中学生にもわかるライブドア事件

中学生にもわかるライブドア事件

今回はライブドア事件を中学生にも理解できるようにわかりやすく説明したいと思います。

 


はじめに

2006年にライブドア元社長の堀江貴文氏が逮捕されたことはおそらくほとんどの皆さんがご存知だと思われます。
しかし堀江氏が「どのような罪に問われているのか」を簡単にでもわかっている方はどのくらいいるでしょうか。先日試しに友人に聞いてみたところ「脱税?」という答えが返ってきました。
他にもインサイダー取引のために捕まったと思っている方も多いそうです。
事実私も半年前まではなぜ堀江氏が逮捕されたのか、そもそもライブドア事件とはなんだったのかを全くわかっていませんでした。
しかし堀江氏のブログを偶然目にし、そこからライブドア事件に関する何冊かの本も読み、ニコニコ動画youtubeなどを通した堀江氏の言い分も聞き、ようやくライブドア事件がどのようなものであったかがうっすらと掴めてきました。

 

本記事を書く動機

この記事を書くに当たって動機が二つあります
一つは

マスメディアと共に(私も含めた)国民の大半があれだけ強いバッシングを堀江氏に浴びせていたのにも関わらず、堀江氏が問われている罪すら知らないのはあまりにも無責任ではないか

ということです。
私たちには知る責任があると思うのです。

もう一つはライブドア事件に限ったことではなく常々思うのですが、

多くのマスメディアの説明が親切でなく難解すぎる。

ということです。
当時のテレビ報道は覚えていないし残っていないのでわかりませんが、特に新聞の報道は難しいと思います。
例えば基礎からわかるライブドア事件などを読んでみなさん理解が出来るでしょうか。
ある程度の基礎知識がある人にはわかるのでしょうが、少なくとも一般的な中学生が読んでも絶対にわからないと思うのです。

本記事では「そもそも株式とはなにか」「企業買収ってどういうことなのか」そのレベルから簡単にですが説明をしたいと思います。

 

本記事を読むにあたっての注意点

①初めに言っておくと、私は堀江氏に対して今やほとんど悪印象をいだいていません。
ブログにもほぼ毎日目を通していますので、ファンと言っても差し支えないのかもしれません。
もちろん事実の整理・説明をしたいので公平に書くつもりではありますが、記事の視点が気づかないうちに堀江氏側に偏っているかもしれません。
ご了承ください。

②私のバックグラウンドは物理ですので経済・経営・会計、及びそれらの法律などには現時点では明るくありません。
私自身の推論、勘違いが多分に含まれている可能性があります。
またわかりやすく書こうとするあまり、事実と食い違って記述してしまった箇所ももしかしたらあるかもしれません。
間違いやわかりづらい表現などありましたら御指摘いただけると非常に嬉しいです。

③ライブドア事件はまだ裁判中です。
1審2審では有罪判決が出たとはいえ、堀江氏側は無罪を主張しています。現在上告をして最高裁が始まるところです。
本記事を書く上で堀江氏が有罪だと断定するかのような口調になることもありますが、それは「1審2審ではこのような理由で有罪となった」という意味合いです。

※追記※

2011年4月に最高裁判所が上告棄却し、懲役2年6ヶ月の実刑判決が確定しました

※追記終わり※

 

堀江氏の問われている容疑

堀江氏は具体的には以下の二つの罪に問われています
①有価証券報告書虚偽記載
②偽計及び風説の流布

このうち①有価証券報告書虚偽記載、中でもクラサワコミュニケーションズ買収の際に行われた容疑を今回は説明します。

 

堀江貴文氏が問われている罪『有価証券報告書虚偽記載』とは何なのか

まずざっくり言いますと

ライブドアは投資ファンドを通した自己株売却によって得たお金を「利益」だとしてPL(損益計算書)に載せた。
しかしこの投資ファンドはダミーであるので、このお金はあくまで自己株の新規発行によって増えた「資本金」である。
なのでこのお金はPLには記載すべきでなくBS(貸借対照表)のみに記載しなければならない。
より「利益」だとしてPLに載せたことは虚偽記載にあたる

ということです。
この記事の目標は上文の意味が中学生にもわかるようにすることです。

では本題に入る前に準備から見ていきましょう。

 

