クライミングはなぜ面白いか

クライミングはなぜ面白いか

なぜ僕らは登るのか。
なぜただの岩登りがこんなにも面白いのか。

自分なりにクライミングの面白さを分析してみた。

まず、結論から言うと以下の三つの要素がクライミングを面白くしていると僕は考える。

①求められる能力のバランスがとれている
②数値化された明確なグレードが存在する
③自然と密接な繋がりがある

一つひとつ説明していこう。

 

①求められる能力のバランスがとれている

スポーツに必要な能力とは何だろうか。
山と渓谷社『フリークライミング』ではそれを以下のように分解している。

・スキル(技術)
・フィジカル(肉体・身体能力)
・ブレイン(戦略と精神力)

そして以下のような円グラフと共にこう語っている。
グラフクライミング

100m走はスキルやブレイン以上にフィジカルの割合が高いスポーツであり、トレーニングの比重もそれに沿って行われる。
ゴルフではフィジカルに比べ、スキルやブレインの割合が高い。
野球はスキルの割合が高く、練習もそれに沿って行われる。
一方、クライミングはスキル・フィジカル・ブレインの三者が同程度の割合で必要となるスポーツである。
山と渓谷社『フリークライミング』

他のスポーツをやっている方々からすると色々反論もあるだろうが、少なくともクライミングがあらゆる能力を必要とするスポーツであることは確かだ。

クライミングをやったことがない人、もしくは初心者は
「結局クライミングってフィジカルでしょ」
と思い込んでいる方が少なくない。

しかしそれは間違っている。
力がなければ登れない課題ももちろん存在するが、大抵は正しいムーブ(登り方)が解決してくれる。

ムーブは
「手の握り方」×「足の置き方」×「体の動かし方」
で決まるが、それぞれ何通りもあるためクライマーはそれこそ無数にあるムーブから都度最適なものを選択しなければならない。

そして「手の握り方」「足の置き方」「体の動かし方」のうまさはスキルに依存するのだ。

参考までに「足の置き方」にはこんなものがある。

・トゥフック(つま先を引っ掛ける)
トゥフック

・はさみこみ(足の裏と甲でホールドをはさむ)
はさみこみ

・ニーバー(足とひざで体を固定する)
ニーバー

また、クライミングでは他人の登りを一切見ずに一撃で登ることをオンサイトと言い最も高く評価される。
オンサイトには綿密な戦略と高い精神力が要求されるため、クライマーはブレインの能力も高くなければならない。

 

②数値化された明確なグレードが存在する

「数字」は人類の発見の中で最も評価されるべきものだ。
数字を使うことで、僕らは曖昧ではなく、厳密な議論ができる。

スポーツにおいてもこれは例外ではなく、
「ゴルフ」や「ボウリング」がスポーツとして成功している理由の一つは、
成績を数値化することで、他人とまた過去の自分との比較を容易におこなえることにあると僕は考える。

クライミングもロープを使わないボルダリングと、ロープを使うリードクライミングでグレードの体系は異なるが課題ごとの難易度が数値化されている。

ボルダリングでは
「10級」~「1級」、「初段」~「六段」
というような段級位グレード

リードクライミングでは簡単なものから順に
「5.2」「5.3」・・・「5.10a」,「5.10b」,「5.10c」,「5.10d」,「5.11a」・・・「5.15a」,「5.15b」
というように、数字とアルファベットによるデシマルグレードというものが存在する。

これによってクライマーはそれぞれ
「やっと3級の課題が登れた!」
「○○さん初段登ったらしいよ」
「将来いつかは5.13aが登りたいなぁ」
などというように、レベルを明確に比較でき、目標を具体的に持つことができるのだ。

 

③自然と密接な繋がりがある

今や都内にクライミングジムが溢れ、室内でしかクライミングを経験していない人が増えている。
しかし何と言ってもクライミングの醍醐味は自然の中で、本物の岩を登ることにあると思う。
自然の中で伸び伸びと美しい岩を登ることは本能的に誰もが憧れることだと僕は考える。

例えば↓これを見てカッコいいと思わない人はいないでしょう。
両方とも尾川智子さんというクライマーの動画です

・Hatchling(南アフリカ)

・チョックストーンアタック(沖縄)

 

こんな感じです。
わかって頂けましたかね。

うーんでもやっぱ分析してもこの登りにかける熱い思いは説明しきれていない気がするなぁ。

最後はこの言葉でしめましょう。

(前略)
なぜならそれが我々のライフスタイルなのであり、そうしたライフスタイルをまっとうすることが自分の最も真面目な生き方なのだということに、我々の頭は、曲がった指関節よりも硬く凝り固まってしまっているからだ。
例えそれがエベレストなどではなく(なんと納得のいく比較!)、10mそこそこの岩、あるいは石に、人生の大目標と定めているとしても、である。
『クライマーズ・ボディ』菊地敏之

 

<『クライマーズ・ボディ』>