2017年度上半期に読んで面白かった本

2017年度上半期に読んで面白かった本

何気に意外な人たちからリクエストがあるので、半年に一度の「面白かった本」シリーズを書きます!
こういうクライミングと関係ないブログも本当はもっと書きたいのですけどね。

過去記事
2016年度下半期に読んで面白かった本
2016年上半期に読んで面白かった本
2009年度上半期面白かった漫画

 

すごい物理学講義

著者:カルロ・ロヴェッリ
ジャンル:科学(物理)

今期のベスト本は間違いなく『すごい物理学講義』です。
今期というか科学本の中で人生ベスト3には入るのではないかと思えるくらいの傑作。
リチャード・ドーキンスの『利己的な遺伝子』や、朝永振一郎の『鏡の中の物理学』に並ぶ、絶対に読んでおくべき一冊。
それだけに邦題が残念過ぎる、、、。(イタリア語の原題は「現実は目に映る姿とは異なる」らしいです)
その内容は物理の歴史を著者なりの視点で紐解いていって、最新のループ量子重力理論まで話を進めるものなのですが、数式をほとんど使わずにそれぞれの偉人が成し遂げた物理的発見をわかりやすく明快に書いてくれています。
例えばガリレオに関する記述

ガリレオは、人類の歴史上はじめて「実験」を行った人物である。実験的科学はガリレオとともに始まる。
実験の内容は単純である。まずは、物体を自由に落下させる。
それから、落下速度の正確な測定を試みる。
それだけである。

また、自然科学的な見方では無く、目的論的な見方をするプラトンに対しては

進むべき道を完全に誤っている、あの偉大なるプラトンが!

などと強烈な言葉を浴びせます。

ここでは書ききれないのですが、ニュートンやアインシュタインに関する話も本当にロマンと愛が溢れた文章で読むのを止められないです。
高校物理がわからなくてもおそらくある程度は楽しめる、というかむしろそういう人に向いている本なのかもしれません。

ドーキンス自伝Ⅰ、Ⅱ

著者:リチャード・ドーキンス
ジャンル:科学(生物)、自伝

上記でも触れましたが、名著中の名著『利己的な遺伝子』の著者のドーキンスの自伝です。
幼少期からのドーキンスの体験や、考え方が紹介されていて、如何にしてこの偉大な科学者が作られたのかという秘密の一端に触れることができます。
例えば、昔からとにかくドーキンスは反知性的なことが許せない性格なことが読み取れますね。

 

サンタクロースを信じている子供を、その存在を疑うというちょっとしたゲームに導くのはそれほど、あからさまに悪いことなのか?
もしサンタが世界中の子供すべてにプレゼントを贈るとしたら、サンタは何本の煙突にいかなければならないだろうか?
クリスマスの朝までにこの仕事を終わらせるためには、トナカイはどれほど速く空を飛ばなければならないのだろう?
サンタクロースは存在しないなどとストレートに言わなくていい。
間違いを犯さないために懐疑的な疑問を発するという習慣を推奨するだけでいいのだ。

 

同意×100!

ドーキンスマニアなら是非手元に置いておきたい一冊。

 

迷惑な進化

著者:シャロン・モアレム
ジャンル:科学(生物)

科学三連発です。
10年ほど前の本ですが、妻の本棚にあったものを引っ張り出して読んだらとても面白かったので。
本書の大きな一つのテーマは「致命的な病気になる遺伝子はなぜ長い歴史の中で淘汰されずに、今日の時代まで生き残っているのか」というものです。
例えばインスリンがうまく分泌されないため血液中の糖が高濃度になってしまう、糖尿病。
これはドーキンスの進化論的に考えれば、糖尿病になりやすい遺伝子を持った人は淘汰されて絶滅してしまうのではないか、という疑問が当然沸きます。
それに対して著者は、氷河期や寒い地方に住む人にとっては、血液中の糖の濃度が高いことで血液の氷点が下がることで末端の壊死や凍死のリスクを下げることができるなどのメリットもあると説きます。
著者の主張が必ずしも正しいとは限らなそうですが、目から鱗の発想も多く読んでいて楽しい本でした。

 

まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか

著者:ナシーム・ニコラス・タレブ
ジャンル:ビジネス・経済

『ウォール街のランダムウォーカー』や『なぜ投資のプロはサルに負けるのか?』などでも散々言い尽くされているとは思いますが、この世の中に溢れている投資のやり方などが如何に出鱈目で、それらは運によって成り立っているかに過ぎないのかを書いている本です。
この本は、世の中で言われていることをこう言い換えろと言っています。

「因果、法則」は「逸話、まぐれ」である。
「シグナル」は「ノイズ」である。
「能力のある投資家」は「運がいいだけのバカ」である。
「市場に打ち克つ」は「生存バイアス」である。

投資だけでなく、あらゆる分野に当てはまるものかもしれませんね。

 

リクルートの すごい構“創”力 アイデアを事業に仕上げる9メソッド

著者:杉田浩章
ジャンル:ビジネス

ボストンコンサルティンググループの日本代表の杉田さんが、リクルートで事業が生み出される仕組みについて書いた本です。
こんなことまで書いて良いのかというくらい詳細にリクルート式メソッドが記されています。
事業化されるまでのステップが9段階に分かれているのですが、個人的に感銘を受けたのは
1ステップ目の「不」の発見ですかね。
「不」の発見の不とは、「不便」「不安」「不満」などあらゆるネガティブな概念の象徴なのですが、まずはそれを発見し解決することが事業に繋がると説いています。
それで不に関して大切なことは

・誰も目をつけていなかった「不」かどうか
・本当に世の中が解決を求めているものなのか。既存の産業構造を変えるほどの、大きな可能性を秘めているのか
・「不」を解消することが収益に繋がるのかどうか

です。

なので単なるニーズとは全く違うものなのです。
クライミング業界ではクライミングジムの乱立を初めとして色々なビジネスが立ち上がっていますが、本当にそれらは「不」を解消するのもなのかという視点は絶対に抑えておかなければならないと感じましたね。

 

アイデア大全――創造力とブレイクスルーを生み出す42のツール

著者:読書猿
ジャンル:ビジネス・図鑑?