準備(基礎知識がある程度ある人は読み飛ばして構いません)

ライブドアとはどんな企業であったのか

1996年堀江貴文氏を中心にして『オン・ザ・エッヂ』というホームページの制作や管理を主に行う企業を立ち上げました。
そして2002年にポータルサイト・インターネット無料接続サービスなどを行う『ライブドア』を買収し、社名を『エッヂ』へ、さらには2004年に本社名もより知名度の高い『ライブドア』へと変更を行いました。
当時のライブドアは様々な事業を手がけていましたが、その売上高・利益の大半を占めるのは企業の買収売却などの金融事業を手がけるファイナンス部門でした。

*ポータルサイト
ポート(port)とは港の意味で、様々なサイトへの入り口となっているサイトのことです。Yahoo!などが有名ですね。
ポータルサイトは多くの人が目にしてくれますので、企業からの広告料などで稼ぐことが出来ます。
ちなみに現在のライブドアのサイト

*売上高・利益
売上高とは商品やサービスの提供など、企業の営業活動によって得たお金のことをいいます。ようはいくら売れたかということです。

利益とは売上高から商品原価や人件費、営業費用などの支出を引いたものを指します。
ようは営業活動全体を通してどれだけ企業にお金が残ったかということです。
利益が+なら黒字、利益が-(損失という)なら赤字です。

 

企業買収とは

企業の買収売却という言葉が出てきましたが、具体的にはどのように企業を「買い」また「売る」のでしょうか。
またなぜ企業を売買することでお金が儲かるのかも説明します。
ここは本題を理解する上で重要なので少し詳しく見てみましょう。

まず一般的に企業を経営するにはお金が必要です。
お金どのように調達するのかと言いますと
①銀行などからお金を借りる
②株式などを発行し買ってもらう
の二通りの手段が主にあります。

企業買収と密接に関係があるのはこの株式です。
株式とは企業が発行している出資権であり、ある人が株式を持っていると「私はその企業にお金を出していますよ」ということの印となります。
株式を持っている人はその持っている株数に応じて、その企業が利益を出したときにその一部を配当として貰えます。
また企業の業績が良くなったりすればみんながその企業の株を欲しがりますので、一般的に株価が上がります。
その時に自分が買った値段以上で誰かに株式を売ることで差額をもうけることもできます。

さらに株式を持ってるということはその企業にお金を出資しているのですから、その企業の一部を所有していることに等しいです。
なので株式を持っていればその企業の株主総会に参加することができ会社の経営に口を出せます。
またその企業の経営方針は最終的に多数決で、過半数もしくは3分の2以上の賛成で決まります。
つまりある個人またはある企業(企業それ自体が他の企業の株を所有することもできるのです)が他の企業の株式の過半数もしくは3分の2を所有した場合は、
その企業の経営方針を決める株主総会において多数決で勝つことが出来ますので、その企業を自身の思うように経営できることになります。

これはその企業が自分のものになったに等しいので、このように株式の大半を買い占める行為を企業買収といいます。

なぜ企業買収をするのかといいますと、ある企業があったときに『自分達が経営すればその企業にもっと利益を生むことができる』と思った場合に、その企業を買収し自ら経営して利益を生むことができます。
またそのようにして経営を軌道にのせ利益を生むようにしたらみんなその企業の株を欲しがりますので株価が上がることもあります。
そこでその会社の株式を売り払い差額をもうけるということもできるのです。(企業売却)

つまり当時のライブドアはもちろんポータルサイト事業にも力を入れていましたが、企業の株を買い占め(企業買収)、うまく経営するなどして株価を上げ、そしてその株式を売却(企業売却)するという方法でその売上高と利益の大半を出していたのです。

いよいよ本題に入ります。

 

本題 クラサワコミュニケーションズの買収とそれにともなう有価証券報告書虚偽記載

堀江氏の問われている容疑のひとつは

「クラサワコミュニケーションズ」(以下クラサワ)という企業を買収する際に副次的に得た10億円のお金を「利益」であると報告したがそれは利益とは呼べないので虚偽報告ではないか。

というものです
本記事ではこのクラサワ買収に伴った容疑を詳しく説明します。

 

