2019ボルダリングWC年間チャンピオンの行方を考える
今週末の6月7,8日、アメリカのベイルにてボルダリングワールドカップ(BWC)の最終戦があります。
<決勝のYoutube 日本時間で6/9の朝5:30~>
これにて2019年のBWCが6戦全戦終えることになるので、年間チャンピオンも決定します。
例年通り、最終戦の結果で年間チャンピオンが誰になるのかその条件を考えてみましょう。
<参考までに2018年の記事>
BWC年間ランキングとは
まずBWCの年間ランキングについて簡単に説明しますが、詳しくはIFSCルールの11章をご覧ください。
今年はBWCは全6戦ありますが、選手には各大会の順位によって以下の得点が与えられます。
そして6戦全戦を終えた時点で、最も得点の低い1大会を除いた5戦の合計値で年間ランキングが最終的に決定し、ランキング首位のクライマーが年間チャンピオンとなるのです。
(ちなみに5戦以下開催の年は全戦の合計値となる)
2019年の第5戦までの状況
5戦目までを終えた時点での年間ランキングの状況を見ていきましょう。
IFSCのページからランキングは見れます。
(選手の名前が頻発するので、敬称略で書きます)
女子
まずは女子から。
女子は皆さん知っての通り、ヤンヤ・ガンブレットがここまで5戦全戦で優勝で500pt!
2位のファニー・ジベールに100ptを超えるポイント差をつけているため、ヤンヤの年間チャンピオンが既に決定しています。
僕が知る限り近年BWCをシーズン全戦優勝した選手はいないはずなので、その快挙に注目ですね。
男子
続いてメインの男子は5戦を終えて以下の状況。
8位のイェルネイ・クルーダー以下は、首位のアダム・オンドラに100ptを超えた差があるので、逆転は不可能です。
またスターターを見ると、アレクセイ・ルブツォフ、アンゼ・ペハルク、ヤコブ・シューベルトもベイル戦には不参加のようなので、同様に逆転は不可。(実は参加してもランキングルール上逆転できない選手もいるのですが、後述します)
さらにチョン・ジョンウォンは現在首位のアダムと99pt差ですが、これまで5戦参加しているので最終戦を終えた時点で最もポイントの低い1戦が除かれます。
つまり最終戦で1位になっても100pt-22pt=78ptしか加算されないので、逆転することはできません。
よってBWCの年間チャンピオンは現時点でアダム・オンドラ、楢﨑智亜、藤井快の3名に争いが絞られているのです。
アダムか快が勝てば、どちらも初の年間チャンピオン。
智亜ならば伝説の2016年シーズン以来2度目、かつ4戦のみの参加での年間チャンピオンという偉業もついてきます。
年間チャンピオンシミュレーション
では本題に入ります。
快が年間チャンピオンになる条件
快は現時点でアダムに94ptの差を付けられているので、2位の80ptでは届かず、優勝して100ptを獲得する必要があります。
優勝すれば快のポイントは290ptでアダムと6pt差、智亜と30pt差なので、最終戦で
・アダムが26位(5pt)以下
・智亜が12位(28pt)以下
を満たせばチャンピオンになります。
非常に厳しい条件ですがまだ可能性は残っているのです。
ちなみに細かい補足をすると、快が優勝して290pt、アダムが25位になって6pt獲得して290ptで並んだ場合はどうなるのでしょうか。
このような状況の対処法はIFSCルールに明記されていて
11.7.5
最終戦終了時に、2 名以上の選手が同じポイント数を有して 1 位同着となった場合は、それを分けるために、同着の選手が同時に出場した大会での成績を一つずつ比較する ――すなわち同時に出場した大会で相手より上位となった回数で決定する。
この計算後なお同着の場合、1 位から始めて次は 2 位と言うように、上位の成績の獲得数で 1 位を決定する。
とされています。
現時点でアダムと快の直接対決はアダムの2勝1敗なので、もし最終戦が上記の状況になれば2勝2敗で、11.7.5の前半の直接対決結果はイーブン。
