僕が影響を受けた10冊の本

僕が影響を受けた10冊の本

これまで読んだ中で、僕の思考や行動に影響を与えているなと思う本を10冊選んでみました。
好きな本、面白かった本はたくさんありますが、何かしらの影響を受けているという軸で思い返してみました。
なるべく小さい頃からジャンルも幅広く選定。
漫画でも大きな影響を受けているものはたくさんありますが、それは今度別記事にします。



いやいやえん

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作: 中川 李枝子、 絵: 大村 百合子
ジャンル:児童書

1962年初版発行の児童書。
絵本ではありますが、絵は少なくほぼ文章からなっています。
他の本にはない不思議な魅力があって、幼少期にとにかくたくさん読んでもらった記憶があります。
主人公のしげるが色々なところへ出かけたりするお話が短編で7つあるのですが、なんでしょうね、どの話も単純に教訓めいたことや道徳をストレートには説いてこないのですよね。
例えば最後の「いやいやえん」というお話は、おとうさんが赤い自動車のおもちゃを買ってきた場面から始まります。

「赤いじどうしゃなんて、いやだよう。女のじどうしゃなんて、いやだよう。くろいのでなくちゃ、いやだよう。」
「いやなら、よその子にあげるよ。」
「いやだい、あげちゃいやだい。」

朝から「お弁当はいやだ」「保育園に行くのはいやだ」と全てのことに「いやだ」と言い続けるしげるを見かねたお母さんはしげるを「いやいやえん」に連れて行きます。
いやいやえんは園長(?)のおばあさんが子供たちのめんどうを見ている施設なのですが、そこのルールは普通の保育園とは違い自由奔放でわがままも何でもあり。
しげるはそこで他の子供に積み木を取られてしまうのですが

「おばあさん、あの子は、ぼくのつみきをとっちゃったよ。」
「いやいやえんじゃ、かえすのがいやな子は、かえさなくていいんだよ。」

といった調子です。
なので、おもちゃを片付けるのがいやな子たちは片付けないのですが、そうするとおもちゃたちが意識を持ち話し始め

「ぼくたちだって、こんなところはいやだ。なげたり、ふんだり、けられたりじゃ、からだじゅうがいたくてたまらない。」

「もう、がまんできない。しゅっぱつ!」

とどこかへ行ってしまいます。
その後も赤いのがいやだといったしげるにはおやつのリンゴが無かったり、赤いクレヨンがなくて好きな消防車を描けなかったり、お弁当は嫌だと言ったのでお昼御飯がなかったり、と「いやだ」と言った主張がそのまま通ってしまいます。
そして最後にはしげるはお母さんにいやいやえんではなく、いつもの保育園がやっぱり良いや、と言うのです。
今読み返すと、「何でもいやがると痛い目を見るよ」「おもちゃを片付けないとダメだよ」というメッセージは読み取れるには読み取れるのですが、それをあからさまには書かないでちょっとひねくれた描写をしていることがわかります。
全体を通してこのような何とも言えない変わった雰囲気を纏っている、そんな本です。

<おばあさんが怖かった>

 

 
 

算数おもしろ大事典IQ

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監修:秋山久義、清水龍之介、高木茂男、坪田耕三、石原淳
ジャンル:算数、教育、児童書

幼稚園から小学生向けの算数の本。
1994年初版発行ですが、改定されて今でも読まれているようです。
ほぼ全てカラーページな上に図も豊富で、算数(というか一部数学)の魅力がふんだんに詰まっています。
小さい頃に暇さえあればずっと眺めていました。
算数・数学やデータへの興味、辞典的な網羅性、そして学問への入り口、僕の人生の方向性を決定付けた本であることは間違いないでしょう。
まず第一章が「算数の始まりを知るページ」というのがすごくないですか?
「インド人が0を発明した」などの導入から始まるんですよ。
数の単位などもページもイラストがこんな感じでビジュアルに訴えてきて頭にスッとはいります。


読み進めるとどんどんとレベルは上がっていき、「フラクタル」「フィボナッチ数列」「アキレスと亀のパラドックス」「ケーニヒスベルクの橋(一筆書きできるかどうかの話)」など明らかに小学校を逸脱しているテーマも見開きで図解されていて、最後の方はなんと「トポロジー」などまで話題が広がります。