クラサワ買収方法

2003年ライブドア(当時はエッヂという社名だがわかりやすくライブドアと表記する)は携帯電話販売を手がけるクラサワを買収しようとします。
当時クラサワの株は投資事業組合「ジャパン・ベンチャー・ファンド・スリーエルピー」と創業者の倉沢俊夫氏が全発行株式の97%以上を持っており、このクラサワ株をライブドア側が「いくらで」「どのように」買うかが問題となっていました。

クラサワ側は全クラサワ株を”現金”8億円で売りたいと言っていましたが、ライブドアは8億円分の”ライブドア株”を新たに発行するのでそれと交換したいと言いました。

企業というのは多くの現金を常に保有しているわけではありません。
いざという時のためにも現金の流出はなるべく避けたいものです。
よってライブドア側は現金8億円ではなく、新しく8億円分のライブドア株を発行するのでそれをクラサワの株と交換したいと言ったのです。
しかしクラサワ側も同様に現金の形で8億円を手にしたいのです。

クラサワ1

ここで疑問に思う方がいるかもしれません。
『ライブドアがクラサワに渡すライブドア株は8億円分なのだから、クラサワ側はそのライブドア株をすぐ売って8億円手にすればいいじゃないか』と。
しかし株価というものは常に変動しています。
もらったライブドア株を誰かに売っている間にも株価は変動するのですから、全部売り終わってみたら8億円以下にしかならなかったということもありえます。
(つまりいつの株価を採用するかで、8億円分のライブドア株といってもそれが何株なのかは実は変わってきます。ここは非常に重要なところですので後に詳しく説明します。)
またこのころライブドアは株式100分割という行為を行っていたため、ライブドア株を発行してクラサワ側に渡るまで何ヶ月かかかる状況でした。
(株式100分割については後日記事を書くかもしれませんが、とにかくすぐにはクラサワ側にライブドア株をわたせる状況ではなかったということだけわかっていればよいです。)

なのでクラサワ側としてはライブドア株が手に入る頃には株価が下落して、それを売っても8億円以下にしかならないのではという不安が余計に募っていました。
よってクラサワ側は現金にこだわったのです。

つまり両者で意見が対立してしまい非常に困ったことになったのです。

*ライブドアが新しく株を発行するということは、出回っている全ライブドア株数が増えますので、1株あたりの価値が普通に考えれば下がります。
ある利益1000円の会社の株が5株出回っていれば1株あたりの利益は200円ですが、10株出回っていれば100円になってしまいます(つまりそれだけ配当が減るはず)。
よって新しく株を発行なんかしたら、株価が下がってしまうのではと思うかもしれませんが、実はそうでないことも多いです。
新しく株を発行すると言うことは企業が新たにお金を得るということなので、そのお金を使って積極的に営業していくのでは、とまわりに考えられ株価が上昇することも多いです。
まぁ今回のケースはライブドアにお金ではなくクラサワ株が入ることになるのですが、クラサワを買収することになるのでライブドアは積極的に営業しているとまわりはみなすことができると言えます。

 

M&Aチャレンジャーファンド登場

ここでエイチ・エス証券の野口英昭氏(後に自殺したあの方です)が出てきます。
野口氏はM&Aチャレンジャーファンドという投資ファンドを新たに作ることによってこの問題を解決します。

*投資ファンド
投資ファンドというのは多くの人からお金を集めて、それで株などを売買し儲け、その一部をお金を出してくれた人に還元する会社。
投資とは利益を得る目的でお金などを出すことです。投資ファンドがA社の株を買えばA社に投資したと言えますし、その投資ファンドにお金を出した人はその投資ファンド自体に投資していると考えることが出来ます。

解決の流れは
①とりあえずライブドアが8億円分のライブドア株を発行し(厳密に言えば「数ヵ月後に、8億円分のライブドア株を手に入れることができる権利」。ここがミソ!)、それをクラサワ側が持つ全クラサワ株と交換
②このままではクラサワが困るので、クラサワが持つ「将来、8億円分のライブドア株を得る権利」をM&Aチャレンジャーファンドが現金8億円で買い取る
③結果ライブドアはクラサワの全株取得(クラサワ買収)、クラサワ側は現金8億円取得、M&Aチャレンジャーファンドは「将来8億円分のライブドア株を得る権利」取得
です

