2020年4月~6月に読んで面白かった本

2020年4月~6月に読んで面白かった本

四半期に一度の面白かった本シリーズ。

今回は4月に緊急事態宣言が出たこともあり
“ステイホーム期間中にたくさん本を読める!”
と思ったのですが、結果的にそれほど読書には時間を当てられず。
クライミングをする時間が減っても、結局何か新しい別のことを始めてしまい何だかんだ忙しかったです。
読書の時間は意図的に確保しないといけないですね。

今回はサクッと読める本や漫画が少し多めです。
これまでの読書感想記事

 

嫌われる勇気

著者:岸見 一郎、古賀 史健
ジャンル:心理学、人生論

アドラー心理学を解説し、200万部以上を売り上げた超名著である『嫌われる勇気』。
数年前に話題になった時に読んだのですがそれほどピンと来ず、ふと今になって再読してみました。
すると、自分が最近考えているような内容が次々に登場しページをめくるたびに共感の嵐!
本はその時の自分の状態で受け取り方が全く変わりますね。

僕の解釈も交えてアドラー心理学の大事なポイントを3点挙げるならば、
①原因論ではなく、目的論
②課題を分離し、他者の課題ではなく自分の課題にフォーカスする
③人生とは連続する刹那であり、今この瞬間をダンスするように生きる
となります。

①目的論
例えば、レストランでウェイターにコーヒーをかけられてしまいそこでカッとなり大声で怒鳴りつけたとします。
原因論であれば、「コーヒーをかけられた」→「カッとなった」→「怒鳴った」という因果で考えるのですが、アドラーの目的論ではそう考えず「大声を出すために怒りという感情を捏造した」と捉えるのです。
言葉でウェイターに説明する手順に面倒を感じたもしくは相手を屈服させるために大声を出す必要があった、よって怒ったというわけです。
この目的論を突き詰めると、過去の原因やトラウマを否定することに繋がります。
クライミングで何度も失敗しているあるルートを登ることに恐怖を感じている時、それは過去にそのルートで落ちた体験があるから恐怖を感じているわけではないのです。
「このルートが登れなかったら嫌だ」「恥ずかしい」「できない自分を認めたくない」そんな心理がまず存在し、それを正当化するために「恐怖」という感情を作り上げてしまっているのです。

②課題の分離
僕らは、他者の期待を満たすために生きているのではありませんし、他者もまたこちらの期待を満たすために生きているのではありません。
これは超超超×100が付く重要な考え方だと思います。
例えば、勉強をサボってばかりの子供に対して親が「勉強しなない」と命じるのはまさに他者の課題に踏み込んでしまっています。
勉強をしないことによって生じるデメリット(またはメリット)を直接引き受けるのは子供自身であり、これは明確に子供の課題です。
いくら「あなたのためを思って勉強しなさいと言っているのよ」と伝えたところで、それは親自身の見栄や支配欲を満たすための欺瞞の発言なわけです。
僕もパートナーのむっちゃんが岩場でのんびりしている時などに「もっとテキパキ動いて登った方が良いよ!」などと発言してしまうことがありましたが、これは完全に他者の課題に踏み込んでしまっている悪い例ですね。
他者は他者、自分は自分。
「馬を水辺に連れていくことはできるが、水を呑ませることはできない」ということわざがあるらしいですが、まさにその通り!
「パートナーを岩場に連れていくことはできるが、登らせることはできない」。笑

③ダンスするように生きる
アドラー心理学では、われわれは「いま、ここ」にしか生きることができないと考えます。
過去にも未来にも意味はなく、いまここの連続が人生なのです。
計画などは不可能。
ダンスを踊っている「いま、ここ」が充実していれば、それで良いのです。
これも救われる言葉ですし、同時に日頃の自分の怠惰が情けなくなりますね。
もっと常に踊らなければいけません。
登ろう。

本当に共感というか、自分の考えと同じことがなぜここまできちんと文字に落ちているか不思議になるくらいでした。
1つ1つでクライミングと絡めてブログ記事書けるな。

 
 

