クライミング 5.15c以上のスポートルートまとめ(2020/1 時点)

クライミング 5.15c以上のスポートルートまとめ(2020/1 時点)

※この記事は2019年1月に書き、2020年1月に追記しています※

ボルダーで2本目のV17が裸足のクライマーとして知られるシャルル・アルベルト(Charles Albert)によって 登られたことが話題になっています。
せっかくなのでこの機会にV16以上のボルダー情報をまとめようと思ったのですが、その前に昨年末にステファノ・ギソルフィ(Stefano Ghisolfi)が5.15cを登り4人目の5.15cクライマーとなったというニュースを思い出したので、まず今回は5.15c(9b+)以上のスポートルートをまとめようと思います。

昨今は海外クライマーの登攀情報は英語版wikipediaでも十分充実していますし、
Hard Climbs
99Boulders
など岩場の記録が体系的にまとまっている海外サイトもあるので、実は今更僕がまとめる必要もないかなと少し感じていました。
ですがやっぱり手を動かして記事を書くと頭に定着するインプットになるので、自分のためにも書いてみます。

 
 
 

5.15c以上のルート一覧

さっそくまとめたものをご覧ください。

2020年1月現在で5.15cが4本、5.15dが1本。
これらのルートを完登したクライマーは世界に以下の5人だけです。
・アダム オンドラ(Adam Ondra)
・クリス シャルマ(Chris Sharma)
・アレックス メゴス(Alexander Megos)
・ステファノ ギソルフィ(Stefano Ghisolfi)

・ヤコブ シューベルト(Jakob Schubert)、2019年11月にPerfecto Mundo完登
そしてアダム以外の4人はいずれも5.15c以上の経験が1本しかないことからも、如何にアダムが図抜けた存在かがわかると思います。
また セブ ブワン(Sébastien Bouin)  はMoveを2019年6月に完登しているのですが、Moveはグレードが5.15c/bを提唱されているのでここでは掲載していません。

Change

せっかくなので各ルートを簡単に解説したいと思います。
Changeはノルウェーのフラタンゲルの巨大ケイブにあるルートで、世界で初めての5.15cとされています。
ルートは前半20mの5.15a/bと後半25mの5.14dに分かれ、その間ではノーハンドレストできるようです。
アダムはこのルートに夏に3週間、秋に2週間費やし初登しています。

<Change 動画>


<Changeが載っている『Rock&Snow 059』>

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La Dura Dura

La Dura Duraはスペインのオリアナのルートで世界で2番目の5.15cです。
ボルトをクリスが打ちルート設定をしましたが、初登はまたしてもアダム オンドラ!
2年間に渡り9週間、合計70回のトライをしたそうで、アダムはChangeよりも難しく感じたそうです。
ルート内容は最初の10mが5.15b/cでそこでニーバーで多少レスト、その後10mの5.14c、からガバでレストし最後に20mの5.13dとなります。
アダムから遅れること1ヶ月、2013年の3月にクリスも第2登をして世界で2人目の5.15cの完登者となりました。
ちなみにduraとはスペイン語で「難しい」という意味で、La Dura DuraはThe Hardest of the hard(困難中の困難)というような意味になります。
雪山大好きっ娘。+の「アダム・オンドラ、La Dura Duraのインタビュー」が詳しいです。
La Dura Duraもロクスノ059のクロニクルにも情報が少し載っています。

<La Dura Dura 動画>

 

Vasil Vasil

アダムが地元チェコのスループというエリアに設定し登ったVasil Vasilが3本目の5.15c。
7mの5.13dをこなした後にV14のボルダームーブが入るルートのようです。
20日~25日かけて完登。
あまり見映えはしないルートみたいです。
Vasilはどういう意味なんでしょうかね?Basilで王のような意味があるみたいですが。

☆追記☆
コメントでルート名に関して情報をいただきました。

スペイン語のLa Dura Duraが英語でいうところのThe Hard Hardという意味に対して、同時期にプロジェクトとして進めていた本ルートを、Duraより(恐らく)少し簡単だと見込んでいて、Easy Easyに相当するスペイン語”Facil Facil”、そこに発音が似ている母語チェコ語の男性用タンクトップを意味する”Vasil”を掛けた文字遊びだったみたいですね。

☆追記終わり☆

<Vasil Vasilの写真?が少しだけ映っている>

 

Perfecto Mundo

スペインのマルガレフにあるChrisのプロジェクトであったPerfecto Mundoですが2018年5月にアレックス メゴスが15日間の末に初登。
3人目の5.15c完登者となりました。
ルートは全体的に135度程度の傾斜壁で、ルート長は25m程度。
5.14bから始まり、ワンフィンガー、ピンチ、ポケット、ランジなどをこなして最後は5.13cで締めくくります。
そして2018年12月にはステファノも32日間をかけてこのルートを完登し、4人目の5.15cの完登者になりました。
Mundoとはスペイン語で「世界」、つまり「完璧な世界」という意味になります。

<Perfecto Mundoの動画>

 

<Perfecto Mundoが載っている『Rock&Snow 080』>

 

Silence

そして世界で唯一の5.15dとされているのがChangeと同じノルウェーのフラタンゲルのケイブにあるSilence。
初登はやはりアダム オンドラ。
完登までに2~3年を要したようで、オーバーハングした壁でニーバーを決めるために脚のトレーニングなどもしたそうです。
ルート内容は全長は45mで、15mの5.13dを登ったあとにV15のムーブを含む35mの5.15cを登るというもの。
第2登はあらわれるのでしょうか。

<Silenceの動画>

<Silenceが載っている『Rock&Snow078』>

 

幻の世界初の5.15c Chilam Balam

実はChangeが登られる9年前の2003年に、幻の5.15cが発表されています。
それはスペインのマラガ近郊の岩場にある「Chilam Balam」であり、初登はベルナベ フェルナンデス(Barnabé Fernández) とされています。
なぜこのルートが幻の5.15cなのかというと理由が2つあります。

ベルナベは本当に登ったのか

1つ目の理由はベルナベがこのルートを登っていないのではないか、という疑義が抱かれているということです。
というのもベルナベは当時5.15aが最高レッドポイントグレードだった上に、それも人工ホールドを一度取り付けてから外したルートといういわくつきのものでした。
アレックス・フーバーなどはベルナベのChilam Balam初登報告に対してオーバーグレーディングの可能性のみならずレッドポイント自体にも疑問を呈しました。
そしてそれに対してベルナベは「盗みに入ったことのあるやつだけが、ほかの連中も同じことをすると考える」と応戦。
クライミング界に一大騒動が起こりました。

再登者によると5.15cはない

その後時は流れ2011年にアダムがChilam Balamを再登します。
しかもトライ数はたったの4トライ!
そしてグレードを易しめの5.15bと提唱しました。
つまり2つ目の理由はそもそもグレードが5.15cもないのではないか、ということです。
現在のところ第5登まで出ていて、5.15a~5.15b程度というグレーディングで落ち着いているようなので、ベルナベの完登の真偽によらずともChilam Balamが世界初の5.15cということはおそらくなくなりました。
ちなみにChilam Balamとはマヤ文明の本の名前のようです。

<Chilam Balamの動画>

<Chilam Balamの騒動が載っている『Rock&Snow022』>

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以上になります。
いやーやっぱりアダムはすごかった。
今度は高難度ボルダー編でやりたいですが、グレードが結構二転三転するので選定が難しそうですね。
ではでは。