今読んでもトポロジーのページ何言ってるかわかんないんすけど。笑
これは子供ができたら間違いなく家に一冊置いておきたい本ですね。

 
 

新・物理入門

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著者:山本義隆
ジャンル:物理、参考書

僕は高校・大学と物理に興味を持ち、大学では物理工学を専攻していました。
そのきっかけとなったのは大学受験の参考書であるこの『新・物理入門』。
物理とは「もの(物)のことわり(理)」を明らかにしていく学問、つまりこの世界は一体どのような規則の下で成り立っているのか、それは数学的にどう記述できるのか、を考えるものです。
そんな物理を高校生でも頑張ったらなんとか理解できるように丁寧にしっかりと数学を使って書かれているのがこの本です。
僕はゲームの『解体真書』とか『アルティマニア』のような重厚な攻略本を読むのが大好きな子供でしたが、『新・物理入門』と出会ったとき、「これはこの世界の解体真書だ!」と感じました。
例えば力学ではまず最も重要であるとして運動方程式を原理として据え、頭に持ってきます。

aを加速度、質量mの物体に働く力をFとすると、運動方程式は
ma=F

そして原理とは一体なんなのかをこう説明します。

運動方程式や作用・反作用の法則は何からも導かれない式であり、その意味で力学の出発点としての原理の位置をしめる。

それでは原理の正しさは何によって保証されているのかといえば、それは、そこから導き出される諸法則が経験的・実験的事実をよく説明する点においてである。

また、運動方程式も単なる数式としてではなくそれをどう解釈すれば良いかがきちんと書いてあり、そうすることでただの数式が命を持ちます。

運動方程式は「質量に加速度を掛けたものが力である」ということを表しているのでは、決してない。この式は「物体mに力Fが加えられたならば、その結果として加速度aが生じる」という因果関係を表しているのである。

その後運動方程式や作用・反作用の法則から微積分を用いて運動量保存則やエネルギー保存則を鮮やかに導出して行く流れは圧巻。
理論体系としての一貫性、一部大学の数学を用いた論理の明快さ、式が世界をどう記述しているのかという解釈、それらがこの本には詰まっているのです。
単に受験で点数を取るだけならば、この本は要らないかもしれません。
この本は僕らが生きる世界の理を探求する物理学へのまさに第一歩となる本なのです。
同著者の『重力と磁力の発見』も昔に読んだのですが、物理学の歴史が知れる良本だったように思います。

 
 

フラニーとゾーイー

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著者:J.D.サリンジャー、訳者:野崎孝
ジャンル:小説

このブログでもTwitterでも何度か取り上げている青春小説。
大学時代はそれなりに小説を読んでいたので好きな小説はたくさんあり、特に村上春樹さんや川上未映子さんが好きで小説だけにとどまらずインタビューやその他の書籍も追いかけました。
しかし自分の考えに一番影響を与えているのは、上の2人も多大な影響を受けていると思われるサリンジャーの『フラニーとゾーイー』だと断言できます。
前半のフラニーの病的なまでに、自身を含むいわゆる意識高い系、自己顕示欲高いマンを批判して、でもそんなこと気にする自分もまた嫌だ、みたいなネガティブなスパイラル思考がまず当時の自分にすごく刺さりました。

わたしがすごくみんなから認めてもらいたがるような人間だからって、ほめてもらうことが好きだし、みんなにちやほやされるのが好きだからって、だからってかまわないってことにはならないわ。

そこが恥ずかしいの。

そこがいやなの。

完全な無名人になる勇気がないのがわたし、いやんなった。

わたしもほかのみんなも、何かでヒットをとばしたいと思ってるでしょ、そこがいやなのよ」

後半に入り兄ゾーイーが倒れてしまったフラニーを慰めるのですが、理屈っぽくて正論しか言わなくてでも真面目で聞いている方は納得できるけど、うんざりな面も。
このゾーイーもまるで自分が言いそうな嫌味だな、と僕はとても共感してしまいましたねぇ。
そして長い長い説教モードから、最後は圧倒的な救いの言葉。

きみは人生のどこかで ―何かの化身を通じて、と言ってもいいよ― 単なる俳優というだけではなく、すぐれた俳優になりたいという熱望を持った。

ところが今はそいつに閉口してる。

自分の欲望の結果を見すてるわけにはいかないだろう。

因果応報だよ、きみ、因果応報。

きみとして今できるたった一つのこと、たった一つの宗教的なこと、それは芝居をやることさ。

神のために芝居をやれよ、やりたいなら ―神の女優になれよ、なりたいなら。

これ以上きれいなことってあるかね?

