ヨセミテに帰ってきた! 2021年秋ツアー Day35~57

ヨセミテに帰ってきた! 2021年秋ツアー Day35~57

ずいぶんブログ更新の間が空いてしまいましたが、ツアー後半はのんびりトレッキングや易しいクライミングを楽しんでいます。
肩を少し痛めてしまったのもあるのですが、エルキャプの精神的疲れが残っているのかまだ厳しいクライミングにチャレンジする気力が湧いてこないのですよね。
レスト、食事、トレッキング、クライミングを4:3:2:1くらいで本当にまったり過ごしています。
おかげで体重が5kgくらい増えた気がして怖いです。

クライミング的にはそんなに書くことはないのですが、アメリカ南西部を色々巡って良い体験ができたのでざっとですが日記的な感じで記録を残しておきます。

<これまでのツアー記事>

 
 


Day35~39 (11/9~13):フレズノとサンディエゴでレスト

ストームに包まれるヨセミテを後にした僕らは、オークハストの街で腹ごしらえをしてからフレズノのAirbnbで2日ほど純粋にレスト。
その後サンディエゴに向かった。

<下山から直行したオークハストグリルでステーキと肉。このツアーで一番美味しかったかも>

<サンディエゴへの途中、ロスでラーメンtatsu!日本の方が経営されていてレベル高し>

サンディエゴではむっちゃんのこのツアーの目的の1つでもあるサンディエゴ動物園に行った。
広さがほぼ東京ディズニーランドくらいの広大な敷地(0.43km2。TDLは0.51km2)に世界最多の800種類の動物たちがいて、とてもじゃないけれど1日で全て回り切ることが不可能なくらいドでかい規模。

個人的にそれ以上に驚いたのが、
・1人62ドルという高価格(約7,000円なのでこちらもTDLの7,900円~9,400円に匹敵!)
・にも関わらず平日に開園と同時に家族連れなどでごった返し!
だったこと。
日本での動物園のイメージとかなりかけ離れていて興味深かった。

<オニオオハシを撮影する妻。鳥がいる巨大な籠の中に入れるので、近距離で観察できる>

もう一つのサンディエゴでの最大の思い出は、海辺の駐車場で車中泊をしていたら不審な人物に纏わりつかれる怖い体験を2回もしたこと。

・1人目。黒人の男性で、窓をコンコンしてきて「Jumping?Jumbing?」と片言な英語を連発し、お金を出す素振りをしてきた。
好意的に解釈すれば「(彼の)車のバッテリーが上がってしまったからジャンプスターターを貸してくれ」という意味なのかなとも思ったが、英語が通じないし何よりジャンプスターターを持っていないから断った。
この後何度も近寄ってきたのでさすがにドアを開けて対応しようかとも思ったが、やはり無視して車を移動した。
本当に困っている人だとしたら可哀そうだけど、あらゆる可能性を考えると何もしなくて正解だった

・2人目。その後、夜中寝ていると遠くから「Fucking!Bitch!!xxxGirl!!!」などと息継ぎ無しで叫び続ける女性が徐々に近づいてくる。(僕は最初寝ていて気付かなかったが、妻はしばらく前から気付いていたようでその女はトータルで1時間弱は叫び続けていただろう)
僕はこの声のボリュームと流れるようなセリフ回しは常人であるはずがないと思い、「演劇や舞台の練習かな?」と思っていたが、次第に車の周りをグルグルと女は叫びながら回り始める。
そしてホラー映画さながら、車をコツコツ叩きながら周回し始め、最後は車をひっくり返すんじゃないかという力で揺らし始めた。
マジでシャイニング。
これはヤバいと思い意を決して女に向かって窓越しにゴンと叩いて威嚇したところ、女は少し車から離れたのでその隙に車を発進。
事なきを得たが、マジの恐怖体験であった。

やはりアメリカは日本と同じ治安の感覚では絶対にダメだと痛感し(サンディエゴはメキシコと接する国境の都市でもあるのでなおさら)、以降は余程の事でない限りAirbnbやホテルに泊まるようにした。

<翌日から泊まったサンディエゴのAirbnbにいた、人懐っこい犬と、本に乗っかって来るツンデレ猫>

 
 

