人工壁の課題にあって岩にないもの

人工壁の課題にあって岩にないもの

6月下旬から1ヶ月ほど(主に肉体的に)忙しい期間が続き、ようやく少しだけ落ち着きました。

・ボルダリング検定 第1回 in Dog Wood調布
・ボルフェス in プレイマウンテン岡崎 のコンペset
・オーナーズオンリー in Rhino and Bird のコンペset
・Rhino and Bird の通常課題set
・ボルダリング検定 第2回 in プレイマウンテン名古屋IC

と人工壁でのセット関係の仕事が毎週あったことに加えて、隙間を縫って瑞牆・小川山にも6日間行ったのでまさに怒涛の日々。

そんな中、人工壁セットと岩でのクライミングを繰り返す内に、ある当たり前のことをあたらめて自分の中で再確認しました。
それはあまりにも当然なことなのですが、
岩の課題には目的も意図もないが、人工壁の課題には必ず目的や意図が存在する」ということです。

<ボル検 Dog>

<ボルフェス>

<オーナーオンリー>

<まぶし壁>

<ボル検プレマン>

 
 


人工壁課題には必ず目的や意図がある

人工壁でのクライミング課題にはその課題をセットするセッターが必ず存在します。
自然発生的にホールドが生えてくることはありません。
そして、そのセットの目的によって課題の作られ方は一般的に異なります。

・コンペ課題なら、リザルトに差が付くように、登ってみたいと選手に思わせるように、観客が盛り上がれるように、etc
・営業課題なら、お客さんがステップアップしていけるように、トレーニングになるように、etc
・ボルダリング検定課題なら、グレードにずれがないように、広くクライミング能力を測れるように、テーマは絞って詰め込み過ぎないように、etc

など、状況に応じて目的と意図を持ってセットされています

もちろん原理的には全くのランダムにセットをすることは可能です。
昔ライノのまぶし壁で「ホールドの向き」と「ホールドの形状」が書かれた2つのサイコロを振って出た目に応じてホールドを指定し課題を作るという遊びをしたことはあります。
ただその場合も目的が「ランダムに課題を作る」ためだとすれば、そのような目的・意図の下セットされたと見なせるでしょう。

 
 

岩はただ存在するだけ

一方で、岩はチッピング(人工的に岩を削ったり、ホールドを追加すること)を除けばその形状やホールド配置等にもちろん意図はないです。
(創造主の存在を否定する立場を取るなら)

ただそこに岩があって、そこに誰かがクライミングのラインを見出して、たまたま存在した形状をホールドだと捉えて、そして登られます。
なので順番としては、まず岩があってそれをクライマーが解釈(?言葉としてもっと適当なものがある気がするが)しているだけなのです。

あまりにも登ってくれと言わんばかりの奇跡的・神秘的なラインを持つ岩がこの世界には存在するため、そこに超自然的な解釈を僕らクライマーはしてしまいますが、科学的な立場を取るならそれはたまたま偶然に過ぎません。
それをラインと見なせるように人間側の目と感性が発達しているということです。

<人工壁vs岩>

 
 

人工壁の課題はどうあるべきか

このように人工壁と岩を対比させると、人工壁の最大の特徴はまさに「作成の目的と意図があること」であると考えられます。
これは僕の立場なので強要はしませんが、人工壁課題は「何のために作られているのか」がはっきりと明確になっているべきだと考えられますし、それこそが岩にはない人工壁の強みであり、人工壁を登る理由だとも言えます。

ですので、営業課題などを大量生産していると疲れてきて「なんとなーくそれらしい課題」を作ってしまうことは僕も正直あるのですがそれは良くないというか作っている意味がないのでやらない方が望ましいですね。
作ろうとしている課題は、どういう人が対象で、どういう動きをさせたくて、何を強くしてあげたいのか、それを極力明確にするべきだと思います。
逆に言えばコンペセットでも営業セットでもファイル課題でも、その目的や意図が尖ってクリアになっている課題ほど良い課題と呼べるのかもしれません。

もちろん、常にそのセットの目的や意図がクライマー的に高尚である必要はありません。
「複雑な動きはなにもないけどウォーミングアップに使いたくなる課題」
「楽しいだけの課題」
「とにかく見栄えがして集客できる課題」
などなど全部ありだと思います。

これは課題を作ってもらう側も心得ておくと良いことかもしれませんね。
例えばまぶし壁のジムなどで自分のために誰かに課題を作ってもらうときはこの目的の部分を明確にして依頼すると、セッターにとっても登る側にとっても良いものができあがると思います。

 
 

と、かなり当たり前の話ですが、自分にとっては課題をセットする上で改めて強く意識したいと思ったことなので書いてみました。
ではまた!

あと、冒頭でようやく忙しさが落ち着いたとか書きましたが、来週もセット2件あってそのあとすぐ世界選手権の解説とかでそこからすぐスコーミッシュなので、全然落ち着いてないことに書き終えて気付いた。。。