グレード別初登記録 日本のボルダー編

グレード別初登記録 日本のボルダー編

またしても更新が1か月近く空いてしまいました。
ちょっとした記事でも良いからコンスタントに更新したいのですが、、、。

さて今回は、日本のボルダーに関してグレード別の初登記録を調べてみました。
前回のロクスノ(No.67)で世界のボルダーでやっていたので、ふと日本ではどうなのか知りたくなった次第です。

主に黒本(小川山 御岳 三峰 ボルダー図集)、ロクスノ、小山田大さん等のブログ、を参考に調べましたが、もしかしたら見落としや間違いがあるかもしれません。
かなり昔のロクスノや岩と雪は保有していないので、その辺も集めないとなぁ。

初登記録の表と簡単な解説

ではまず作成した表を貼ります。

※追記※
ちなみに段級グレードは1995年の『岩と雪』169号で初めて発表されたものだそうです。
ですのでそれ以前に登られた課題は後からグレーディングされています。
※追記終わり※

初登記録 B J v03

<1級>

1級で初めて登られた課題は、日本で最も有名な2つのボルダー「エイハブ船長」か「忍者返し」です。
黒本ではどちらも初登年が幅を持って書かれていたため、どちらが先かは判断できませんでした。
このあたり情報知っている方がいたら教えてもらえると嬉しいです。

<初段>

初段は恐らく笠間の「サムライ返し」が初登。
ただしこちらも80~84年と幅があるため、三峰の「一筋の涙」と「ペタシ」が初段の初登課題ということもありえます。
また笠間は他にも初登時期が不明な課題もあるため、その他の課題の可能性もあります。

※追記※
何人かの方から北山公園や王子ヶ岳の課題でもっと初登時期が早い1級や初段があるのではないかという指摘をいただきました。
調べたところ少なくとも王子ヶ岳の「ミラースタンド」(1級/初段)は82年頃に初登されているようですので、この課題が1級や初段の初登課題である可能性があります。
参考ブログ
※追記終わり※

<二段>

二段は御岳の「水際カンテ」が初登。
しかも82~83年という時期に登られていたようです。
小川山で初めて登られた二段である「穴社長」が90年に入ってからであることを考えると、82~83年というのは相当早いですね。

※追記※
「石の人」に「水際カンテ」は初登時は初段だったと読み取れる記述があるというコメントをいただきました。
もしそうであれば初の二段は小川山の「穴社長」ということになるでしょうか。
※追記終わり※

<三段>

三段は解釈の仕方で何通りかあり得ます。
まず92年に小川山の「小川山ジャンプ」が登られているのですが、こちらが発表時点で三段だったかがちょっとわかりませんでした。
ホールドが欠けて今の状態となってからは98年に登られています。

発表時で三段という意味では、初登は御岳の「」の94年。
しかし「蟹」も一部では二段ではないかという意見が出ていますし、黒本にも「核心ムーヴの著しい変化による大幅なグレードダウンは必至で、その後再登した者は、二段とコメントしている」と書かれています。
後程も触れますがグレードを決めるということは本当に難しいですよね。

仮に「蟹」を除くと、95年の三峰の「サンダー」なのですが、こちらも現在は本当に三段あるのか不明という意見がちらほら見られます。
「サンダー」は見たこともないのでちょっと僕は何とも言えないですが。

現在も特に物言いがついていない三段という意味では、初登は御岳の「」の96年となります。

ちなみにここで挙げた三段はなんと全て草野俊達さんが初登!
いやぁ本当に偉大な人です。

<四段>

四段からは室井さんと小山田さんの時代!