睡眠こそ最強の解決策である

著者:マシュー・ウォーカー (著), 桜田 直美 (翻訳)
ジャンル:科学、健康、ライフハック

UCバークレーの心理学・神経科学の教授であるマシュー・ウォーカーが書いた本であり、睡眠の起源、重要性、方法論などがまとめられています。
内容を端的にまとめれば「とにかく寝ろ!」です。

・睡眠時間が6時間を切ると肉体疲労までの時間が10~30%早まる
・睡眠は運動スキルも高める。練習をしてその後一晩ぐっすり眠ることで、動きが完璧に定着する
・深い睡眠を取ると記憶へのアクセスが2倍に上がる。昼寝を取ったグループは記憶力が20%向上
4時間睡眠のドライバーは8時間睡眠に比べ事故リスクが6倍
4~5時間睡眠だと食欲が大幅に増す。4時間半睡眠の人は8時間半睡眠の人と比べ5日間で1,000kcal以上過剰に摂取
・レム睡眠の間に記憶同士が衝突し創造性が生まれる
・アルコールは最大のレム睡眠の敵

などなど、とにかく寝ることの重要性をひたすらに説いています。
この本の内容を真に受けるならば、どんなに少なくても6時間以上、できれば8時間以上の睡眠をとるべきだということになります。

<睡眠時間が減ると怪我の確率が上がる。「確率」が正確に何を意味するかは不明だったが、、、>

僕も頭脳労働しかしていない時は4時間半くらいの睡眠で毎日やり過ごしていることも多かったですが、クライミング中心の生活になってからは睡眠を取らないとパフォーマンスが結局は下がることを痛感しなるべく睡眠の優先度を挙げています。

ハードワーカーの有名人にもホリエモンや勝間和代さんのように最低8時間は寝るようにしていると公言している人も多いですね。
(参考:勝間さんブログ「結局、睡眠最優先生活が最強だと思う」)
一方で落合陽一さんや前田裕二さんのように3時間以下の睡眠しかとらない方もいますが、本書では「遺伝的に5時間以下の睡眠で脳機能が低下しない人は1万人に1人もいない」としています。
ただ前田さんの、質の高い睡眠を得るためにマットレスに300万円以上投資した話などはそれはそれで面白いし参考にはなります。

本書の全体の論調として、睡眠を取るべきだということに大分肩入れしていて都合の良いデータばかりが並んでいる感は否めないですし、データの正確性などが気になる点は多々あったのですが、それでもためになる内容でした。

 
 

ウイルスの意味論

著者:山内一也
ジャンル:生理学、ウイルス学、歴史

以前に購入した本で読んでいなかったのですが、新型コロナウイルス騒動を受けてきちんと読んでみました。
ウイルスとはなんぞや、ということを知るのに適していると思います。
僕自身生物学に疎いのでウイルスの基本的な設計や働きを、きちんとわかっていないことも多かったのでためになりました。

・ウイルスは遺伝情報を持つ「核酸」と、それを覆うタンパク質や脂質の「入れ物」からなる単なる微粒子
・生物の細胞内に侵入して細胞のタンパク質合成装置をハイジャックしてウイルス粒子を組み立てる
・核酸としてDNAを持つもの(天然痘、ヘルペス、等)とRNAを持つもの(インフルエンザ、麻疹、SARS-CoV-2、等)がある

<イメージ図>

天然痘根絶の話も改めて面白かったです。
天然痘は、以下の特徴を持ちます。
・ヒトにしか感染しない
・死亡率は約30%
・回復したヒトは強い免疫を獲得するため、再び感染することはない
ここからWHOは1966年にワクチン接種を拡大していけば根絶できると考えたのです。
冷蔵保存や輸送設備の無い地域向けに「耐熱性ワクチン」を開発し、誰でも容易に皮内接種できるように「二又針」を使用。
さらに天然痘の発生通報者には1,000ドル(当時約20万円)の報奨金を支払う仕組みを導入します。
そしてついに1980年に根絶宣言に至りました。

 
 