Day40~46 (11/14~20):ラスベガス&レッドロックス

だんだんと疲れも癒えてきたので、少しだけクライミングをしようと北東へ車を進めネバダ州に上陸しレッドロックスへ。
レッドロックスはラスベガスから車で30~45分程度の距離にある砂岩質のエリアであり、ボルダーからマルチまで多種のクライミングができる。
その名の通り赤い岩が特徴。

魅力的な課題やルートはたくさんあるのだけれど、全然スイッチが入らずV5くらいのボルダーで精いっぱいだった。
しかし真っ青な空の下で気持ち良い砂岩をシンプルに登るボルダリングは楽しかった。
ビショップに雰囲気は似ているけれど、もっとビギナーに間口が開かれているようなイメージ。

<Plumber’s Crackなどいくつかインスタに写真上げています>

マルチピッチはJohnny Vegas(ジョニーベガス)からSolar Slab(ソーラースラブ)に繋げる(5.7,13ピッチ)を1本やっただけ。
しかしこのルートもノブがものすごく発達していて、絶妙にガバやカチが欲しいところに存在する奇跡的な内容。
僕らの日にも何パーティーもいたし、フリーソロをしている人もいた。
13ピッチ登ったあとに長ーい下山で久しぶりのマルチにヘトヘトになったが、こちらもまたクライミングの根底にある長く高く気持ち良く登るということを思い出させてくれた。

<Solar Slabの最終ピッチを抜けた後。向こう側にラスベガスが見える>

間の日にSNCC(Southern Nevada Climbers Coalition)というネバダ南部のクライミングコミュニティが主催する、イベントに参加してきた。
Alex Honnold(アレックス オノルド)やJonathan Siegrist(ジョナサン シーグリスト)が登壇。
アレックスのスピーチは往年の講談師のようで10%も聞き取れず、皆が笑っているポイントで全て置き去りにされた、、、。

ここでも日本との違いを感じた点が2つ。


・まず、こういったクライミングエリアの保全やアクセス問題等を扱うコミュニティイベントに多数のクライマーが参加しているのが驚き。なにより若いクライマーや女性が非常に多い。
もちろんアレックスというスーパースターの集客力(サインの列がものすごかった)、かつラスベガスという大都市かつ岩場のすぐそばという圧倒的に恵まれた環境が成せる業でもあるのだけれど、そもそもの社会貢献やボランティア精神のようなベースの意識の違いも大きいと感じた

・もう1つは、入り口でワクチン接種証明書を求められるのだけれど、入ってしまえば会場内は椅子の間隔も狭く密であり、極めつけはアルコール&スナックが配られるということ。
「この会場内にいる人はみんなワクチン接種済みなんだから、飲んでも食べても問題ないでしょ?」という合理的な態度がいかにもアメリカらしいなと。日本なら絶対このようなイベントでお酒は配れないと思う

<SNCCのイベントの様子>


あといつの間にか11/17の誕生日を迎えて35歳になっていた。
こっわ。

<良い感じのお店でむっちゃんに祝ってもらった>

 
 

Day47~52 (11/21~26):ザイオン

更に北東に進み、アリゾナ州を一瞬かすってユタ州のザイオンへ。
ザイオンはイメージとしては(おそらく)グランドキャニオンのような感じで、砂岩質の何層にも重なった岩壁の間をそれらを削るように川が流れている。
トレッキングや簡易的な沢登りが盛んだが、Moonlight Buttress(ムーンライトバットレス)を代表にトラッドを中心にクライミングエリアとしても非常に有名。

ここで僕らはAngels Landing(エンジェルズ ランディング)という龍の背中のような尾根を歩くコースと、Narrows(ナローズ)というザイオンに流れるヴァージン川を歩いて登っていくコースのトレッキングを楽しんだ。
特にAngels Landingはものすごい数の人でごった返していて、アメリカでトレッキングが幅広い層に人気なのだと肌で感じた。
調べたところ年間30万人がAngels Landingを訪れるらしく、これは(登れる季節の長さの違いはあるにせよ)人が多い年の富士山の年間登山者数に匹敵する。
そう考えるとハイシーズンに富士登山したことのある人は込み具合がわかるだろう。
それでいて、登山道は両側がかなり切り立っていてリスクのある場所もあり、実際に年間1人くらいが滑落で亡くなっているようだ。
まぁ30万人いれば1人くらいは落ちるのかもしれないが、このようなコースを大衆向けのトレッキング的に位置付けて過度な安全整備や規制などをし過ぎない所もアメリカらしい。