さらにこの後かの有名な「太っちょのオバサマ」を持ち出し、小説はカタルシスを迎えます。

舞台に出るってときに、シーモアが靴を磨いてゆけと言ったんだよ。

『太っちょのオバサマ』のために磨いてゆけって言うんだよ。

(中略)

彼は『太っちょのオバサマ』って誰だか僕には言わなかったけど、それからあと放送に出るときには、『太っちょのオバサマ』のために靴を磨くことにしたんだ。

(中略)

『太っちょのオバサマ』でない人間は一人もどこにもおらんのだ。

それがきみには分からんかね?

この秘密がまだきみには分からんのか?

それから-よく聴いてくれよ―この『太っちょのオバサマ』というのは本当は誰なのか、、、

周りの人間がどうだとか、自分の欲望がみっともないだとか、そんなことこれっぽっちも気にしなくて良いのです。
自分の信念通りにやれば、好きなことをひたすら続ければ良いのです。
そうすればどこかで太っちょのオバサマは見ていてくれる。

 
 

利己的な遺伝子

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著者:リチャード・ドーキンス、訳者:日高敏隆、岸由二、羽田節子、垂水雄二
ジャンル:生物学、遺伝学、進化学

奇才リチャード・ドーキンスによる生物の進化や遺伝の常識をガラリと変えた本です。
その理路整然とした自然淘汰の考えは、生物学のみならず人間の行動や経済学を認識する時にも応用できる体系なはずです。
ドーキンスの主張する「利己的な遺伝子」の考えとは、
1. 遺伝子は生物個体とは違い限りない不滅性を持ち、自然淘汰の基本単位となる
2. 遺伝子レベルでは、利他主義は悪であり、利己主義が善である
3. 遺伝子は生存中その対立遺伝子と競い合い、遺伝子プール内で自己の生存のチャンスをふやすようにふるまう
と簡単にはまとめられるでしょうか。
例を挙げると、群れを成しているトムソンガゼルは捕食者が近づいた時に「ストッティング」といって高い跳躍行動を見せることがあります。
これは「群淘汰」という理論で説明されることがあり、集団の利益のためには個人は犠牲を払うことがある、つまりガゼルは仲間に対して警告を発しつつ捕食者の注意を引きつけていると解釈されることもありました。
しかし「利己的な遺伝子」ではこれと全く異なる考え方をします。
捕食者は、簡単に捕まえられそうな獲物を選ぶ傾向があるので、高くジャンプするストッティングをする個体は選びません。
するとストッティングしない個体が食べられるので、結局はストッティングできる遺伝子を持ったガゼルが子孫を反映させ、ストッティング遺伝子(実際はそんな遺伝子があるわけではないが)が遺伝子プール(互いに繁殖可能な個体からなる集団が持つ遺伝子の総体)の中で増えていくのです。
つまりガゼルのストッティングは実は全く逆で捕食者への「ほら、ぼくはこんなに高く跳べるぞ。こんなに元気で健康なガゼルを捕まえるのは君には無理だ。ぼくほどは高く跳べない連中を追っかけた方が利口だぞ」という利己的な遺伝子による信号だとも捉えられるのです。(ここも注釈しておくと、厳密には個体としては利己的でない行動をとることもある。しかし遺伝子にとっては利己的)

この「利己的な遺伝子の」考え方はとても強力な武器になり、一度手に入れると色々と応用できます。
例えば「なぜほとんどの有性生殖をする生物で男女比率は限りなく半々に近いのか」にどう答えますか?
これも遺伝子レベルで思考実験すればよくて、例えばメスに偏ってたくさん産むことができる遺伝子が突然変異で登場したとしましょう。
メスの生殖に必要な精子は少数のオスでまかなえるので特に困ったことは起こらず、このメスたちは繁栄しその遺伝子はとりあえず遺伝子プールの中で幅を利かせていくでしょう。
そしてメスの数がその生物の中で多くなった時、今度はオスを作ることのできる遺伝子が遺伝子的利益を享受する番になるのです。
なぜならライバルのオスが少ないため、そのオスを作れる遺伝子は未来の個体に幅広く浸透できる可能性があるからです。
そうやって今度はオスをたくさん作る遺伝子が増えていき均衡は半々のところで保たれるのです。

