二段クライマーは何人いるか?

二段クライマーは何人いるか?

この間書いた記事の「5.13aクライマーは何人いるか」はなかなか好評な上に、自分でも書いていて楽しかったです。
なのでリクエストに応えてボルダー編。
リードの5.13aに対応するボルダラーの目標は二段が皆の手が届くかどうかなグレードな気がするので、「二段クライマーは何人いるか」を考えます。

前回と全く同じロジックだけだとつまらないので、3つ目の方法としてかなり緩いですが「Youtubeの動画アップ数から推定する」というのも付けてみました。

基本的な数字の根拠やあくまでざっくり推定するという指針については、13クライマーの記事で書いたので、今回は触れません。
再確認したい方は↓を参照ください。

<5.13aクライマーは何人いるか>

 
 


前提

まず求める人数は前回同様、
・過去から現在までに二段を以上を1本でも登ったことのある人
とする。

対象課題は
・ジムではなく日本国内の岩場の二段
とする。

 
 

「二段クライマー」の人数の推定

では実際に推定をする。
最初に13クライマーで用いたものとほぼ同様のロジックで計算した後に、フェルミ推定にはロジックがイケているものからユルいものまで色々あるということを見せるために3つ目の方法を提示した。

 

ジム数ベースの推定

基本的にほとんどのクライマーはどこかメインで登るクライミングジムがあると考えて、
「ジムの数」×「1ジムあたりの13クライマーの人数」
という計算をベースに推定する。
詳しくは以下の図。

<ジム数ベースの推定ロジック>

13クライマーの際はジムをリード併設か否かでわけたが、今回はほぼ全てのジムにボルダー壁はあるだろうと考えて、シンプルに550軒をまとめて考える。

 

1ジムあたり二段クライマー数

とすると後は1ジムあたりの二段クライマーの数を考えれば良い。
13クライマー推定の際に、リードメインのジムならば1ジムあたり
・男性15名
・女性3名

過去全て足し合わせると13クライマーを輩出しているという仮定を置いた。
リードにおける5.13aという目標感というか達成までのかかる年数などは、なんとなくボルダーの二段と近しいと感じているので、二段クライマー推定でもこの数字を使わせてもらう。
よって1ジム当たり計18名の二段クライマーを輩出していると置こう。
自分のホームジムだと概ねこの数字は体感に近い。

 

ジムにほぼ行ったことのない勢

13クライマー推定と同様に、現実的にクライミングジムにほとんど行ったことのないクライマーも考慮する。
おそらくジムに行かないようなアルパイン勢はボルダーよりもリードを好むが、そもそも5.13aよりも二段の方が多いので、この層の人数は13クライマー推定と同様の数値を使う。
よって、各都道府県に通算で10人くらいはいると考えよう。

 

算出

上記からジム数ベースで二段クライマーの数を推定すると
・ジムで登る
 =ジム数550軒×1ジムあたり18人
 =9,900人

・ジムにほぼ行かない
 =47都道府県×10人
 =470人

となり、足し合わせると二段クライマーは約10,370人と推定された。

 
 

完登数ベースの推定

推定方法の2パターン目は前回同様に「完登数ベース」。
「1年あたりの二段クライマー誕生数」×「二段が国内にできてからの年数」
という計算式から算出する。
詳しくは以下の図だが、最後の積分ボックスとその係数は後述する。

<完登数ベースの推定ロジック>

二段を輩出するエリア数

まず年間何人のクライマーが二段クライマーに成っているのかを考えるため、二段を輩出しているエリア数を考える。

上述したが二段は5.13aよりも(おそらく)数は多い。
一方で、二段は難易度の幅が広い(と個人的に感じる)ので、初めての二段を達成できる課題やエリアは実はものすごく多様なわけではないようにも思う

関東甲信越なら初めての二段は
・御岳:水際カンテ、遙、忍者クライマー返し
・小川山:犬小屋、忘却の河、The two monks
・瑞牆:エレスアクベ、雷帝、青い日
という方が多いだろうか。
もちろん二段自体を擁するエリアは関東甲信越には他にもたくさんあるのだが、例えば「初めての二段が塩原のヒナ、コプリス」、「初めての二段が神戸のスチャダラ、電池切れ」という方は(僕の主観だと)難易度的にもマイノリティーであるような気がする。

すると実はここは13クライマー推定と同じく、全国的にはそれぞれの地域に平均的にはメジャーなのは3エリア日本全国を8地域に分けと、通算24くらい初の二段を輩出するエリアがあると置いて良さそうだ。

 

二段クライマー誕生頻度

あとはそれぞれのメジャーエリアでどのくらいの頻度で二段クライマーが誕生しているのか考えれば良い。
初めての二段は良いシーズンであろうから、1年の内達成できるのは4ヶ月
上で初めての二段を達成できる課題数はそんなに多くないと書いたものの、そもそもボルダラーの数はかなり多い。
シーズンなら毎週末に1日1人はそのエリアで二段を初めて登る人がいてもおかしくはないように感じる。
よって1ヶ月に10人程度は二段クライマーが誕生すると仮定する。
すると各エリアで4ヶ月×10人=40人の二段クライマーが毎年誕生することになる。

 