クラサワ2.0

これでクラサワ側は満足です。自身のクラサワ株の代わりに8億円を現金で手にできました。
ライブドア側もクラサワの株を株式交換という形で手に出来ました。
一件落着に見えますが、この過程でM&Aチャレンジャーファンドが払った現金8億円はどこからでてきたものなのでしょうか。この現金8億円はどこかの企業または個人がM&Aチャレンジャーファンドに投資したものなはずです。
では一体誰が、どこの企業がM&Aチャレンジャーファンドに現金8億円投資したのでしょうか。

 

M&Aチャレンジャーファンドが払った現金8億円はどこから

M&Aチャレンジャーファンドは投資ファンドですから個人や企業からお金を集め、それをつかって株を売買するのが基本です。
今回「将来、8億円分のライブドア株を得る権利」を現金8億円払って買ったわけですから、その8億円も誰かがM&Aチャレンジャーファンドに投資したわけです。
実はこの8億円、ライブドアのファイナンス部門がM&Aチャレンジャーファンドに投資したものなのです。

つまり本当は
①ライブドアが「将来、8億円分のライブドア株を得る権利」を発行、それをクラサワ側が持つ全クラサワ株と交換
②ライブドアのファイナンス部門がM&Aチャレンジャーファンドに8億円投資
③クラサワが持つ「将来、8億円分のライブドア株を得る権利」をM&Aチャレンジャーファンドが現金8億円で買い取る
④ライブドアはクラサワの全株取得(クラサワ買収)、クラサワ側は現金8億円取得、M&Aチャレンジャーファンドは「将来8億円分のライブドア株を得る権利」取得
だったのです。

クラサワ3.0

しかしおかしいことに気づきますね。
そもそもライブドアは現金の流出を避けたかったはずです。
なのに結局ライブドアは現金8億円をM&Aチャレンジャーファンドに投資しているわけです。
しかもこの関係においてM&Aチャレンジャーファンドが存在しなくても全く構わない気もしますよね。
直接ライブドアとクラサワがやりとりしているのとあまり変わらないようにも見えます。

しかししかし、ライブドアがM&Aチャレンジャーファンドに現金8億円を投資した意味はやはりあり、さらにライブドアに現金8億円はすぐに戻ってくるのです。
しかもさらに現金10億円までついて。

 

M&Aチャレンジャーファンドが利益10億円をあげた方法

ライブドアは現金8億円をすぐにでも返して欲しい状況です。
そこでM&Aチャレンジャーファンドの野口氏はある方法を思いつきます。
それは堀江氏からM&Aチャレンジャーファンドが「将来、8億円分のライブドア株を得る権利」で将来入るであろうライブドア株と同数の株だけ借りて、それを市場(しじょう。株式市場のことで、一般的に株を売買する場のことです。)に売却し、お金を得るという方法です。
注意点としては、ライブドアから株を借りたのではなく堀江氏個人から借りたということです。(企業は自社の株を保有することはできません。ライブドアという企業ではなく、堀江氏個人が持っていたライブドア株をM&Aチャレンジャーファンドが借りたのです。)
そしてその売却益からライブドアのファイナンス部門に8億円を返し、さらに「将来、8億円分のライブドア株を得る権利」を堀江氏に渡せば堀江氏には元々持っていたライブドア株と同数の株が将来戻ることになります。

まとめますと
①ライブドアが「将来8億円分のライブドア株を得る権利」を発行、それをクラサワ側が持つ全クラサワ株と交換
②ライブドアのファイナンス部門がM&Aチャレンジャーファンドに8億円投資
③クラサワが持つ「将来8億円分のライブドア株を得る権利」をM&Aチャレンジャーファンドが現金8億円で買い取る

ここまでは同じで

④堀江氏がM&Aチャレンジャーファンドに8億円分のライブドア株を貸し、M&Aチャレンジャーファンドは「将来、8億円分のライブドア株を得る権利」を堀江氏に渡す
⑤M&Aチャレンジャーファンドが堀江氏から借りた8億円分のライブドア株を売却、現金を得る
⑥M&Aチャレンジャーファンドがライブドアファイナンス部門に借りていた現金8億円を返す
⑦結果ライブドアはクラサワの全株取得(クラサワ買収)、クラサワ側は現金8億円取得、(堀江氏は貸したのと同数のライブドア株が返ってきますので実質変化なし)

