクライミングだ。

 

最近特に完登にこだわるような鬼気迫る登りをしていない自分のために書いてみた。

 

さ、登り切るか。

<Rock&Snow 078>

<クライマーズボディ>

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2件のフィードバック

  1. TS より:

    いつも貴重なお話拝見させて頂いております。
    「ゴール落ち」はちょうど登れるギリギリのチョイ手前のグレード感かと思います。
    そのくらいのグレードの時は完登までに相当数落ちるかと思いますが、
    どんなところに注意を払っているか(失敗トライから何を学んでいるか)が
    上級者とそうでないクライマーの大きな違いの一つかと思われます。
    いったいギリギリのグレードを最小のトライ数で落とせる人はどんな特徴があるんでしょうかね。

    • mic より:

      コメントありがとうございます。

      ギリギリのグレードを最小限で落とせる、つまりオンサイトグレードがレッドポイントグレードに限りなく近い人の特徴ということですよね。

      その答えは難しいですね。
      色々なパターンがあると思います。
      ・オブザベが上手い場合
      ・現場処理が上手い場合
      ・持久力に優れている場合

      一概には私も言えるほどまだ整理できていません。
      今後のブログの重要なテーマとなるかもしれませんね。

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