「ついやってしまう」体験のつくりかた

著者:玉樹 真一郎
ジャンル:マーケティング、心理学

任天堂でWiiの企画担当などもやっていた著者による、「どうやったら人の心を動かす体験を作り出せるか」という本です。
・人はなぜ、ついやってしまうのか
・人はなぜ、つい夢中になってしまうのか
・人はなぜ、つい誰かに言いたくなってしまうのか
が書かれています。

一つ紹介すると、冒頭で登場する下の絵が強烈でしたね。
この絵を5秒見つめるだけで、なぜ指を入れたくなるのか/もしくは入れたくならないけれどなぜかムズムズするのか。

<指と鼻>

シンプルに言ってしまえば人は「穴を埋めたくなる」のですよね。
・ポケモン図鑑の収集
・ドラゴンボールの7つ集め
・様々なスタンプラリー
などなど、人の穴を埋めたくなる習性を利用したゲーム、物語、サービスはたくさんあります。

ビジネスをやる人、企画をしている人、何かを発信する人など色んな方が参考になる内容なはずです。

 
 

チェイサー

著者:コージィ城倉
ジャンル:漫画、歴史、人物伝

以前紹介した『グラゼニ』のコージィ城倉さん(原作者の時は「森高 夕次」を使用)による、手塚治虫をライバル視した漫画家の物語。
フィクションなのですが結構リアルで、主人公の漫画家が実在した人なのかと勘違いしてしまいそうになります。
手塚治虫の異常なまでの仕事量、時代の先端を突き進むエネルギーに圧倒される内容。
昔はそもそも週刊スタイルではなかったですし、少年ジャンプが「漫画家は1つの作品に全力で入魂すべきだ」というやり方を始める前までは、漫画家は同時に数作品連載を持っているのが普通でした。
とは言え、手塚治虫は漫画のアニメ制作を進めながら10本の連載を抱えるあり得ないほどのハードワークを何年も続けたのです。
それでいて後世に語り継がれるあの作品のクオリティ。
コージィさんは、作品単体として手塚治虫を超えるものは今後も生まれるかもしれないが、80点以上の秀作をあれだけたくさん生み出せる天才は二度と現れないだろうと語っています。
手塚治虫の凄まじさを知るのに非常に良い作品。

 
 

江川と西本

著者:森高夕次(原作・原案)、星野泰視(作画)
ジャンル:漫画、スポーツ、人物伝

チェイサーが漫画家の天才を描いた作品なら、こちらは野球の天才を描いた作品です。
高校野球で大活躍しその後のプロ入り騒動を巻き起こした江川卓、そのライバルの西本聖が主人公。
まず江川卓の高校時代の記録が化け物過ぎて笑えます。
読んでいて「漫画かよ!」とツッコミたくなるくらい震えますね。
色々記録はあるのですがwikipediaからも引っ張ると、

甲子園の通算成績は6試合、4勝2敗(負けた2試合はいずれも自責点1での敗戦)、投球回数59回1/3
・奪三振92(1試合平均15.3、奪三振率14.0)
・自責点3
・防御率0.46

甲子園通算80奪三振以上の投手の中で奪三振率14.0は、横浜・松坂大輔、駒大苫小牧・田中将大、東北・ダルビッシュ有、大阪桐蔭・藤浪普太郎など並み居る歴代の好投手と比較しても、ずば抜けた断トツ1位の記録である

半端じゃない!

あとミスターこと長嶋茂雄さんが良い味出しています。
個人的にミスターって平山ユージさんと重なるんだよなぁ。

<どこまで行っても勝負!ミスターの熱いシーン>

 
 

pet

著者:三宅 乱丈
ジャンル:漫画、SF、ファンタジー

薦めてもらった漫画で面白かった『pet』。
相手の記憶に入り込み、改竄したり破壊したりすることができる特殊能力を持った人たちの話。
現実と夢や幻想とを行き来するなどの見せ方が上手く、サスペンス要素が多分にありながら良質なファンタジー漫画となっています。

<記憶の世界での戦いが、絵が独特で面白い>

作者の三宅乱丈さんは『イムリ』などでもそうですが、人間の精神の繋がりや支配みたいなものがテーマとなっていてどれも読みごたえがありますね。