(ただし来年からAngels Landingへのトレッキングも抽選制になるようだ)

<Angels Landingの頂上付近>

Narrowsは川の流れ自体は緩いけれど、幻想的な岩壁をわきに水の中をじゃぶじゃぶ進んでいくので面白かった。
水に浸かること必死なので防水ブーツ等の装備を1人50ドル程度で借りる必要があり、洗濯やメンテナンスもアメリカ流で適当なのでレンタル屋は相当儲かっていそうだった。

<Narrows>

クライミングはせっかくザイオンに来たのだけれど、The Headahe(5.10, 3ピッチ)というクラシックなマルチを1本登ったのみ。
しかしアプローチ5分なのにクラックのクオリティも非常に高く、これだけでも大満足。

<The Headahe クラックの周りに適度にカチがあり見た目以上に登りやすい>

ザイオンにいる間はハリケーンという町のAirbnbにお世話になったのだが、ここにいたフラウンダーという犬が最高に愛嬌があるワンパク犬で毎日楽しかった。
懐き方の勢いから1,2歳くらいかと思ったら、あとから6歳と聞いた。
人間換算したら俺らよりおっさんじゃねーか。

<フラウンダー 別れてから2人ともしばらくフラウンダーロス>

 
 

Day53~54 (11/27~28):デスバレー

そろそろ帰国が近づいてきたのでサンフランシスコ方面へ向かうことに。
往路を戻るようにまずは再びラスベガスへ。
このツアーの初めにボルダーマットを2枚買ったのだけれど持って帰るのも大金がかかるしどうするか悩んでいたところ、ラスベガスのクライミングショップDesert Rock Sportsが買い取ってくれることに。
1枚50ドルで計100ドルと、思ったより高い値段で買い取ってもらえて個人的には大分助かった。
(ちなみに、新品は売値1枚160ドルで店の仕入れ値は1枚90?95?ドルらしい)

その後、道すがらデスバレーを観光した。
デスバレーは標高が海面よりも低いところにある谷間の砂漠地帯で、夏は最高気温が50度後半に達することもあるらしい。
場所によってうねるような形状の岩山、カラフルな岩石地帯、細かい粒子の砂漠、塩湖などがあってバリエーション豊かだった。

<デスバレー>

 
 

Day55~57 (11/29~12/1):最後はヨセミテ

2ヶ月に渡るツアーの最後はやっぱりヨセミテ。
まずはMariposa grove(マリポサグローブ)でトレッキング。
フレズノ方面から来て公園内に入る時にいつも看板を目にするが、これまで歩いたことはなかった。
気持ちの良い森で、巨大な木がメインの見どころ。

<Grizzly giant 巨人化能力が手に入りそうな木>


そして腐っても僕らはフリークライマーなので最後はやはりマルチで締め。
ラスト1本に選んだのは初登1936(!?)年と言われている、The Royal Arches(ロイヤルアーチ。5.10a/b, 15ピッチ)!

久々にここで登ってみて改めて感じたけれど、やはりヨセミテの岩が一番好きだ。

The Royal Archesはその内容以上に、登っている途中でバレー内が一望できてこれまでヨセミテで登ってきた色々な岩峰やエリアが目に入って感慨深かった。
ハーフドーム、ワシントンコラム、グレーシャーポイント、ヨセミテフォール、エルキャピタン。
全てが上手くいったわけじゃないけれど、この5年間、本当に心の底から2人でこの場所を目標に取り組んできて充実した日々を過ごせたと思う。
何にも代え難い素晴らしい経験。

<バックにハーフドーム>



こんな感じでツアー終了です。
エルキャプに挑戦できたこととそこで今の実力は出し切ったことが最大のハイライトでしたが、昔からの夢だったアメリカを色々車で巡る旅行もできて大満足です(これでも州4つくらいかすっただけだけれど。アメリカ広大すぎる)。
ただまだしばらくはクライミングはそんなにしないでも良いかなという気持ちです。

新型コロナウイルスのオミクロン変異体がカリフォルニア州でも見つかり帰国後が少し大変そうですが、そのあたりの手続き等や対応はまた後日ブログに書くかもしれません。
とにかくここからも気を抜かず安全に帰国するよう心がけます。

<次の記事>