四段の初登は有名ですが98年の小川山の「冬の日」。
もう17年も前に登られているのですね、、、。

<五段>

五段もちょっと複雑です。
発表時で五段という意味では、こちらも室井さんによる2001年の小川山の「伴奏者」。
当時はV15(五段+)と発表されました。
しかしその後の再登者の中にはV13~14(四段+~五段)という意見もあるようです。

現在も五段であると言われている課題で考えると、小山田さんによる2003年の鳳来の「白道
発表時はV15以上(五段+以上、もしくは五段/六段という表記もされていました)でしたが、現在は小山田さんはV15(五段+)としています。
小山田大さんの五段リスト
白道は最近になって第二登(第三登という話も聞きますが)が長尾さんによってされましたが、長尾さんもYouTubeには五段としてアップしています。

<六段>

六段はもっと複雑です。
一応ここではV15/16という課題も含めて考えます。

発表時六段だと、先ほど挙げた「白道」。

現在も六段だと言われている課題で考えると、1つ目の候補は2009年の室井さんによる瑞牆の「アサギマダラ」。
「アサギマダラ」はまだ中嶋徹さんによってしか再登されていません。
そして中嶋さんは8c(V15、五段+)とコメントしているので、六段といって良いのかは不明。

もう1つの六段の候補はつい先日渡辺数馬さんによって第二登がなされた、日之影の「エターナル」。
こちらも2013年に小山田さんによって初登。
発表時はV15/16(五段+/六段)で、オフィシャルホームページにもそのようにグレーディングされています。
しかし、先ほどの小山田さんの五段リストではV15とのこと。

グレードを決める難しさ

上でも少し触れましたがグレードを決めるっていうのは色々な難しさがつきまといますよね。
小山田さんもブログで触れていますが、その日の自分自身や岩のコンディションによって感じ方は大きく左右されますし、同じ課題でもホールドが欠ければまた変わってしまう。
特に高難度課題になると再登者の数も少ないので、意見自体も多くは得られないですし。

加えて再登者がたくさんいたところで、どうやって意見を集約してグレードを確定させるのかという話もあります。
まぁ個人的には「あくまで初登者にグレード決定の権限があるが、再登者の意見も集め後から変更させていくのも良し」と考えるのが良いのではないかと思っています。
(その意味ではロクスノ60号などでは「伴奏者V13/14」とか「アサギマダラV15」とか一見確定的に書かれていますが、これは室井さんの意見を反映させたものなのでしょうか、、、?)

あとそもそも根本的に「グレードってなんぞや?」というのが決まっていないという問題もありますよね。
「初段とはこうである」とか誰もきちんと説明できないですし。

ただそういう曖昧さ、不確定さが逆にクライミングの良いところかなという気もしています。
きちんとは説明できないのだけど「初段はこれくらいだよね」「四段はこれくらい難しい」みたいなその域に達した人にしかわからない感覚ってなんか良いですよね。

グレード換算に関する注意事項

ちなみにこの記事で用いたグレード換算に関していくつか注記を。
まず基本的にはロクスノなどにも載っている草野さんによるグレード換算表を使いました。
恐らくこちらが一般的だと思ったので。
下にも表を載せますが小山田さんが用いていると思われる換算とは若干違いがあります。

ただ一つだけ自分流に表記させてもらったのが、V13/14などのJapanグレードへの換算表記の仕方です。
ロクスノなどではV13/14は四/五段と書かれているのですが、V13は四段+でV14は五段なので、個人的には四段+/五段と表記した方がわかりやすいと思っています。
百岩アプリなどではこちらで書かれていますね。

あと昔こんな記事も書いたので参考に。
<ボルダリングのグレード換算の公式>

ボルダリングのグレード換算の公式

グレード換算表 v01

終わりに

思いのほか長くなりましたがこんな感じです。
この記事を書くにあたって昔のロクスノとかブログを読み漁りましたが、なんかすごく楽しくなってしまって読みふけってしまいました。
ボルダーの歴史が辿れて満足です。
そして先人達は皆偉大なのだけれど、室井さんと小山田さんは僕の中ではズバ抜けてすごい。
特に瑞牆での室井さんの開拓とか、2003年くらいからの小山田さんの四段・五段の初登の数は半端じゃない。

グレード自体がそもそも要るのかという意見もありますが、個人的には残していきたい文化だと思っていますね。