創造力とブレイクスルーを生み出す42のアイデアが載っていて、見ているだけでも楽しい図鑑のような本です。
何かに行き詰ったらこの本を開くと打開できるかも。

面白かったものを1つ紹介すると、「オズボーン・チェックリスト」というアイデアを変形して増殖させるメソッド。
既存のアイデアや成功例などを元に次の9つの質問に答えていきます
1.他への転用は?
2.他のものへの応用は?
3.変更したら?
4.拡大したら?
5.縮小したら?
6.代替したら?
7.再配列・アレンジしたら?
8.逆転したら?
9.結合させたら?

このオズボーン・チェックリストで生まれた例をあげると

「魔法瓶」:電球を「2.他の者への応用は?」と考えた
「Twitter」:長いテキストを「5.縮小したら?」と考えた
「エスカレーター」:階段の主客を「8.逆転したら?」と考えた

などがあるようですね。

イラストも可愛くてぺらぺらめくるだけでも楽しめるはずです。

 

何者

著者:朝井リョウ
ジャンル:小説

今更感がありますが、これも妻の本棚に入っていたものを読んだらサクサクと読み進められてテーマが心にも残りました。
それとなぜか最近小説がうまく読めないのですが、『何者』はライトで読みやすかったですね。
もはや5年前のネットの世界は古臭くすら感じられますが、SNS時代の就活生の姿を生々しく書いた小説であり、所謂一般的な就活を経験した人なら自分の黒歴史とかも思い出して結構心に刺さると思います。

個人的に刺さったのはクライマックスで主人公が言われたこのセリフ

「距離をとって観察していないと、頭がおかしくなっちゃいそうになるんだもんね。
でもね、そんな遠く離れた場所にひとりでいたって、何も変わらないよ。
そんな誰もいない場所でこってりと練り上げた考察は、分析は、毒にも薬にも何にもならない。
それは誰のことも支えないし、いつかあんたを助けたりするものにも、絶対ならない」
「観察者ぶってても、何にもならないんだよ」

うわーmickipediaのこと言われてんのかと思ったわ。笑

 

刻々

著者:堀尾 省太
ジャンル:漫画

刻々1 1
刻々2 2

すでに周りの人にかなり薦めていますが、今期のNo.1漫画は『刻々』ですね。
時間の止まった止界という世界で、それぞれの登場人物が己の目的を遂行するために戦うバトル系SF漫画。
『寄生獣』以来の衝撃などと巷では言われていましたが、確かに同じSF系ですがテーマはかなり異なります。
寄生獣は人間賛歌がテーマなのに対して、刻々は時間や宗教がそのテーマとなっていて、個人的には刻々のほうが共感できる部分は多かったですね。
特にラスボス的な位置付けの宗教団体のトップである佐河の考えが、わかりすぎる。
冒頭の絵にもある

世界を永く見たい。
理想を言えば人の何千倍もの長さの時間を見たい。

とかは、高校生くらいの時に僕も真剣に悩んでましたからね。

ちなみに作者の堀尾 省太さんの作品は外れが無いようで、今連載している『ゴールデンゴールド』も半端じゃなく面白いです。

 

左ききのエレン

著者:かっぴー
ジャンル:漫画

エレン

こちらも今最も連載を楽しみにしている漫画です。
cakesという月額500円(最初の数話はタダで読めるかな?)のwebメディアでだいたい毎週木曜日更新で連載中ですが、kindleでも買えるようです。
絵は下手ですが、連載が進むに連れ徐々に上手くなります。

あらすじとしては、広告代理店に勤める主人公の光一が、高校生の時に出会った圧倒的才能を持つ絵描きであるエレンの呪縛に縛られながら業界を生き抜いていくというものです。
第1話のクライアントへのプレゼン前に仕事に追い込まれて上司に巻き取られる感じとかは、社会人の新人時代の雰囲気を思い出してグッときます。
エレン以外にも写真家やモデルなどのあらゆる分野の天才たちとの才能差に葛藤する主人公の姿もきっと誰しも共感できると思います。
そして物語は来週あたりにクライマックスを迎える予感。
『何者』と言い、このエレンと言い、これ系のテーマに未だにハマっている僕は大二病から抜け出せていないのかもしれない、、、。

 

はてな匿名ダイアリー

上でも触れましたが最近長くて硬い文章が読めなくなってしまったので、暇つぶしに結構はてな匿名ダイアリーを読んでしまいます。
ちなみにはてな匿名ダイアリーとは、自分の身元を隠したまま書くことのできるブログのようなものです。
もはや本ではないのですが。
もちろんその全的な質は決して高いとは言えず95%くらいがマジでどうでも良い内容なのですが、たまに傑作に当たります。
例えば
30才になってしまった
君は最高のキーボード「Realforce」を知っているか
とか。
下手に小説や漫画で傑作を探すより、はてな匿名ダイアリーを漁るのも面白いかも、、、?

とまぁこんな感じですね。
なんかめちゃくちゃ長くなってしまった。
ではこのコーナーはまた半年後に!