2018年4月~6月に読んで面白かった本

2018年4月~6月に読んで面白かった本

恒例の読んで面白かった本シリーズ。

最近分かってきたのは闇雲にネットサーフィンしたりamazonのレコメンドとかで面白そうな本を探すのも良いですが、自分の本の興味と合う人を何人かマークしておいてその人が薦めているものを読んでいくと当たる確率が高いですね。

まぁ音楽でも映画でも、それこそ岩の課題とかでも同じことですけど。

それではサクッと紹介します。

これまでの読書感想記事

 


数学的な宇宙 究極の実在の姿を求めて

著者:マックス・テグマーク

訳者:谷本 真幸

ジャンル:物理、数学、哲学

 

MITで宇宙論の研究をする著者が、”まだ論争があるテーマ”としながらも多宇宙論について書いた壮大な本。

こういった話にそれほど詳しくない人は序盤から中盤にかけての初歩的な宇宙に関する話や量子論を読むだけでもきっと楽しめると思います。

例えば「昔の人や地球の大きさや月までの距離をどう見積もったか」「銀河はいつ誕生したのか」「原子はどこからきたのか」「なぜ原子は簡単に崩壊しないのか」といった話を丁寧に書いてくれています。

そして本書のメインテーマである多宇宙に関して著者は4つのレベルの予測がなされると主張しているのですが、正直レベルⅣはほぼ何を言っているのか理解できなかった、、、。

レベルⅠ並行宇宙(インフレーションより予測)

レベルⅡ並行宇宙(インフレーション+ランドスケープより予測)

レベルⅢ並行宇宙(波動関数の収縮のない量子力学より予測)

レベルⅣ並行宇宙(外的実在仮説より予測)

レベルⅠ並行宇宙を少し説明すると、宇宙に関する「地平線問題」(背景放射がどの方向でも一様)や「平坦性問題」(宇宙がビッグクランチもビッグチルも起こらない奇跡的な平坦性を持っている)を解決する理論としてインフレーションという考えがあり、現代では主流となっています。

そしてインフレーションを認めると同時に「我々の宇宙の空間は無限大」「我々の宇宙と同じような並行宇宙(レベルⅠ)は無限個存在する」ということが予測されます。

しかしこの”無限”というのをきちんと考えると、無限の空間が無限個存在するならば「物理法則に従って起こりえるすべてのことが実際に起きている」はずなので、例えば自分自身のそっくりコピーさんが今の自分とそっくり同じ環境でどこかで暮らしているということなども認めなくてはならないのです。

理論からそう導かれるという理屈は頭の中ではもちろんわかっているのだけれど、考えれば考えるほどぞっとしますね。

こんな調子で我々にはSFとも感じられるような話が展開されていき、ワクワクしながらページをめくれる本となっています。

 

 

ORIGINALS 誰もが「人と違うこと」ができる時代

著者:アダム グラント

訳者:楠木 建

ジャンル:思想、経営学

 

35歳とう驚異的な若さでウォートン大学の終身教授となった心理学のアダム・グラントの本。

本書のテーマはオリジナルな人すなわち「みずからのビジョンを率先して実現させていく人」というのは誰もがなれるというもの。

オリジナルな超人達に対する世間一般からの偏見を壊し、彼らは私たちが思っているよりもずっと普通の人だということを示していきます。

1つ例を上げると偉大な起業家とか芸術家とかスポーツ選手とかなんでも良いのですが、ある分野で突き抜けている人は一般には「常に多大なリスクを取り続けている」と思われがちですよね。

しかし著者は実際には彼らは「ある分野で危険な行動をするときは、別の分野では慎重に行動することによって全体的なリスクのレベルを弱めようとしている。むしろ、その別の分野での安心感が、専門分野でオリジナリティを発揮する自由を生んでいる」と主張します。

例えばマイクロソフトの創業者であるビル・ゲイツは大学2年生のときには既にソフトウェアを販売していましたが、そこから丸1年間は学業を継続し、その後も退学はしないで休学をして、さらに両親から資金を出してもらっています。

起業家たちからはビルゲイツは”リスクを軽減させるワールドクラスの達人”とも呼ばれているのです。

こんな調子でオリジナリティに対する考え方を分解・再定義して、一般人の我々にも再現性を与えてくれるような希望がつまっている本となっています。

 

 

世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事

 

 

著者:津川友介

ジャンル:健康、食事、統計

 

これは書店などでも結構流行っていましたね。

医師でもあるUCLAの助教授の津川さんが書いた、食事や栄養に関して膨大なエビデンスからわかったことをシンプルにまとめた本。

巷には「○○健康法」や「××という成分が身体に良い」などという謳い文句が溢れていますが、そのほとんどが科学的根拠に基づいていなく企業のマーケティングに良いように使われているようなものばかりです。

本書では世界中のいくつもの実験などの結果を元に食品を分類するということを試みて、複数の研究結果で健康に良いという報告がされているものを「グループ1」として本当に信頼できる食品としています。

