ヒーローになるには~松本大洋『ピンポン』感想、転じてただの意気込み~

ヒーローになるには~松本大洋『ピンポン』感想、転じてただの意気込み~

アクマ「どうしてお前なんだよっ!?一体どうしてっ!!
俺は努力したよっ!!お前の10倍、いや100倍1000倍したよっ!
風間さんに認められるために!!ペコに勝つために!!
それこそ、朝から晩まで卓球の事だけを考えて・・・
卓球に全てを捧げてきたよ、なのにっ・・・・・・・・・」

スマイル「それはアクマに卓球の才能がないからだよ。
単純にそれだけの話だよ。大声で騒ぐほどの事じゃない。」

アクマ

スマイル

 


はじめに

僕が『ピンポン』を初めて読んだのは高一のとき。
未来が無限に広がっていると思っていた当時の僕は気がつかなかった。
この漫画が残酷なまでに現実を見せつけているということに。

 

ヒーローへの憧れ

思えば僕はいつもヒーローに憧れ続けてきた。

中学の頃バレーボールの全国大会を見て、
高校の頃模試でありえない点数を叩き出す奴らを見て、
大学の頃オセロの世界選手権を見て、
ニートの頃超人的なクライマーを見て、
そして今社会人として恐ろしく優秀な人々を見て。

ペコ「この星の一等賞になりたいの、俺はっ!!」

 

ヒーローになれるのか

漠然といつかは向こう側に行けると思っていた。
でも、本当だろうか。
僕は凡人で終わるのではなく、本当にヒーローになれるのだろうか。

ドラゴン「理想を掲げる事はたやすいのです。
ただ理想の追求を許された人間は少ない。
限りなくゼロに近いのであります。」

 

ヒーローになるには

どの分野にも圧倒的な才能を持った天才はいる。
おそらくどれだけ努力しても僕が天才に勝つことはできない。
自分の才能が発揮される分野を選べれば一番良いけど、人生は短すぎてそんなもの選べやしない。
ではあきらめるのか。

敗北は死を意味するものと思え、竜一。
妥協は腕を切り落とすに等しい。

否、あきらめは死んだも同然だ。
ならどうするか。

やるしかないでしょう。

自分がヒーローになれるかどうかは誰にもわからん。
でも自分が昼寝している間にも周りは着々とヒーローの座に向かっていることは確実だ。
ただでさえ才能に劣る自分が怠けて勝てるわけがないではないか。
さぁ、今すぐやるしかないでしょう!

加速せよっ・・・加速せよっ
ヒーローは急激な成長を遂げる。

 

おわりに

これだけ引っ張っておいて、結局
「やるしかない」
というひどい結論になったことに自分でも驚きを隠せないが、最後に大好きなこの本からの引用で終わる。

「それにしても活動したほうがいいぜ、きみ。
回れ右するたんびにきみの持ち時間は少なくなるんだ。
ぼくはいい加減なことを言ってんじゃない。
この現象世界には、くしゃみする暇さえないようなものさ」

J.D.サリンジャー『フラニーとゾーイー』

<『ピンポン』>