おそらくきちんとした生物学や遺伝学的な観点からは細部をはしょったこの簡易的な考えは正しくないところもあるとは思うのですが、この利己的な遺伝子的な考えがあることで生物の謎を自分なりに考えることができるので人生が楽しくなりますよ。
あとドーキンスの筆力が高く、最後まで飽きずにグイグイ引き付けられます。
本当に憧れる。
 
 

銃・病原菌・鉄

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著者:ジャレド・ダイアモンド、訳者:倉骨彰
ジャンル:地理、歴史

ここまで予想以上の分量なのでここからは軽めにします!笑

この本も超超超ベストセラーですが、僕の歴史・地理認識の礎となっている本ですね。
本書のテーマは以下です。

世界の富や権力は、なぜ現在あるような形で分配されてしまったのか?なぜほかの形で分配されなかったのか?
たとえば、南北アメリカ大陸の先住民、アフリカ大陸の人びと、そしてオーストラリア大陸のアボリジニが、ヨーロッパ系やアジア系の人びとを殺戮したり、征服したり、絶滅させるようなことが、なぜ起こらなかったのだろう。

これに対して、よく挙げられる回答である「人種の優劣」「寒く涼しい気候が創造力や物作りのエネルギーを刺激する」などは間違っていると著者は指摘します。
歴史のターニングポイントとなったのはスペインのピサロがインカ帝国の皇帝アタワルパを捕虜にできた瞬間でもありますが、その直接要因は
・銃器、鉄製の武器
・騎馬などにもとづく軍事技術
・伝染病に対する免疫
・航海技術
・集権的な政治機構
・文字
を上げています。
そしてこれらが発達した究極の要因は、大陸が東西に伸びているため気候の変化が少ないことなどから種の分散が容易であり、また馬など適性のある野生種が存在したことだ、と結論付けるのです。

この地理と歴史が繋がるダイナミズムに思わず鳥肌が立ちます。
著者のジャレド・ダイアモンドが自ら足を運んで現地人から一次情報を得て、それをエピソードに挟んでいるのも面白く説得力がありますね。

 
 

考える技術・書く技術

著者:バーバラ・ミント、訳者:山崎康司
ジャンル:論理、ビジネス

これもあまりに名著で、ビジネスマンというか何かを書いたり話したりする人ならば必読の書ですね。
本書が提唱している「ピラミッドストラクチャ―」は簡単に言えば、
・全ての情報はいくつかのピラミッドグループに配置できる
・その頂点には最も伝えたいメッセージがくる
・メッセージの下には「なぜなら(because of)」か「例えば(for example)」を並べる
というものです。
例えばこんな感じ

新卒1年目のコンサルはこのピラミッドストラクチャ―を徹底的に叩き込まれ、議事録やインタビューのメモをこの原則に従って何十回と書かされます。
するとだんだんと自分が話したり書いたりすることも全てがガッチガチのピラミッドストラクチャ―に従って展開されるようになり、コンサルマシーンができあがるのです、、、。笑
というのはあながち冗談ではなく、おそらく僕が自然と書いたり話したりしていることもある程度ピラミッドストラクチャ―化されていて、それが「わかりやすい」とか「読みやすい」と言ってもらえる要因になっていることは間違いないです。

ピラミッドストラクチャ―に関しては他にももっとわかりやすかったり、新しいスタンダード本が発売されているのかもしれませんが、おそらく初めて体系化された有名な本ということで『考える技術・書く技術』を挙げました。

 
 

マッキンゼーをつくった男 マービン・バウワー

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著者:エリザベス・イーダスハイム、訳者:村井章子
ジャンル:経営学、哲学

もともと経営システムの改善・効率化などを主としていたマッキンゼー&カンパニーを、経営者に高度なコンサルティングを提供する組織に変え、トップ・マネジメント・コンサルティンという職業を確立したマービン・バウワーを書いた本。
とは言え単なる自伝に留まらず、経営コンサルティングとは一体何なのかをその哲学や規範のレベルから丁寧に書いているためよく理解できます。
僕自身はコンサルティングファームへ入った後にこの本を読んだため、実のところこの本に大きな影響を直接的に受けたわけではなく、先に諸先輩方からコンサルとは何たるかを叩きこまれました。
その後この本を読んだところ、すべてのページに書いてあることが身に染みて納得できたため、もしコンサルを志す学生や社会人がいれば事前に読んでおくことをオススメします。

