2016年度下半期に読んで面白かった本

2016年度下半期に読んで面白かった本

クライミング界はワールドカップとその配信有料化のニュースでざわついていますが、
今回は最近読んだ本の中で面白かったものを紹介をするという予想外のmickipediaのムーブ。

 


サピエンス全史

著者:ユヴァル・ノア・ハラリ
ジャンル:人類学

2016年めちゃくちゃ話題になった本。
トミーに薦められて読み始めましたが、やはりベストに面白かった。
『銃・病原菌・鉄』などが好きなら絶対にのめり込みます。
『銃・病原菌・鉄』が「世界の富や権力は、なぜ現在あるような形で分配されてしまったのか?」を紐解いた本であるのに対して、『サピエンス全史』は「なぜ我々ホモ・サピエンスは(地球全体の歴史から見れば)こんなにも短期間に、食物連鎖の大頂点に到達して全てを支配できるまでになったのか?」を紐解いています。
そしてそのカギは「虚構」。
単に言葉を話すだけならホモ・サピエンス以外の動物にも可能な種はいますが、我々は空想上の物事つまり虚構に対して言葉で語ることができます。
そして大昔においてそれは他の種との戦いで協力や作戦を生み出すことができたので、有利に戦いを進められました。
また虚構について思考し語ることで、宗教、科学、企業といったものを生み出すことも可能になっていく。
壮大な人類の物語を読み解きたい方は必読。

 

確率思考の戦略論

著者:森岡毅 今西聖貴
ジャンル:マーケティング

こちらも人によっては一生のバイブルともなり得る一冊。
著者はP&Gのブランドマネジャーを経てUSJに入り、V字回復させたのですがそのノウハウを惜しみなく語っています。
TwitterでLINEの田端さんが絶賛しているから買ってみましたが、マーケティングに関してなんとなくぼんやりと考えていたことがバシバシとすっきり整理されていって目から鱗の連発です。

・ビジネスの売上は自社ブランドに対する消費者のプレファレンス(好意度)によって最大ポテンシャルが決まる
・売上を伸ばすには、以下の3つしかない
1.自社ブランドへのプレファレンスを高める
2.認知を高める
3.配荷を高める
・プレファレンスに基づいてそれぞれのブランドを購入する「確率」が決まる。
それぞれの消費者は買っても良いと考えるブランド名が書かれたサイコロを頭の中に持っていて、それを購買行動の都度振って購入ブランドを決定している

サイコロの話は何も消費材だけに限りません。
例えばクライミングジムだってプレファレンスに基づいたサイコロをクライマーそれぞれが持っていて、都度頭の中でそれを振ってその日に行くジムを決めているのです。
各ジムは良質な課題作り、口コミによる評判、SNSでのアピールによってプレファレンスを上げてクライマーのサイコロの面を奪い合っているのです。
ライノにしか来ないクライマーは、プレファレンスが高すぎるあまり全面ライノの目が書かれたサイコロを持っているということになりますね。笑

 

読んでいない本について堂々と語る方法

著者:ピエール・バイヤール
ジャンル:人文・思想

「本を読む」ということについて改めて考えさせられます。
そもそも「本を読む」とは何でしょうか。
内容全てを1字1句目で追うことなのでしょうか、とりあえず内容を理解することなのでしょうか、それとも目次だけ見ても「本を読んだ」と言えるのでしょうか。
個人的な学びはとにかく「全体の見晴し」が大切ということ。
読んだ本に対しても自分なりの「全体の見晴し」を持っていなければ何も語れないし、逆に読んだことが無くてもその本の位置付けや書かれた背景などを知っていればある程度語ることはできる。
そしてこれって読書だけに言える話ではないのですよね。
仕事でもスポーツでも何でも「全体の見晴し」が無ければいけない。

 

ずる 嘘とごまかしの行動経済学

著者:ダン・アリエリー
ジャンル:行動経済学

たしかFar Yeastの山田さんがTwitterで紹介していて、それで読んでみたら面白かった本。
行動経済学で超有名な『予想通りに不合理』の著者が書いているので外しようがないですね。
人々が不正行為、所謂「ずる」をする時、古典的な経済学では
「ずるによって得られる便益と、費用(見つかる確率と罰則の重さ)を比べて、その上でずるをするかどうか判断している」と説明します。
しかし様々な実験によって、人間はそんな考え方は実はしていないということが次々に浮き彫りになっていきます。
おおまかに言うと僕らは単純に費用便益的な考え方ではなく「そこそこ正直な人間」という自己イメージを保てる水準までごまかしをします。
例え10円であれ人の財布からお金を抜くことは普通の人はできない。
でも職場のボールペンを私物にしてしまうことはだいたいの人間にはできる。
自分がいかに曖昧な道徳の境界線で日々暮らしているかがわかるので自分を見つめる良い機会になるかもしれません。

 

あこがれ

著者:川上未映子
ジャンル:小説

川上未映子さんの味があって独特のテンポの文体は学生時代にそれこそ本当にあこがれた。
今はなんだかフェミニスト代表みたいになってしまっているけれど、、、。
二部構成だけど特に前半のミス・アイスサンドイッチの読後感が、なんか懐かしい気持ちになりました。

「わたしはね、『できるだけ今度っていうのがない世界の住人』、になったんだよ。
いましかないんだ、ってね、わたしはずうっとまえにそれを決めたの」

 

古谷実の漫画たくさん

 

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『ヒミズ』は心に残る漫画ベスト10に入るくらい好きなのだけれど、なんとなく古谷実の他の有名どころをいくつか読み漁りました。
古谷実といえばどこまでいってもその代表作は『稲中』なのだけれど、実は『ヒミズ』以降はシリアス路線も交えたりしています。
読んだのは
『ヒメアノ~ル』
『シガテラ』
『サルチネス』
『わにとかげぎす』
映画になって話題になっていたけれど『ヒメアノ~ル』が引き込まれました。
どの作品も途中かなり猟奇的な暴力や性犯罪描写が出てくることが多いのだけれど、実際にそういう「闇」がこの世の中のどこかに溢れているということは事実。
そういう混沌とした世界の中で「闇」の被害者にならずに普通の生活が保たれていることが如何に幸せかを描きつつ、「闇」の被害者や加害者側に対しても何らかの救済が描かれているような、そんな漫画が多いですかね。

 

筋トレが最強のソリューションである

著者:Testosterone
ジャンル:スポーツ

筋トレ系自己啓発書として一部界隈で話題になりました。
とにかく1ページごとに

・筋トレをするともれなく自信がつきます。上司も取引先もいざとなれば力尽くで葬れると思うと得られる謎の全能感
・筋トレの中毒性がダイエットを成功させる。タバコや酒が止められないのと同じで筋トレや食事制限が止められないのです
・人生で一番優先したいモノを決めろ。例えばそう・・・筋肉
 1.飲み会→寝たい断る
 2.合コン→外食NG断る
 3.何食べよう→タンパク質
 4.旅行→筋トレしたい断る
 5.就職→筋トレ時間を確保できる法を選択
 6.住まい→駅近よりジム近
・「痩せたい!(食事制限や筋トレはしたくない)」みたいなのが多過ぎる。価値のあるものは簡単には手に入らんよ

などが書いてあるとにかくふざけた本なのですが、意外と核心を突いている言葉が多い。
そして「筋トレ」を全て「クライミング」に置き換えるとクライマーはより納得できるのであった。
、、、まぁ買うほどではないかも。笑

てな感じで紹介を終わります。
またこのコーナーは半年後、、、かな?