となります。

クラサワ4.0

*ここまで流れは追えたと思いますが、この行為の「意味」がわかりませんよね。
例えばライブドアのファイナンス部門がM&Aチャレンジャーファンドにお金を8億円投資せずとも、M&Aチャレンジャーファンドは堀江氏に株を借りて売って、
それで作った8億円でクラサワから「将来、8億円分のライブドア株を得る権利」を買えばいいですし、
そもそもM&Aチャレンジャーファンドなど通さずに直接堀江氏がクラサワにライブドア株を貸し、クラサワがそれを売却してもよいはずです。
(後者に関してはクラサワ側が嫌がった可能性はあります。わずかな時間の間にだって株価は下落することはありますから。)

しかし実はこのときM&Aチャレンジャーファンドが堀江氏から借りて売ったライブドアの株は8億円ではなく18億円で売れたのです。
「将来8億円分のライブドア株を得る権利」で将来入るであろうライブドア株と同数の株を売ったにも関わらずです。
そしてライブドアのファイナンス部門がM&Aチャレンジャーファンドに現金8億円を投資したというのも重要です。
難しいですが、次の節で説明します。

 

そもそも「8億円分のライブドア株」とは

ここで私は「8億円分のライブドア株」と書いていますが、一体何株なんでしょうか。
株価は時々刻々と変動するものです。
つまりいつの株価を採用するかによって「8億円分のライブドア株」の株数は全く変わるのです。
ここでライブドアはクラサワ側と「契約までの3ヶ月間の平均の株価」を使って「8億円分のライブドア数」の株数を決めることにしました。
(もっともクラサワ側としてはすぐにM&Aチャレンジャーファンドが、「将来、8億円分のライブドア株を得る権利」を現金8億円で買い取ってくれるので何株でも構わない)

しかし当時ライブドア株は高騰していました。
なので「3ヶ月間の平均で8億円のライブドア株」はその契約をしている日には8億円以上の値打ちがあったのです。
具体的に何株かということよりもイメージの方が大切だと思うので、簡単のため以下のように株価が推移していたとしましょう。
注:株数も株価も実際とは全く異なります。「3ヶ月平均の株価」という意味と、「高騰しているときに売ると儲かる」ということを理解してもらうためにわかりやすく変えた例です。

クラサワ5

3ヶ月の平均株価が8000万円だとすれば、8億円分のライブドアであれば、10株ということになります。
つまりクラサワには10株のライブドア株を渡せばいいわけです。
もしこれが契約日に即座に売却できれば現金18億円が入ってきますが、実際にライブドア株が手に入るのは何ヶ月か後ですので、それまでにライブドアの株価が8000万円を割ってしまえば、
クラサワは現金8億円以下しか入らないわけですから、その可能性を恐れてクラサワは「現金8億円」にこだわったのです。

しかしM&Aチャレンジャーファンドは「3ヶ月平均で8億円のライブドア株」がクラサワから渡るのを待たずして、堀江氏から株を先借りすることで即座に「3ヶ月平均で8億円のライブドア株」と同数のライブドア株を売りました。
そして「3ヶ月平均で8億円の株」と同数の堀江氏から借りた株は18億円程度で売れた。
つまりクラサワに渡した8億円を差し引いても10億円の儲けを出すことが出来たのです。
あとは「将来8億円分のライブドア株を得る権利」を堀江氏に返すだけです。

 

M&Aチャレンジャーファンドの利益10億円のゆくえ

ではM&Aチャレンジャーファンドが出した利益10億円はどうなるのでしょうか。
投資ファンドというのはお金を投資家から借りてそれを使い株などを売買し儲けます。
そして投資してくれた人にその利益を還元するのです。
今回M&Aチャレンジャーファンドにお金を投資したのはライブドアのファイナンス部門でした。
つまりライブドアにその利益のほとんどが還元されることとなり
結果ライブドアは10億円以上儲けることが出来たのです。
投資ファンドが利益のうちのどれくらいを投資してくれた人に還元するかはまちまちだと思いますが、
そもそもM&Aチャレンジャーファンドはこのクラサワ買収のために作られたような投資ファンドなのでここで得た利益をほぼ全てライブドアに還元しました。

クラサワ6.0

 

