クライミングのルールの考察4~掲示物・ボルト穴の使用に関して再整理~

クライミングのルールの考察4~掲示物・ボルト穴の使用に関して再整理~

※2021年2月追記※
2019年のルール改定によって、この記事に書かれている内容は古いルールとなっています。
改定後の内容は以下の記事を読んで下さい。

※追記終わり※

今回の記事はルールの考察というほどでもないのですが、
以前このブログで扱った2つのルールに関して2015年で変更等がありましたので、再度整理させていただきます。
細かいので、興味ある人だけ読んでください。笑

 

掲示物の使用に関する変更

1点目は以前のブログ記事
クライミングのルールの考察2~ホールド以外に使用可能なものは何か~
でも書いた、ホールド以外の広告等の掲示物に関する使用可否の変更です。
2014年までは掲示物の使用は禁止されていませんでしたが、IFSCルール2015年版からリードでもボルダーでも「アテンプト失敗」の条件として以下の文言が追加されています。

 

6.9.9
e) Uses any advertising or informatonal placard affixed to the wall, or any part of such material

つまり、
壁などの全てのものに取り付けられている広告や掲示用プラカード
を使用した場合はアテンプトの失敗とみなされます。
何気にめちゃくちゃ大きなルール変更ですね。

これは先ほどの本ブログ記事で紹介したように、2014年ワールドカップでルスタン選手がスタートプレートを使用したことからルール変更という経緯になったのではないでしょうか。

ただ、超屁理屈つけるとホールドと広告の違いって何なのでしょうね。
「Teknik」と書かれたホールドはadvertisingとも取れますが。笑

 

ボルト穴の使用可否に関して再まとめ

ボルト穴の使用に関しても、クライミングのルールの考察3~ボルト穴は使用可能か~
以前ブログで触れました。

上の記事では「ビス止めされたボルトオンホールドの穴の使用可否」に関して、JFAの解釈などが分かれているという内容でしたが、IFSCルール2015変更点を読むとJFAの解釈も若干変わったようで、やはりボルトオンホールドの場合はどのような取り付けられ方がされていても、ボルト穴は使用可能とのことです。
これに伴い、ボルト穴の使用可否に関して、再度きちんと整理してみたいと思います。

 

言葉の定義

まず混乱の原因として、「ボルト穴」という言葉がいけないということに気づきました。
なぜならボルト穴とは、シチュエーションによって以下の2つを指してしまっているからです

「ボルト側の穴」:ボルトオンホールドに空いている穴=holes on bolt-on holds
「ナット側の穴」:ボルトオンホールドを取り付けるための穴= holes provided for the placement of bolt-on holds

ここでは勝手ながら前者を「ボルト穴」、後者を「ナット穴」と呼ぶことにします。

ボルト穴の例
ボルト穴の例

ナット穴の例
わかりづらいですが、壁の穴です
ナット穴の例 壁

オレンジのホールドに空いているボルトオンホールド取り付け用の穴です
ナット穴の例 ホールド

 

単純解釈

定義が終わったので、いよいよボルト・ナット穴の使用に関する解釈です。
ボルト穴とナット穴を分けると、実は非常にすっきりとルールが整理できることに気づきました。

IFSCルールには、「アテンプトの失敗」の条件として以下の様に書いてあります。

 

6.9.9
d) Uses with their hands any holes provided for the placement of bolt-on holds , excluding any such hole on a bolt-on hold

これを単純解釈するなら、
「いかなるボルトオンホールド取り付け用の穴も手では使用してはいけない。ただし、ボルトオンホールドの穴は除く」
となるわけです。
つまり定義した言葉を使うならば
「ナット穴は手で使ってはいけない。ただしボルト穴は使って良い」
となります。

※2021年2月追記※
2019年のルール改定により、ナット穴の使用禁止は手だけでなく足まで広がったと思われます。
※追記終わり※

また、前回の記事に書きましたが、ハリボテなどをピンチした際に親指がナット穴にあたるなど付随的に使用することは禁じられていません。

ですので整理すると以下の表になり非常にすっきりと理解できます。

単純解釈

 

複雑解釈

しかしここで疑問が2点残ります。
1点は前回記事でも書いたように、クライミングウォールのナット穴に関して付随的使用が認められるのかというものです。
例えばカンテなどをピンチで持つ際に親指がナット穴にあたっても良いのかということです。

もう1点は、「ボルトオンホールド上のナット穴は使用禁止なのか」という点です。
もう一度ルールを引用しますが、アテンプトの禁止条件は以下です。

 

6.9.9
d) Uses with their hands any holes provided for the placement of bolt-on holds , excluding any such hole on a bolt-on hold

この後半部分の”any such hole”というのは、文法的にド真面目に捉えるなら”any holes provided for the placement of bolt-on holds”を指していると考えられ、つまりはナット穴を意味しているとも考えられます。
つまり「ボルトオンホールド上のナット穴は使用禁止から除外される」とも読めるわけです。

ボルトオンホールドにナット穴が空いているケースは結構多いです。
例えば以下のホールドではボルト穴の上方にナット穴も空いています。
ボルトオンホールドのナット穴

この「ナット穴」に対してワンフィンガーを極めることは、禁止されているのかいないのか、果たしてどちらなのでしょうか。
この点に関しては更なるIFSCルールの厳密化に期待したいです。

以上を表にまとめると以下になります。
複雑解釈

 

終わりに

何か重箱の隅をつつくような記事になってしまいましたが、やはりルールはできるだけ明快にしておきたいですよね。
少なくとも今回の記事から言えることは
・これからはどこに空いていようと「ボルト穴」には気にせずガンガン指突っ込めます!(安全に十分注意を払った上で、、、)
ということですね。

ではまた!