クライミングのルールの考察10~ボルダリングのスタートに関する2018年IFSCルールの変更点~
2018年もボルダリングワールドカップ(以下、BWC)の真っ最中。
今週末も中国にて第4戦の泰安戦がひらかれますね。
そして少し前に今年からのルール変更として、
という記事を書きましたが、今回はもう1つの重要なルール変更「ボルダリングのスタート」について記事を書きます。
従来のスタート方法
BWCなどのIFSC(国際スポーツクライミング連盟)ルールでは、ボルダリング競技のスタートに関するルールは少し複雑です。
その方法は通称「4点スタート」などと呼ばれているのですが、去年までのIFSCルールでは以下の様に記述されていました。
地面から離れた後、それ以上のムーブをおこなう前に、選手は 7.2.5 の規定(4本のスタートマークが必要という規定)に従って
マーキングされたスターティング・ポジションにつかなければならない。
商業クライミングジムですと一般的にはスタートのハンドホールドしか指定されていないことが多いです。
しかしBWCなどの公式戦では4つのスタートホールドが定められていて、その指定された4ホールドに両手両足を置くことでスタートが認められるのです。
例えば、以下の2017年BWCミュンヘン戦の女子決勝第3課題ではピンクの線でスタートホールドが指定されています。
下のハリボテに2本、右のハリボテに1本、黄色い小さいホールドに1本引かれていて、まさにショウナ・コクシー選手はその本数だけ手と足をホールド/ハリボテにおいているので正しいスタートポジションを切ることができているわけです。
そしてこのスタートポジションの解釈で重要だったのは、
「とにかく4つのホールドを触っている瞬間を作り出せば、静止する必要は無かった」
という点です。
この課題のショウナ選手も最初は4つのホールドに手足を置いて一旦止まってから次に進もうとしているのですが、以下の動画を見るとわかるのですがスタートがあまりに難しいため途中からは一瞬だけ4点に触ってそのまま勢いですかさずスタートを切ろうとしています。
これが2017年まではルール上認められていたわけです。
実際に僕もこのブログで5年ほどまえに「ボルダーのスタートで静止する必要はない」という記事を書いています。
2018年からのスタート方法
ところが、なんと2018年のIFSCルールからボルダリング競技にスタートに関しての記述がこのように変更されています。
地面から離れた後、それ以上のムーブをおこなう前に、選手は 7.2.5 の規定に従ってマーキングされたスターティング・ポジションにつかなければならず、それ以外のホールドを使用する前に、スターティング・ポジションのハンドホールドを保持(コントロール)しなければならない
太字にした箇所が追加された文言です。
明確にハンドホールドを保持と書かれていますね。
つまり先ほどのショウナ選手のようにスタートを一瞬タッチして次のムーブにうつることは禁止されたわけです。
このルール変更の背景に何があったのかはよくわかりませんね。
観る側のわかりやすさを優先させたのか、それともムーブの一意性を持たせたかったのか。
個人的には一瞬タッチが認められる方が色々なムーブが出て面白かったのですけどね。
ただ、フットホールドに関しては何も記述が無いため、ハンドホールドさえ保持していれば足は一瞬タッチでもおそらく問題はないと思われます。
これによって今年度のBWCで選手の動きなどがどう変わるか少し注目ですね。
余談
超余談ですが、ジムで初心者インストラクションをしていると結構な割合で、スタートホールドを両手で保持しながらきちんと離陸し静止するのではなく、離陸とほぼ同時に次のホールドを取りにいくという場面に出くわしますよね。(ジムスタッフあるあるだと思うのでわかる人にだけ伝われば良いのですが)
これまではこういうあやふやスタートに関してなんと言えばいいかすごい悩んでいたのですよね。
“公式ルールだと4点のスタートが決まっていて、今みたいに一瞬だけスタートホールドを持って離陸と同時にスタートを切っても良いのですけれど、ジムだときちんとスタートホールドを両手保持したまま離陸して一旦静止するのが一般的なんですよね・・・”
的な説明で初心者超困惑するみたいな。
でもこれからは
“スタートを両手で持ったまま離陸して一旦静止してください!”
と自信を持って言えますね!笑
まぁIFSCルールが全てではないから何でもいいのだけどさ、、、。
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