一流クライマーの感覚の鋭さ、言語化能力の高さ

もう1週間が経ってしまいましたが、「スポーツクライミング日本選手権リード競技大会2018」が先週末おこなわれました。

大会自体も名勝負が生まれとても印象に残るものになりましたが、今回はYoutubeのゲストとして来てくれた選手との話から気づいた「一流クライマーの感覚の鋭さや言語化能力の高さ」についてちょっと書きたいと思います。

 

<参考記事>

日本選手権リード競技大会2018 出場選手の戦績

 

 

<Youtubeチャンネル>

・決勝


準決勝

 

予選

 

 


大会の感想

とは言え一応大会の感想を簡単に書いておきますと

女子はなんと言っても森選手の強さが際立ちましたね。

ゴールをしてもまだ余裕がありそうな登りでした。

森選手がワールドカップに出場できる年齢になるのは来年ですが、今出ても世界チャンピオンのJanjaとどこまで張り合えるのか見てみたいと思わせてくれる選手ですね。

それと決勝のルートセットが完璧過ぎて鳥肌が立ちました。

上位から

・Top

・33+(ゴール落ち)

・27+

・22

と見事なばらけ具合。

それと話は逸れますが、前ラウンドが同着だった場合の選手の出場順ってどのように決まっているかご存知の方はいますか?

IFSCルールだと世界ランキング上位者が後になると思いますが、国内大会はランダムなのでしょうか。

というのももし野口選手が森選手より先に競技をしていたら、会場の空気感なども変わるため結末がどうなったのかな、と少し思いまして。

 

そして男子は是永選手が圧巻の初優勝。

昨年の世界大会実績からしても優勝が当然と周囲から見られている中、予選・準決勝・決勝と全て首位できちんと勝ち切りました。

特に決勝は勝負所を見極め、本来左手で取るところをあえて右手で入りそこから更に手を出し+をもぎ取って勝つという完璧な読み。

楢﨑智亜選手も同様の手順で+を取ることもできたと思いますが、より上部を目指すために設定通りの左手で入ったところでフォール。

しかしもし楢﨑選手が是永選手と同高度を出しても、カウントバックで是永選手の優勝なのでお互いに最善の戦略を取ったということですね。

ここは名勝負でした。

 

 

 

一流クライマーの言葉

さて本題。

僕は予選・準決勝とYoutubeの実況解説をやらせてもらったのですが、ありがたいことに今回はゲストにセッターや選手がたくさん来てくれました。

セッターの方はルートのことをより詳しい視点で解説などしてくれるため毎回非常に有意義なコメントをしていただけます。

そして今回僕があらためて驚いたのは、一流選手が(1度しかトライしていない)ルートから得る感覚の鋭さや情報の多さ、更にはそれを言語化する能力の高さです。

またルートの内容だけでなく自身や他の選手の登りをとても的確に捉えられています。

選手は予選の時に来てくれたのですが、彼らの言葉で印象に残ったものをちょっと抜粋して紹介しますね。

 

杉本選手

「右手がほぼほぼ持てないので腰でポジションを整えて立ち上がる」

「(中野選手は)どんなポジションでもギュッと固められるのが強い」

 

樋口選手

「左のルートは、蹴り上げて足切って進んでの連続なので自分のリズムを掴めない。右のル―トは、進まないとバランスを崩してしまう」

「ここま止まれなくて、一気にパワーポジションに持っていって力を込めないと後ろに剥がされる」

「身体が上のハリボテに邪魔されて外に出るので、次の手を取りに行くときには不安定になっている。左足に上手く乗ってボテの間に身体を入れ込んでいかないと次を安定して取りに行けない。ムーブというか動き方が難しい」

 

藤井選手

「楢﨑選手は自分のスタイルをかなり強く持っていて、ボルダーでもリードでもほとんど変わらない登りで登れるというのが大きな強み」

「(BJC決勝2課題目のスラブを1撃したが)逆に2回目は無かった。あの1回だったから決めきれた。1度滑ると滑るかもしれないという気持ちになりがちなので」

「フラッシュ方式ではなくオンサイト方式の方が選手の判断を狂わせることがあるので、僕はそこを突くしかない」

 

中野選手

「右ルートは下部7割が気持ち悪い、つまり落ちるかもしれない要素があってセッター冥利に尽きる良い課題」

「左ルートは比較的ポジティブに持てるがボルダー能力が要るパートが上部にありその見極めが必要」

「(セッターに)実力者として世界で活躍していた松島さんや、悪名高く緩い傾斜だったらヤバいなっていうあの人がいたのでセッターは意識した」

「フラッシュ方式ではテンポが大切なので下部で時間は費やせない。しかしオンサイト方式だと一瞬の判断が命取りになり慎重になるので、自身の防衛本能からフラッシュ方式とは登りが違っているのだろう」

 

 

みなさんここまで考えていますか?

おそらくたった1度、しかもコンペという極限の緊張状態の中でここまで冷静にルートの性格などを見極められている人はかなり少ないのではないでしょうか。

それに加えて他のクライマーの登り方なども的確に分析できている。

そしてそれを自身の言葉として語れる。

あらためて一流クライマーの思考の一端に触れることができて、話しながら自分で興奮しておりました。

 

あ、ただ言語化の部分は別に明確に論理的な言葉を選ぶ必要なないと思っています。

例えば野球の長嶋茂雄選手みたいに「グッと」構えて「サッと」引いて「バーン」と打つ、とか表現するのもある意味分かり易いですよね。

だから論理的な言葉を選ぶ必要はなくて、自分自身で噛み砕いた言葉として表現できれば良いと思います。

上で例に挙げた4人はたまたま理論派によっていますが。たぶん。

 

こういうスポーツで使われる擬音語・擬態語的な言葉を「スポーツオノマトペ」と呼ぶのですが、結構昔に読みましたがこの本がそれなりに面白かったです。

 

とにかく、彼らほどまでいかなくとも

「今登った課題を全く覚えていない」

「登れたコツや落ちた要因を全く説明できない」

「自分や他人の得意不得意がわからない」

という状況からはなるべく脱したいですよね。

まぁ集中しすぎて覚えていないとかはあるかもしれませんがね。

 

ではでは。

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