そして1位の獲得数も1つずつでなんとイーブン。
2位の獲得数を比較してようやくアダムに軍配が上がるという面白い状況になるのでした。
アダムと智亜それぞれが年間チャンピオンになる条件
さて、本題中の本題です。
今回もいつもと同様にシミュレーション表をまず貼りますね。
理解するのがちょっと難しく、面食らうと思いますがきちんと説明します。
表の見方は、以下。
・横に向かって並んでいるものが「智亜の最終戦順位&年間pt」で、智亜が最終戦で1位だったら、2位だったら、3位だったら、、、とそれぞれの結果に対する年間の総合ptを書いています
・縦に向かって並んでいるのは「アダムの最終戦順位&年間pt」です
・そして表の中に書いてあるのは、最終戦のアダムと智亜のそれぞれの順位が生じた時の年間チャンピオンの頭文字です。青字の「A」ならアダム、緑字の「智」なら智亜が年間チャンピオンになるとシミュレートされるわけです
例えば最終戦、智亜が2位なら340pt、そしてアダムが4位なら339ptとなり、その時表を見ると緑字で「智」となっているので、智亜が年間チャンピオンだというわけです。
要約すると、、、
表が巨大なので着目する箇所を絞りましょう。
まず見るべきは上2行が全て「A」となっているところ。
つまりアダムが2位以上ならば、智亜はどうやっても追いつけないので、アダムの年間チャンピオンは確定ということです。
アダムが3位以下の場合は、 (A、智)=(3位、1位)、(4位、2位)、(8位、3位)、(11位、4位)とかそのあたりが智亜が年間チャンピオンになる分岐点なので、アダムにある程度の差をつけて最終戦を終えれば智亜にも可能性は十分残っています。
特に智亜は以前の記事の分析からファイナルに残れば2位以上の可能性が80%以上を誇るので、ファイナルに行けばかなり面白い展開となるでしょう。(ちなみにアダムもファイナルで2位以上になる確率は非常に高い選手だが、、、)
<参考ブログ 楢﨑智亜の安定感>
そして智亜は15位(22pt獲得)以下だと、年間ptが282pt以下になるため、これだとアダムには追い付けません。
つまり智亜は年間チャンピオンの条件として必ず14位以上が必要になっています。
これをまとめると、
・アダムは優勝or準優勝なら、年間チャンピオン
・智亜が年間チャンピオンになるには、アダムが3位以下の状況で、順位にもよるが2~10順位分程度アダムを引き離して最終戦を終える必要がある
・智亜が15位以下なら、アダムが年間チャンピオン
細かい補足
2点補足します。
1点目は最終戦でアダムと智亜が同順位になった場合。
厳密にいうと両者が同順位の時(表の対角線)は、得点表の点数がそのまま入らず、占めた順位の平均点が入るので本当は点数は違います。
例えば両者が3位タイになったら、3位の65ptと4位の55ptの平均である60ptがお互いに入ります。
ですが今回の場合はそうなればすべてアダムが年間チャンピオンとなるので、表の「A」という表示は問題がないでしょう。
2点目は最終戦を終えて、アダムと智亜の年間ptが同じになった場合を考えます。
例えば智亜が4位、アダムが11位となると、両者315ptで年間ptが並びます。
この際は上述したルール11.7.5が適用されるのですが、現時点で両者の直接対決は1勝1敗です。
最終戦を終えて年間ptが同じになるということは、智亜が最終戦でアダムを上回るときしか起こりえないので、そうなれば智亜が2勝1敗で直接対決でアダムを下すことになります。
よって年間ptが全く同じときは智亜が年間チャンピオンとなるのです。(表でも「智」と表示)
こんな感じです。
BWC男子は毎年最後の最後までドラマがありますね。
それでは楽しみにして見守りましょう。
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