ちなみにグループ1は

①魚

②野菜と果物

③茶色い炭水化物

④オリーブオイル

⑤ナッツ類

ただ僕は以下の2点が少し気になりました。

・わかりやすさのためにあまりにシンプルに書きすぎている

・メカニズムの説明が皆無

例えば、「茶色い炭水化物」とか「野菜」ってあまりに漠然としすぎていますよね。

野菜もきゅうりとブロッコリーとかで全然ちがくない?アルフォートは茶色い炭水化物?(まぁこれは冗談です。注釈で精製されていない炭水化物と書いていますが)

メカニズムの説明も津川さんがTwitterなどで本書ではあえてしなかった理由をきちんと述べていますが、個人的には「なぜそうなのか?」がわかったほうが腹落ちしましたね。

それでも自分の食生活を見直そうと思わせるほど説得力に溢れている本なので読んでみると面白いと思います。

と言いつつ「グループ5」の牛肉とかバターとか大好きだから食べ続けると思うけど。

 

 

生と死の分岐点―山の遭難に学ぶ安全と危険

著者:ピット シューベルト

訳者:黒沢 孝夫

ジャンル:登山、クライミング

 

もはや僕が説明する必要もないくらいのクライマーにとってある意味でのバイブル。

少し古いですが、主に登山やクライミングに関する多数の事故例を集めて安全研究をした本です。

とにかく読み進めると「なんでそんなバカな間違いをするんだ?」と思えるようなものが連発です。

例えば数件の報告がある事故なのですが「岩場でルートの終了点に自分たちでクイックドローをかけてトップロープをしていて最後にそれを回収するときに、おもむろにロープがかかっているクイックドローをまず外してそのまま落下した」というケースがあります。

自分と唯一繋がっているプロテクションを真っ先に外すという自殺行為をするわけないと思う人が大半でしょうが、瞬間的な錯覚によりフォローで後続から登っている最中だと勘違いして外してしまうということが起きるのだそうです。

そのため終了点などの確保支点は中間支点と間違えることが決して無いように

・クイックドローではなくカラビナを2枚それぞれ逆向きにする

・安全環付きカラビナをできれば2枚使う

などを当たり前ですがやらなくてはならないのです。

有名な事故ではクイックドローを作る際にスリングとカラビナを全く耐久性のないゴムで結んだために起きてしまった ティト・トラヴェルサ死亡事故などがあり、これに対してもSNSなどでは「ありえない」などのコメントがいくつか並んでいるのを見ましたが、このありえないことは誰しもがやってしまう可能性があるのです。

日常生活でも「右手にゴミ」「左手にスマホ」を持っている状況でスマホをゴミ箱に捨ててしまうこととかってありますよね?(えっ、ない?)

そういったように人間は本当に勘違いとか考えられないミスをするものなのです。

大事なことはそういう教訓をたくさん自分の中にため込んで、そうならないような仕組み作りとか習慣作りをしておいて安全策をとっておくことだと思います。

続編も是非読んだ方が良いですね。

<続 生と死の分岐点>

 

 

ブルーピリオド

著者:山口つばさ

ジャンル:漫画、芸術

 

まだ2巻までしか出ていなくて完結にはほど遠そうですが、胸にぐっとくる漫画だったので紹介。

毎日遊んでばかりだが勉強もピカイチにできる不良高校生の八虎はただ淡々と流れていく日々に疑問を持ちます。

ノルマをただこなすかのようにテストのために勉強をしたり、みんなでバカ騒ぎしながら朝までオールしたり。

しかしサッカーの代表戦で日本が勝った試合を観戦した直後にふと気づきます、「この感動は誰のものだ?」と、「他人の努力の結果で酒飲むなよ」と。

そこから自分が本当に好きなものであると気付いた「絵」の世界に飛び込み、芸大を目指していく物語です。

特にこの冒頭シーンが自分のクソみたいな大学時代(まぁそれはそれで良い財産なのだけど)とオーバーラップして引き込まれました。

とてもエネルギッシュな漫画で、自分が目をそらしているようなことを見せつけられているようで本当にハッとするシーンが連続します。

青臭いような言葉も多いのですが、それを若いと片づけずに真っ向から自分事として受け止めないといけないと思わせてくれる漫画です。

芸術関係のことがところどころ丁寧に説明されているのも素人にはありがたいですね。

 

 

八木ナガハルの漫画

<無限大の日々>

<2^999>

著者:八木ナガハル

ジャンル:漫画、SF

 

読む人に数学・物理・化学などの知識レベルがある程度ないとわけがわからなかったり元ネタに気づけなかったりしますが、本格的なSF漫画。

『2^999』に入っている「2^999」や「無限登山」とかは何年か前に2chかTwitterかわからないけれど話題になっていたような。

世界設定がふと妄想してしまうようなものが多いので理系人間はくすぐられるかも。

例えば「無限登山」は地球(?)にそびえ立つ無限に高い人工山を登って行ったら何が起きるかということを描いた漫画です。

途中で重力よりも遠心力が強くなり上下が逆転して、軌道速度が光速近い場所にあるホテルでは地表よりも何倍も時間が進むのが遅いので地上のドラマのシリーズを観るのに全く追いつけなくなって、最後の方は時間が止まってしまったり、などなど。

本当に理論的に合っているのかが怪しいことと、オチがうまくついていないことが多い、などに目をつぶれば、想像力をかき立てられる体験ができると思います。

 

 

こんなところでしょうかね。

ではまた!