クライミングのルールの考察6~アテンプトが加算される時・されない時~

クライミングのルールの考察6~アテンプトが加算される時・されない時~

さて久々にルール考察シリーズです。
今回は「アテンプト」に関して。
以前ジムのお客さんと「競技中にジャンプしたらアテンプトって加算されるのか?」みたいな話になったので、アテンプトに関して詳しく調べてみました。

 


アテンプトとは

まずアテンプトとは何かを一応説明しておきます。
アテンプトとは英語で”attempt”、直訳すれば「試み」です。
クライミング競技においては「課題を登る(試みをする)こと」という意味で使われます。
日常的には「トライ」という言葉で代用することが多いでしょうか。
JFAのIFSC ルールを読む(2015 年版) では

「狭い意味で選手が競技をおこなうこと」

と書いてあります。

リードでは基本的に1回のアテンプトにおける高度を競います。
ボルダリングでは競技時間中に何度でもアテンプトができ、完登数が同じ場合は完登に要したアテンプト数で競います。

 

基本ルール

リードやボルダリングでいつアテンプトが始まるのかというと、基本ルールとしては「身体が地面から離れたら」です。
IFSCルール2015にはリード、ボルダリングそれぞれで以下の様に記述されています。

<リード>

6.9.1
選手の身体の全ての部分が地面から離れたときをもってアテンプトの開始とし、競技時間の計測が
開始される。

<ボルダリング>

7.9.1
選手の身体の全てが地面から離れることをもってアテンプトの開始と見なされる。

IFSC ルールを読む(2015 年版) によると、以前はリード競技では、「両足が」地面から離れたら、という記述だったそうですが現在は身体の全ての部分が地面から離れたら、に変わっています。
つまり両足が離れていても例えばおしりなどが地面にまだ残っていればアテンプトは開始されないです。

 

詳細ルール

ではいよいよ本題に入ります。

<アテンプトが加算される時>
主にボルダリングにおいてですが、身体が地面から離れなくてもアテンプトを加算されてしまうケースがあります。
IFSCルールから引用すると

7.4.4
採点のために選手が以下のことをおこなうごとにアテンプト1回が加算される。
a) 7.9.1 の規定にしたがいボルダーを登り始めた;
b) スターティング・ホールド以外のホールドに、手または足で触れた
c) 「ティックマーク」を追加した。

a)は地面から身体が離れた際なので通常のアテンプトの開始ですが、b)やc)は身体が地面に残っていてもアテンプトを加算されてしまうケースです。
なぜなら、スタートホールド以外に触ることは選手にとって大幅に有利な行為となるため、実質的な1トライをしたと見なしアテンプトを加算しているのです。
ティックマークとはホールドにチョークでマーキングをすることです、こちらもホールドに触ったと同様に見なされるためか、ティックマークという選手に有利な行為をとったためか、どちらに由来するのかはわかりませんが、アテンプトが加算されます。

ただ文面通りに受け取れば、アテンプトを犠牲にしてスタート以外のホールドの確認をすることは可能ということです。
(あまりにやりすぎたらイエローカードなど出るのかもしれませんが、、、。あとティックは付けたら消されるのかも不明です)

まとめると、アテンプトが加算される時は、以下の場合です
・(スタート開始前に)スタートホールド以外に触れた
・ティックマークを付けた

 

<アテンプトが加算されない時>

次にアテンプトが加算されない時を見ていきます。
代表的な紛らわしい行為をあげますが、以下の行為はアテンプトが加算されません
・クライミングウォールを触る
・”地面から手の届く範囲で”ホールドのブラッシングをする
・ホールドにチョークを乗せる

アテンプトが加算されるのはスターティングホールド以外の”ホールド”に触れた時なので、クライミングウォールに触れることは恐らく許可されています。

また、

7.7.10
(前略)
選手は地面から届く範囲のホールドのクリーニングをおこなうことができる
(後略)

と記述されているため、地面から身体を離さなければホールドのクリーニングは可能です。

そして最後のホールドにチョークを乗せる行為なのですが、ティックマークは禁止されていますが例えばブラシにチョークを乗せてホールドを磨くことなどは恐らく許可されていると考えられます。
なぜなら、IFSC ルールを読む(2015 年版) に記述されているのですが、2014年まではアテンプトが加算される行為に「ホールドにチョークを乗せる」ことも含まれていたのですが、2015年からは削除されています。
ですのでティックマークにならない範囲ならば、ホールドにチョークを乗せてもアテンプトとは見なされないと解釈できるのです。

さて、ここで記事冒頭で触れた「競技中にジャンプしたらアテンプトって加算されるのか?」という疑問に立ち返ります。
この点に関しては実はJudging Manualで詳しく触れられています。
まずは原文は以下です。

3.9 Jumping to clean a hold
Even if jumping to brush a hold is not allowed (see rule 7.7.11) no attempt can be given for doing this. The competitor should get a verbal warning first and only if he/she continues to do so, receive a yellow card. Jumping to get a better sight on a hold is allowed..

意訳すると以下になります。
「ジャンプしてホールドを磨くことは許可されていないが、それによってアテンプトが加算されることはない
口頭による注意を受け、それでも続ければ選手はイエローカードをもらうことになる。
また、ジャンプしてホールドをよく確認することは許可されている

つまり、以下の行為もアテンプトが加算されることはないのです。
・ジャンプしてホールドをブラッシングする(ただし口頭による注意を受け、更に続ければイエローカードをもらうことになる)
・ジャンプしてホールドをよく確認する

ちなみに1大会で2枚のイエローカードをもらうと失格です。

ですのでこれからはホールドの良い場所を確認するためならジャンプしまくれますね!!

 

終わりに、残る疑問

なんだかすごく簡単なことしか言っていないのにいつも通り長くなってしまいました、、、。
一応すっきりしたのですが、個人的には少し疑問がまだ残っています。
例えば以下など、

・アテンプトが加算される行為を、例えばティックマークをつけるなどを、1度のアテンプトしか許されていないリードでやったら即終了なのだろうか
・ボルダリングでアテンプトが加算される行為をオブザベーションタイム中にやった場合は、予め1アテンプトが加算された状態から競技開始なのだろうか
・離陸が悪い課題で、微妙に離陸しながら足をピョンピョン移動させてしまうみたいなことがあるが、これはアテンプトが加算されてしまうのだろうか(ルールが緩くなって、少しの足移動での離陸ならアテンプトが取られないという話を聞いたことがあるが、、、)
・(最近波に乗っているチャンゲン選手のように)ホールドを見るためでもなくブラッシングのためでもなくパフォーマンスでバク宙などをすることはアテンプトが加算されるのだろうか。笑

誰か前例など知っていたら教えてもらえるとありがたいです。
ではでは。