ここまでのまとめ

ここまでの流れは大丈夫でしょうか。
ごくごく簡単にまとめると、

①ライブドアはクラサワを買収するにあたり、「将来、8億円分のライブドア株を得る権利」を発行し、それをクラサワの全株と交換した
②ライブドアのファイナンス部門が現金8億をM&Aチャレンジャーファンドに投資、M&Aチャレンジャーファンドはその現金8億円でクラサワが持つ「将来、8億円分のライブドア株を得る権利」を買った。(クラサワはこの時点で満足)
③堀江氏が「将来、8億円分のライブドア株を得る権利」と同株数のライブドア株をM&Aチャレンジャーファンドに渡し、M&Aチャレンジャーファンドから「将来、8億円分のライブドア株を得る権利」をもらう。(堀江氏は後で貸した分と同じ株数のライブドア株が返ってくるので変化なし)
④M&Aチャレンジャーファンドが堀江氏から借りたライブドア株を売却。「将来、8億円分のライブドア株を得る権利」と同数のライブドア株であったが、この8億円分とは契約までの3ヶ月間の平均株価より算出されたものであったので、高騰しているときに即座に売ることで18億円で売れた。
⑤M&Aチャレンジャーファンドにお金を貸していたのはライブドアのファイナンス部門であったので、18億の大半はライブドアに入った。結果ライブドアは貸した現金8億円を差し引いても10億円を得た

となります。

ちなみにここまでの行為自体は全く違法ではないです。

問題はこの先です。

 

違法性

この現金10億円がライブドアに入るのは全く問題ないです。
問題はこの10億円を「何によって得たお金なのか」とライブドアが有価証券報告書に記載するかなのです。

*有価証券報告書とは
企業がその企業情報を外部に開示する資料のこと。
その中にBS(バランスシート、貸借対照表)とPL(損益計算書)というものがありそれがライブドア事件では虚偽記載されたと言われています。

*BSとは
BSは貸借対照表と呼ばれ簡単に言えば、どのようにお金を集めて、それをどのように使っているかを記載する表です。
例えば株式によるお金の調達なら資本の部に資本金(株式の発行によって得た資金、または会社を始めた人が持っていたお金、誰かが無償でくれたお金など返す必要のない資金)として~円増えましたと記載し、また資産の部にそれを現在どのような形で保有しているかを書きます(現金のままか、土地を買ったか、他の会社の株を買ったかなど)
銀行にお金を借りたなら負債の部に~円と記載し、資産の部に同様にどのようにそのお金を使っているか記載します。

クラサワ7

*PLとは
PLは損益計算書と呼ばれ企業の収益構造、つまりどのようにお金を稼いでいるかを書き、またそれによっていくらの利益が出ているかを記載します。
売上高と利益がどれくらいかを見て取ることができます。

クラサワ8

ここが一番大事なところなのですが、

ライブドアが得た10億円は「利益が10億増えた」なのでしょうか

 

それとも「株式の発行によって資本金が10億増えたにすぎない」なのでしょうか。

「どちらでも結局現金10億円増えたことに変わりはないからどっちでもいいじゃん」
と思う方もいるかもしれません。しかし利益が昨年に比べどれだけ増えているかという利益成長率は会社の勢いをあらわしますから、当時のライブドアはできることなら利益と記載したかったのです。
同じ10億円増えたにしても、会社が10億円稼いだのと、10億円自社の株を発行したのと、10億円銀行から借りたのじゃ、全くイメージが違うのです。

 

ライブドア側の主張

ライブドアのファイナンス部門は金融事業によってお金を得ています。
今回の件もM&Aチャレンジャーファンドにお金を投資し、そしてM&Aチャレンジャーファンドが利益を出しそれを融資している側に還元したわけです。

これは儲けられそうなところにお金を投資し、それを運用してもらい利益の一部を得る、という正式な金融事業であり、今回の10億円もライブドアの利益である。
よって「PLに利益が10億出た」と記載しても構わない。

というのがライブドアの主張です。

より多くの利益を出したとPLに記載できれば、ライブドアは成長していると思わせることができます。
その結果ライブドアの株価はさらにあがる可能性もあります。
(ただその分税金は多く払わなければなりませんので、利益を多く見せかけることと脱税は対極の関係にあります。)