マービンがマッキンゼーのアイデンティティとして掲げた
・プロフェッショナルとしてのリーダーシップ
・共通の問題解決アプローチ
・実行の重視

の説明からはじまり、細かい行動規範にまつわるエピソードも多く、思わず頷いてしまう箇所も多いです。
例えば服装規定の話

君の仕事は、事実に基づく現状分析を行い、そこから導き出された提言を実行する勇気をクライアントに持ってもらうことだ。
クライアントの勇気をすこしでも殺ぐようなことは、すべきではない。
気味が何か革命的なアイデアを進言する場合、革命的な服装をしていない方がクライアントは耳を傾けてくれるだろう。
とにかく私たちは、CEOに信頼してもらわなければならないのだ。
もし飛行機に乗ったとき、パイロットがTシャツに赤いスカーフといういでたちだったらどうだろう。
肩に金線入りの制服を着ているパイロットほどには信用する気にはならないのではないか。
要するに、服装規定はクライアントとの信頼関係を築くために決められたものだ。
クライアントに信用してもらいたかったら、無難な格好にしておきたまえ。

今の時代の感覚だともしかすると、古臭いこと言ってるなぁ、と思う人も多いかもしれませんが、こんな小話からもマービンが徹底的に職業倫理と価値観にこだわったことが感じられると思います。
コンサルティングとは何たるかが理解できると同時に、プロフェッショナルの強いこだわりと信念を垣間見れる一冊です。

 
 

「やりがいのある仕事」という幻想

著者:森博嗣
ジャンル:思想、哲学

著者の森博嗣さんは国立大学工学部の助教授時代に書いた『すべてがFになる』などのミステリー小説で有名になりました。
そんな著者が「人は働くために生きているのではない」ということを説いているのが本書です。
上に挙げたマービンバウアーとは真逆のように一見思えますね。笑
印象的なフレーズは以下など。

そもそも、就職しなければならない、というのも幻想だ。
人は働くために生まれてきたのではない。
どちらかというと、働かない方が良い状態だ。
働かない方が楽しいし、疲れないし、健康的だ。
あらゆる面において、働かない方が人間的だといえる。
ただ、一点だけ、お金が稼げないという問題があるだけである。

他にも「肩書きは無効化されていく」「マイナー指向、スペシャル指向になる」「メディアがリセットされ、コンテンツを作り出す仕事が残る」などと6年前から現在の世の中に対して慧眼を持っていたことが伺えます。
僕がクライミングに生活を捧げるべきか迷っている時に出会った本であり、その時の仕事を「やりがいは幻想」とまでは思わなかったけれど、「辞めて好きなクライミングをしよう!」という決断の後押しを間違いなくしてくれた一冊。

そして森博嗣さんがカッコいいのは、実はめちゃくちゃ仕事ができる人だということ。
1日1時間 しか仕事をしないけれど、1時間で6,000文字原稿を書けるという逸話もあります。
ブログ「店主の雑駁」も分量が多く面白い考察をしながら毎日更新を守り続けています。

 

瑞牆 クライミングガイド

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著者:内藤直也
ジャンル:クライミングトポ

クライミング関連で参考になった本は多くありますが、一番影響を受けたという意味では『瑞牆クライミングガイド』でしょう。
発行された2015年当時は僕はボルダリングしかほぼしませんでしたが、この瑞牆本に載っている写真や文章の美しさに圧倒され即購入。
もはや日本のトポでは他を圧倒して群を抜いているし、世界のトポでもこの完成度に匹敵するものはそうそうない気がします。
僕らは全然ルートもわからないのに、写真を眺めたり初登者や再登者のコメントを読み込んだりしていました。
そしてこの本が間違いなく今僕らが日本で瑞牆のルートに惚れ込みひたすら通っている要因となったと言えます。
内藤さんのクライミングへの愛情、周りを巻き込む力、細部までこだわる気質、完成への執念、そんなものがこちらまで伝わってくる作品であり、僕も何か人生をかけてこのような一大仕事をやりとげたいとも思わせてくれる本です。



と、思い出が色々よみがえってきて長々と書いてしまいました。
でも一度はこれまでの本の総括をしたかったので満足です。
残りの人生で何冊素晴らしい本に出会えるだろうか。
ではまた!