深く広く考えて、シンプルに実行する

深く広く考えて、シンプルに実行する

徒然なる戯言シリーズ。
新たなトレーニングを始めようとしている自分自身、あるいは他のクライマーに向けて。

きちんと思考することは難しい。
正しい知識と事実を根拠に、先入観に惑わされず、積み上げるように、時には大胆に思考する。

しかしそれ以上に、実行すること、正確に言うならば実行“し切る”ことは難しい。
人間とは意志の弱い生き物で、どれだけ”やる”と決めたことであっても三日後には何事も無かったかのように忘れ去られていることなどざらである。

実行し切れない原因は大きく2つある。
1つは思考が浅すぎるもしくは狭すぎるため、考え出された実行策が自分自身で腑に落ちていない・心から納得できていないため実行する気にならない場合。
そう、やはり“納得は全てに優先する”のである。

もう1つは実行策が複雑すぎる場合。
複雑すぎるために、単純に時間がかかる、心理的に面倒くさくなる、などの理由で持続性が無くなってしまう。

クライミングを例にとってみよう。
なかなか成果が出ない・成績が上がらないから何かトレーニングを始めようとしている人がいるとする。
そういった人は傾向として、大きく以下の4パターンに分けられるのではないか。
(注:あくまで超適当な例です)

1. 浅く狭く考えてシンプルに実行する
例)何となく懸垂を週3で100回ずつすることを始める

とりたてて自分の懸垂力が足りないことも検証しない、また自分の目的に懸垂力が本当に必要なのかどうかも考えていない。
とにかく”強い人は懸垂をしている”みたいな何となくの情報から、”よし、懸垂だ!200回だ!”となってしまう。
実行策がシンプルであることは素晴らしい。とにかく懸垂をすれば良いのだから持続し易そうだ。
しかし、懸垂が自らのクライミング能力を高めてくれるかは全く検証されていない。
狭く浅い思考からシンプルな実行策を生んだところで、ただの愚鈍な人に成り下がってしまうかもしれない。

2. 浅く狭く考えて複雑に実行する
例)何となく毎日懸垂200回、腕立て200回、腹筋200回、2本指懸200回、体幹トレーニング1時間、朝のランニング1時間、低糖質ダイエット、ヨガetc…をすることを始める

こちらは自分もたまに陥ってしまうパターンだが、考えることを放棄して“全てが足りないから全てやろう”と思い、めちゃくちゃ複雑なことを実行しようとしてしまう。
最初の3日くらいは続くが、次第に”なんでこんなことやってるんだっけ?”と感じてくる。
実行策が多すぎるため、肝心のクライミングの時間が取れないし、考えられていない実行策だから効果的でもない。
浅く狭い思考から複雑な実行策を作るのは一番たちが悪い。
非効率的なことをするトンチンカンなやつなのだ。

3. 深く広く考えてシンプルに実行する
例)深く広く考えた末に、懸垂を週3で100回ずつすることを始める

緩い傾斜の課題であれば周りとレッドポイント能力は変わらない、外岩も含めて指を使う課題のレッドポイントは高い、ピンチやスローパーの保持も苦にしたことは無い。
しかし強傾斜で身体を引き付けたり、振られに身体で耐えたりする課題に弱い。
懸垂力を比べてみると、同じくらいの実力のクライマーは皆連続20回できるのに、自分は連続5回しかできない。
コンペで勝つことを目指していて、最近のコンペでも真っ向勝負系の課題がまた増えてきたからこの弱点を解消すべき。
そう思い、懸垂連続15回できるようになることをまずは目指して週3で200回懸垂をすることを始めた。
適当に例を作ったが
・自分の弱点を周りと比べて的確に分析している
・自分の目標に合致したトレーニングになっている
・やることは至極シンプル
となっているので、このトレーニングは持続しそうかつ効果がありそうだ。
やはり何かを実行するときは、深く広く考えると共に実行策を極力シンプルにしなければ持続しないし、シンプルすることで自分の中でも腑に落ちやすいのではないか。

4. 深く広く考えて複雑に実行する
例)深く広く考えた末に、毎日懸垂200回、腕立て200回、腹筋200回、2本指懸200回、体幹トレーニング1時間、朝のランニング1時間、低糖質ダイエット、ヨガetc…をすることを始める

3.の例と同じように自分の弱点についても、目標との乖離についても十分に考え尽くした上で、毎日上記のような多岐に渡るトレーニングが必要だと言う結論が出たとしよう。
人生の全ての時間をクライミングに捧げる気概があり、かつ強靭な意志と壊れない身体をもっているスーパーマンならばこの複雑多岐なトレーニングを実行し切って超人になれるであろう。
しかし、凡庸な僕らにはこんな多くのトレーニングを飽きずに、強い意志を持って完遂し切ることは不可能に近い。
こんなことを真似したら全てが中途半端に終わるだけだ。
何より複雑なトレーニングの中にも絶対に優先順位があるはずだから効率性も高いとは決して言えない。

そうつまり、超人になれない僕らは、深く広く考えてシンプルに実行しなくてはならない。

160205_深く考えて、シンプルに実行する