現在の年間二段クライマー誕生人数

よって現在全国では
・年間二段クライマー誕生数
 =初の二段を達成可能な24エリア×そのエリアで毎年40人達成
 =960人

となる。

毎年分を足し合わせる 

この年あたり二段クライマー誕生数を毎年分足し合わせれば良い。
だが注意が必要なのはこの960人というのは”現在”の年あたりに誕生する二段クライマーの数であり、昔に遡れば遡るほどその年あたり誕生数は減少するということだ。

13クライマー推定の際は年間の13クライマー誕生数は線形に増加してきた(直線的に増加した)と仮定した。
が、ボルダラーの増加率はルートクライマーのそれよりも多いだろう。
おそらく直近では線形どころではない率で増えている。
なので、ここでは何の根拠もないが、二段クライマー誕生数は二次関数的に増加していると仮定する。
つまり、
・X:年
・Y:年あたりの二段クライマー誕生数
・a:正の実数
として

$$ Y=aX^{2}$$

と置けるとする。

日本初の二段は池田功さんによって登られた御岳の水際カンテであり、それはおそらく1982年だ。
そこから37年が経過し現在は960人となっていることから、シンプルに考えて
(厳密には1982年で0人ではなく1人以上、2019年はまだ半分しか経過していないことの考慮が必要だが簡略化する)

$$ 960=a{37}^{2}$$

$$ a=0.701242…$$

となりaが求まる。

<二段クライマー達成人数仮説>

求めるのは上図のピンク色の面積だが、これは上に出てきた二次関数を0から37まで積分してやれば良いので、

\begin{eqnarray} \int_0^{37} aX^2 dX \end{eqnarray}
\begin{eqnarray} = \left[ \frac{ ax^3 }{ 3 } \right]_0^{37} = 0.701242×\frac{ 1 }{ 3 }×{37}^{3}= 11840 \end{eqnarray}

となり、二段クライマーはこれまでに約11,840人誕生したということになる。
(図中のボックス下に書いた12.3という係数は、計算の辻褄を合わせるために11,840人を960人で割った数字を書いただけです)

 

動画アップ数ベースの推定

ここまでだと13クライマーの時とロジックが同じなので、新たに1つ考えてみた。
それは「Youtubeの動画アップ数から二段クライマーを推定する」というものだ。
これは正直なところかなり”エイやっ”と数字を仮置いたところが多いのだが、それでも推定の方法は多様だということも見せたいのでやってみることにする。

基本ロジックは
「水際カンテの完登者数」×「二段クライマーの何人に1人が水際カンテを完登しているか」
というものとし、この水際カンテの完登者数をYoutubeから推定する。

<動画アップ数ベースの推定ロジック>

水際カンテを登った人数

代表的な二段として最も歴史のある、御岳の「水際カンテ」を用いる。

Youtubeの検索から水際カンテの完登動画のアップ数はざっと54件
まず昔はYoutubeは存在しないのでアップした人はいないこと、そして最近でも動画をそもそも撮らなかったり、撮ってもYoutubeにアップしなかったりする人が大半ではあることから、ここではドタ勘で水際カンテの完登者の20人に1人がアップしているとする。

よって、
・水際カンテ完登者数
=Youtubeアップ件数54×20人
=1,080人
となる。

どうだろうか、ちょっと多いか少ないか感覚的に判断することは難しい。

 

二段クライマーの何人に1人が水際カンテを登っているか

次に全二段クライマーの内、水際カンテを登っているクライマーの割合を出したい。
超代表二段なので関東甲信越の二段クライマーなら5人に1人は登っているだろうか。
逆にその他の地方だとそもそも御岳にいったことのないクライマーも多いので20人に1人とする。

関東甲信越には日本の人口の1/3が集中しているとのことなので、これをクライマー人口にそのまま当てはめると、

(関東甲信越の人口比×完登割合)+ (非関東甲信越の人口比×完登割合)

\begin{eqnarray} \frac{1 }{ 3 }× \frac{1 }{ 5 }+ \frac{2 }{ 3 }× \frac{1 }{ 20 }= \frac{1 }{ 10} \end{eqnarray}

となり、二段クライマーの10人に1人が水際カンテを登っていることになる。

 

算出

以上より、
・二段クライマーの人数
=水際カンテ完登者数1,080人×水際カンテを10人に1人完登
=10,800人

と求められた。

すごい適当な推定だが、3つの異なるアプローチから算出された数値がかなり近しくなった!
特に調整なしでざっとやったのに近しくなって驚き。
(細かいテクニック?を言うと、フェルミ推定は仮置きの数値で結果がめっちゃ変わります。
なので態度としては望ましくないけれど、結果が欲しい数字になるように都合の良い数値を置いていくことは可能なのです)

 
 

結論&検証

というわけで3つのアプローチから、二段クライマーの数は
約10,000人~12,000人程度
と推定されました。
5.13aクライマーが3,000人~4,500人なのでその2~4倍。

どうでしょうかね。
そう考えると、昨今のボルダラーの多さからはちょっとだけ少ない見積もりとなったでしょうか。

ただ前回記事で真剣なクライマー数はざっくり4.5万人とでているので、その上位20%~25%くらいが二段クライマーだと捉えるならば感覚的には間違っていない気もしてきました。

みなさんの感覚と合致しているか知りたいですね。

ひとまずこれでこの推定シリーズは一旦終わります。
でもクライミングの数字系記事は書いていて面白いので、またやるかもしれません。
ではでは。