ボルダリングコンペにおける上級者と初中級者の違い

ボルダリングコンペにおける上級者と初中級者の違い

この前の土日にBLoC Fish&Bird戦のセット・運営をしましたが、みなさんのおかげで大いに盛り上がりました。
ありがとうございます。
さてセットでも運営でも色々と反省点はあるのですが、今回はジャッジやMCをしながら選手を見ていて気付いたことを書いてみます。
カテゴリーを横断的に見ていたので上級者と初中級者の違いが見れて興味深かったです。
(もはやコンペ参加者のレベルが上がり過ぎているので、本当の意味での初中級者はいなかったですが)
書いていることはほとんど当たり前のことばかりですけど、意識していなかったという初中級者のためになれば嬉しいです。
ただ、あえて極端に「上級者はこう、初中級者はこう」と決め付けた口調で書いているのですが、もちろん当てはまらない人も多いとは思いますが。

<今回のコンペで見られた、ボルダリングにおける上級者と初級者の違い>

■上級者は登るべき課題が見え戦略的に攻めているが、初中級者は無計画に闇雲に課題に取りついている
これがジャッジをしていて一番感じたことですね。
リアルタイムリザルトシステムになったので、ジャッジをしながら選手の番号を入れるとどの課題でボーナスや完登をしているのかがスマホに表示されます。
上位カテゴリーの選手や決勝に残るような選手は
「簡単な課題から攻める」
「ヨレそうな課題を先に登っておく」
「後半並びそうなスラブなどの課題に早期に着手する」
など攻め方は違えど各々の戦略を持ってコンペに挑んでいることがリザルトから読み取れます。

一方で下位カテゴリーには課題の取り付き方に何の計画性も無いような選手が多く見られます。
「とりあえず1番から順に登っていく」
「できない課題があると(他に明らかに登るべき課題があるにも関わらず)それに異様に固執する」

などです。

今回のBLoC Fish戦はどのカテゴリーも競技時間がかなり長かったため地力の差が如実に表れたコンペであったかもしれませんが、時間制限がかなり厳しいセッション形式のコンペの場合はこの戦略が大いにリザルトに影響するはずです。

■上級者はセッターの意図を汲み複数の選択肢を視野に入れてオブザベーションをしているが、初中級者のオブザベーションは手順を考える程度
上級者ほど参加者同士で話し合って事前のオブザベーションをしているように見えますが、その会話からは
「何でこのホールドが使われているか」
「セッターはこのようなムーブをさせたいのではないか」
「でもこうやったら設定ムーブを壊せそうじゃないか」
「ここはやり方が3通りありそうだけど、まずはこれを試す」

などが聞こえてきます。
適当に遊びで作られた課題ではなくコンペ課題である以上、ホールドのチョイスや配置の1つ1つにセッターの意図が込められていることを知っているので、それを汲んでオブザベーションをしているのです。
その上で複数の選択肢を残したり、時には自分の得意なやり方で抜け道となるムーブが無いかなどを模索しています。

しかし初中級者はせいぜい手順程度のオブザベーションしかできていない人が多いです。
なので、ホールド感や距離感などが想定と違うとそこで詰まってしまい、無駄に動きが止まったり、変な持ち替えをしたり、無理矢理ヒールやトウをかけてみたりごちゃごちゃやって、その挙句に手を出さずに落ちます。
手を出さずに落ちることほどやってはいけないことは無いです。手を出さなければ可能性は0ですから。

■故に、上級者は登りが速いが、初中級者は遅い
そしてオブザベ力の違い故に、上級者と初中級者の登りの単純なスピードにも大きな差が見えました。
もちろん筋力の違いから動きの速度が違うというのもありますが、ムーブを連続して繰り出せるかどうかという点が全く異なっているのです。

■上級者は後半ラウンドや決勝まで持久力が持続するが、初中級者は後半ラウンドや決勝まで持久力が持たない
これは年齢や日頃からリードクライミングをしているかどうかなどにも左右されるのですが、やはり上級者の方が圧倒的に持久力があります。
レギュラー男女やミドル男子の上位層は後半ラウンドになるとよりムーブが洗練されて、完登に近づいていきます。
もちろん流石に決勝ではレギュラー男女の選手にすら疲れの色は見えましたが、彼ら彼女らは疲れていても課題を登り切る術を身に着けているのです。
一方でエントリークラスでは後半ラウンドでは持久力が続かずに指が開いてしまい前半よりも高度を下げてしまっている選手が多く見られました。
おそらく多くの初中級者が90分~120分全力で登るという経験を日頃からしていないのだと思います。
持久力というのは実はコンペを戦い切る上で非常に重要な力で、僕は多くの選手において保持力やパワーではなくボルダー的持久力(長い時間高強度のボルダー課題にトライできる持久力をそう呼んでいる)が最も弱い環になり足を引っ張っているのではないかと見ています。

参考記事:クライミングにおける「最も弱い環の原則」の”悪循環”

■上級者ほどポジティブに思考し前向きな発言をするが、初中級者にはネガティブに思考し後ろ向きな発言をする選手が多い
上級者は課題を前にした時に
「これは登れそうだ」
「アップでこれはいけるでしょ」
「全完見えたわ」

などと自信がみなぎり一見するとビッグマウスな選手もいます。
でもそのように常にポジティブに思考することで実際のパフォーマンスもついてくると僕は思います。
決勝でもレギュラー男女の選手は登れても登れなくても前向きに課題にトライしていた印象が強いです。

しかし、初中級者には発言がネガティブな選手が多い気がします。
「今日は0完だな」
「この課題難しすぎてできる気がしない」
「ビリにだけはならないように気を付けます」

このような発言はもちろんセルフハンディキャップから来るものだと言うことはわかるのですが、このようなマインドでは登れる課題も登れないです。
コンペに限らず日頃のトレーニングでもそうですが、前向きに思考するようになりネガティブ発言がなくなってくるとそのお客さんは上級者に近づいているなと常々感じます。

参考記事:セルフ・ハンディキャッピングに陥らないためには

■上級者ほどブラッシングをこまめにするが、初中級者はあまりブラッシングをしない
細かいことですが、上級者ほど頻繁にブラッシングをしているように見えます。
ハンドホールドだけでなくフットホールドも入念に磨きます。
決勝などでもブラッシングをきちんと要求しています。

一方で初中級者はここ一番の大事なキーホールドのフリクションが不安な場合でも磨かずにトライしている人が多いです。
もちろんこちらもジャッジをしながら磨いてあげますが、並びが多い課題ではこちらも頻繁には磨いてあげられないこともあります。

これはフリクションに対する繊細な感覚を持っているかどうかで差が表れている気がします。
上級者ほど微妙なチョークの乗りや汚れなどを感じ取って、それがトライに実際に影響を与えることがわかっているのです。

■上級者ほど保持力やパワーが強いが、初中級者は弱い
まぁぶっちゃけて保持力やパワーの差はむちゃくちゃあります
もちろんそれだけでクライミング能力の差の説明が付くわけではないですが、差があるのは事実です。

さぁ強くなりましょうか!!