クライミングシューズ「Theory(セオリー)」の感想
Sportiva(スポルティバ)から今シーズン発売されたクライミングシューズのTheory(セオリー)。
SNS等ではかなり良いシューズだというレビューをいくつか目にします。
僕はスポルティバのFutura(フューチュラ)を長らく愛用しています。
新作シューズも時折試すのですが大抵は、”やっぱりフューチュラだ、、、”という結論になり、購入してもすぐに履かなくなってしまうが多いです。
しかし今回セオリーを試したところ、かなり登り心地が良かったのでこのブログにレビューや感想を書きます。
僕はスポルティバはフューチュラ以外にも、
・ソリューション
・ミウラ―
・パイソン
・スクワマ
・マーベリック
を購入し履いた経験がありますが、履き込んでいるのはフューチュラだけなので、この記事はあくまでフューチュラとの比較という軸で書いていきます。
セオリーのレビュー記事は、けんけんさんの「登攀日和」スポルティバ新作「セオリー(THEORY)」レビューが色々なシューズと比較するなど完成度が高いので、そちらも要チェック!
<セオリー>
スペック比較
まずはスポルティバの公式サイトで公表されているスペック差を載せます。
Theory セオリー | Futura フューチュラ | |
アッパー | スエードレザー +マイクロファイバー | スエードレザー +マイクロファイバー |
ソール | ビブラムXSグリップ2 + D-TECH | ビブラムXSグリップ2 |
ソール厚み | 3.5mm | 3mm |
重さ | 約200g | 約215g |
価格(税抜) | ¥21,000 | ¥23,100 |
セオリーの基本的なスペックはフューチュラと近いです。
最大の特徴はD-TECH (DYNAMIC TECHNOLOGY)で、ソールの両サイドがサイドに巻き込むようにエッジレス加工されています。
ダイナミックムーブで力を逃さず、またトウフック時などもフリクションを保つことができるようです。
(参考:Theory Climbing Species Evolution)
<D-TECH図解>
またソールは3.5mmとなっていますが、つま先以外にシャンクが入っていないのでソール全体はかなり薄い印象を受けます。
力を込める指先先端だけが硬くなっています。
僕の足のスペック
クライミングシューズの感想は個々人の足の大きさや形に大きく依存します。
なのでまず僕の足のスペックを書いておきます。
以前ZOZOMATで測定したのですが、特徴としては
・親指が一番長いエジプト型
・足幅はほぼ平均並み
・足甲の高さは低め
といった感じです。
<全体数値。左足を捻挫した腫れがまだ引いていない時に計測したので、左足は通常よりも数値大きめです、すみません、、、>
<足幅>
<甲高>
実物比較
いよいよ実物比較。
新品のセオリーとフューチュラで実物を比較してみました。
サイズはどちらもEUサイズで38.5。
全体サイズ
左がセオリー、右がフューチュラ。
縦方向の長さはほぼ同じ。
明らかに異なるのは「土踏まず~踵部分の幅」であり、ここが左のセオリーの方が狭いです。
セオリーの方がスリングショットがキツイのでしょうかね?
<左がセオリー、右がフューチュラ。土踏まずの部分がセオリーの方が狭い>
故に足の幅が広い人にとってはセオリーの方がサイズ感がキツイと感じると思います。
足幅が広い人はヒールカップもフューチュラと比べてフィットしない可能性もあるのかも。
僕は足の幅はほぼ平均並みで、フューチュラのヒールは横が若干余る感じがあるので、むしろヒールカップに関してはセオリーの方がフィットしている気がしました。
全体としてどちらも38.5で丁度良かったです。
トウボックスの高さ
トウボックスは明確にセオリーの方が高いです。
<左がセオリー、右がフューチュラ>
トウラバーの作りや性能自体はおそらくセオリーの方が良いはずです。
ただ足の甲が低い僕にとっては、セオリーのトウは若干余り感がありました。
それでも問題ない範囲で使えましたが。
柔らかさ
セオリーはソールの大部分にシャンクが入っていないので、本当に柔らかい!
新品でもセオリーは少し力をいれただけでグニャっと曲げられます。
<セオリーを曲げてみた>
対してフューチュラも柔らかい部類に入るシューズだとは思いますが、ここまでソールが曲がりません。
<フューチュラを曲げてみた>
登ってみた感覚
ここからは実際に履いて登ってみた感覚です。
まず結論から言うと、これまでに履いてきたシューズでフューチュラに次ぐ(部分的には凌駕する)クオリティです!
まず足入れのフィット感が素晴らしく(これは基本的な作りがフューチュラと同じだから僕にとってフィットしただけかも)、初日で履いた一発目から問題なく登り込めます。
足裏の感覚も鋭いです。
これまで新しいシューズを買ってもほぼ1日で履かなくなることも多かったのですが、セオリーは何日も履いてみたくなるくらいフューチュラと併用する可能性を見出せました。
つま先感覚
フューチュラとの最大の違いは、つま先への力の込め方。
フューチュラがノーエッジで面的にベタっと力を入れるのに対して、セオリーはつま先の一点に力が集まるイメージです。
明確に足で掻き込むときはフューチュラよりも力を発揮するかも。
ここは先述したけんけんさんのブログの絵が分かりやすいので読んでみてください。
ただ、やはりノーエッジの方が僕は全方位的に力を込められるので好きですかね。
特に距離を出したい時の最後の蹴り込みでの力の伝わり方がフューチュラの方が信頼できるイメージです。
たまたまかもしれませんが、スタンスを最後まで踏み切って距離を出す自分にとってギリギリの課題で両シューズを使ってみたら、フューチュラの方が成功しやすかったです。
トウフック、ヒールフック
僕にとってはセオリーもフューチュラもどちらも優れたフック性能を発揮してくれました。
ただトウフックは足の甲が低い僕でもかなり使いこなせたので、甲の高さが平均以上のクライマーであればセオリーの方がトウフックがフィットするかも。
逆に先ほども書きましたが、足幅広めのクライマーはヒールカップが合わずにヒールフック性能が落ちる可能性にも要注意。
スラブ
スラブは正直に言うと僕にとってはフューチュラの方が信頼できました。
つま先でホールドに触れた時にホールドがどんな形状をしているのかという情報量がフューチュラの方が多いのですよね。
ただ、試したスラブ課題がどちらかというとつま先だけ乗っていく系だったので、足裏でダイナミックにハリボテを踏んでいくような場合はセオリーのD-TECH効果が出るのかもしれません。
実際に公式インスタなどでもハリボテでのコーディネーションなどをセオリーは得意とするようなビデオも流れています。
<セオリーの開発ビデオ?>
岩
岩場でもセオリーを少し使ってみました。
僕はクラックでもなんでもフューチュラを使用しているのですが、セオリーも岩場でも問題なく対応できました。
クラックにも柔軟にねじ込めて悪くはなかったです。
ただかなり柔らかいので、決して岩場向きのシューズではないと思います。
長時間履くのは厳しそうですし、少しでもヘタると岩場で求められる剛性が無くなりそう。
まとめ&結論
まとめます。
あくまで僕の場合ですが、
・総合的にはフューチュラ!
・理由は「つま先でホールドから得られる情報、信頼感」「ノーエッジ故の力の込め方」がフューチュラが勝るため
・ただし、「トウフック」「かき込み」の性能はセオリーが勝るかもしれない
・さらに、(まだあまり体感していないが)スラブ等でのボテ乗り能力も重視するなら、セオリーは相当あり!
という感じでしょうかね。
今後コンペでセオリーを目にする機会も増えるかもしれません。
ではでは。
<参考記事>
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