クラサワ9.0

クラサワ10

検察側の主張

M&Aチャレンジャーファンドを通しているといっても、結局やっていることは最初と最後を見れば自社のライブドア株を売っているだけである。

これは増資(株式などを発行して資本金を増やすこと)に過ぎず、
「BSに資本金が10億増えた」と記載すべきで、「PLに利益が10億出た」と記載するのは有価証券報告書虚偽記載の罪に当たる。

というのが検察の主張です。

クラサワ11.0

クラサワ12

つまりM&Aチャレンジャーファンドはそもそも自社株を売却するために作られたダミー会社であり、ないものと考えるという主張なのです。

1審2審では裁判官も検察の主張を支持し、ライブドアの行為は単純な増資であり利益をあげたわけではないとしたのです。

クラサワ13

以上でクラサワコミュニケーションズ絡みの『有価証券報告書虚偽記載』の説明を終わります。

疑問や不明な点、また間違っている点など是非ご指摘ください。

以下ライブドア事件全体などを述べます。

 

ライブドア事件全体での粉飾の総額

2004年9月期の決算でライブドアは50億円の利益が出たと報告しています。
しかし検察はこのクラサワ事件の他にも同様のいわゆる自社株食いと、架空取引というものを行いライブドアは計53億円を余分に売上高に計上した、
つまり実際には3億円の赤字であったところを50億円の黒字にしたと容疑をかけられているのです。

 

その他の粉飾事件との比較

過去の粉飾事件では

山一證券 約7428億円の粉飾決算
日本長期信用銀行 約1592億円の粉飾決算

などが有名です。
単純に粉飾の額だけをみればライブドアの53億円とはケタ違いに多いです。
ただこれらは倒産を回避するために粉飾したと言われています。
一方ライブドアはより企業が成長しているように見せかけるために粉飾したと言われています。

そして山一證券、日本長期信用銀行いずれも事件関係者には執行猶予がついていますが、
堀江氏は1審2審ともに懲役2年6ヶ月の実刑判決が出ています。(堀江氏側は即日上告)
また他の粉飾事件では刑事罰を課さず、課徴金というものを払うだけですんでいるものも多くあります。

堀江氏の弁護士はライブドア事件で堀江氏に下された懲役2年6ヶ月の実刑判決に対し

『正義に反する甚だしい量刑不当』といい以下のように述べています。

「きわめて多様な背景事情や経過を伴う殺人罪でさえ、殺された人の数が、死刑の基準とされている。
まして、財産犯であれば、被害金額の多寡がきわめて重要な量刑因子であり、また金額により量刑の相場が存する。
脱税犯などでは、脱税額やほ脱率が最重要な量刑因子とされ、量刑とそれらの数字とはほぼ比例関係にある。
実務で築き上げられてきた量刑の相場が重視されるべきであるのは、当然である。」

しかし裁判官は以下のように判断したのだそうです
「粉飾金額が僅少でも、敢えて実刑に処する理由として、粉飾決算事件の中に「損失額隠ぺい型」と「成長仮装型」の2種類があり、
後者は前者よりもはるかに非難可能性が大きい」

 

おわりに

いかがでしたでしょうか。
思ったより長くなってしまいました。
書き終えてみて中学生に本当に理解できるのかとだいぶ不安が・・・。
まぁなんとか読み終えてだいたい理解できたならば
「あれホリエモンのしたことってこんなもんなんだ」と思った人もいるでしょうし
「やっぱりいけないことだ」と再認識した人もいるでしょう。

そうですね、私が言いたいのはやはり

事実をあまり知りもしないのに非難・批判するのはよくないのではないか
非難・批判するならするで事実をきちんと知る姿勢を見せよう

ということですかね。自戒の念もこめて。

みなさんが思っている以上に世論というのは検察の捜査、裁判官の判断に影響を与えることもありますし、ここから我々もきちんとした態度で堀江氏の裁判を見守りましょう。

 

参考文献など

参考にしたweb上の情報は以下です。

堀江氏のブログ

ニコニコ動画

youtube


<『徹底抗戦』>

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<『虚構 堀江と私とライブドア』>

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<『ヒルズ黙示録 検証・ライブドア 』>

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<『会社はこれからどうなるのか』>

 

<『東大生が書いたやさしい株の教科書』>

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