片手懸垂への道、ならびにクライミングにおけるその必要性

片手懸垂への道、ならびにクライミングにおけるその必要性

片手懸垂がギリギリ1回できたのでそれにまつわるメモを書きます。

 

きっかけ

おそらく片手懸垂1回程度の強度だと普通に数年登り込んでいるクライマーであれば自然とできてしまう人もいるでしょうし、ごく稀ですが中にはクライミングを始める前からできるという人も見かけます。
一方僕は数年前まではかなり非力な部類に入るクライマーで、片手懸垂なんぞ夢の又夢といった状態でした。
なので、パワーがあるクライマーを見ると単純に「羨ましいなぁ」と感じていましたね。
普通に登っている内になんとかかろうじて片手ロックオフ(片手で肘を曲げた状態でぶら下がり姿勢をキープすること)はできるようになりましたが、そこから引き上げるということは1ミリもできないといった状態でした。

そこで2年前くらいから何となく「片手懸垂をやる!」と目標を決めて、少しずつトレーニングを始めました。
片手懸垂ができたらきっと何かが変わるような予感がしたのです。

 

動画

とりあえず2014年7月のできていない動画と、2016年1月のギリギリ成功した動画を載せます。
失敗している方も一応ロックオフのトレーニングなどを始めた後なのですが、30度くらいしか引き上げられていないですね。
成功の方もマジでギリギリで恐縮ですが。
(ホールドを持つ手に顎が付けばOKとしています)

・2014年7月

・2016年1月

 

やり方やコツや意識することなど

2年くらい前からトレーニングをしたと言っても、実は1年10ヶ月くらいはあまり進歩がありませんでした。
それでここ最近2ヶ月くらいで「さすがにそろそろできるようになろう」と意識して優先的にトレーニングするようになってようやくできるようになったという感じです。
以下僕が思ったやり方、コツ等を書いてみます。

・やり方
以下のようなステップを踏みました
1. 両手フレンチーズを色んな肘の角度で
2. 片手ロックオフを色んな肘の角度で
3. 補助あり片手懸垂
4. 補助なしで部分練習
5. フレッシュな時にひたすら片手懸垂にチャレンジ

1. 両手フレンチーズを色んな肘の角度で
フレンチーズとは懸垂の途中の肘を曲げた状態をキープすることです。
両手

僕はクセで身体の前面の筋肉を使ってしまう傾向があるのですが、おそらく背中側の広背筋や腋の下の大円筋などを意識してキープした方が良いです。

「色んな肘の角度で」と書いたのは、2.で詳しく写真を載せますが、肘の角度を色々変えてやるということです。
『フリークライミング』(山と渓谷社)によると

アイソメトリクス(静的に筋力を使うこと)は一般に角度依存性が大きく、トレーニングを行った関節の角度の前後15度ずつしか筋力の向上が見られないとされる。
よってトレーニング時には角度は30度ごとに鍛えなければならない。

とされています。
ですので、肘の角度が30度、60度、90度、120度、150度でわけてやることが最も理想的です。
それぞれの角度に対して、10秒ぶら下がることを5秒レストを挟んで5回、これを1セットとして、大レスト3~5分挟んで3セットなどやればかなり十分でしょう。
これだけでもきちんとやったら大レストを入れても1セットが5分程度かかるので5分×3セット×5角度で75分かかってしまいます。笑

フレンチーズがあまりに楽勝な場合は飛ばして2.に進んで良いでしょう。

ちなみに『フリークライミング』は必読です。

 

2. 片手ロックオフを色んな肘の角度で
ロックオフが少しでもできるならここから始めるべきです。
1.と基本的には同じことを片手でやります。
こんな感じです(150度だけ写真が無いのですが)

30度
30度

60度
60度

90度
90度

120度
120度

これをやると自分の苦手な角度というのがわかるはずです。
僕はフルに引き付ける30度くらいが苦手で、特に右手は肩を壊していた影響か最初は全くできませんでした。
未だに片手懸垂は最後の一引きがツラいですね。

どの角度でも10秒キープできるようならば3.に進むべきです。

3. 補助あり片手懸垂
補助あり片手懸垂というのは、ホールドにぶら下がっていない方の手で小さなホールドを少しだけプッシュするなどして補助をして片手懸垂の練習をするということです。
だんだんと指2本だけの補助にしたり、指1本だけの補助にしたりします。

僕は最後の方は段違いの吊り輪で身体を引き上げるというトレーニングをしていたのですが、これの補助あり片手懸垂の練習になっていました。

4. 補助なしで部分練習
ここまできたら補助を無くして、部分的に片手懸垂をしてみるということが効果的だと思います。
ぶら下がり→90度までやってみたり。
60度→30度までやってみたり。
僕はぶら下がり→90度までは引き上がるけれど、その先が引き上がらなかったので、90度→最後の部分だけを重点的に練習したりしました。

5. フレッシュな時にひたすら片手懸垂にチャレンジ
最後はもうフレッシュな時にひたすらトライです。
軽くアップをしたら練習前にとりあえず何回かやってみたりしてましたね。

・コツや意識
結局振り返ると大事だったことは上でも書きましたが
「登る前のフレッシュな状態のときに、毎回少しずつやる」
ということな気がします。
それまでは登りの練習が終わってクタクタな状態で片手懸垂練習をしていたのでほとんど進歩が無かったように思いますね。

あとは、
「小指側から出力してなるべく広背筋を使って巻き込むように引き上げる」
というのも意識しましたかね。できているか怪しいですが。

僕はあまりできていないのですが、クライミング界のNo.1ワンハンドプルアッパーのJ君曰く
「反動をつけて鉄棒の蹴上がりのようにやると楽」
らしいです。
まぁとりあえずこの動画を見ましょう。驚愕ですから。

 

片手懸垂の必要性

さて、無事片手懸垂に成功したわけですが、そもそも片手懸垂って必要なのでしょうか。
僕の中の結論としては
「できた方が便利。しかしクライミング技術が未熟な時にやると弊害もある」
と言ったところでしょうかね。

クライミングはスタンスがある課題が多く、片手懸垂をしなければ登れないという課題はほぼありえないと思います。
しかしそれでも、片手で振られを耐える時や、クロスのロック気味のキャンパシングで次の1手を出す際などは有効な技術ではあるかと思います。
何よりフィジカルを持っていると、「最悪片手で引き上げれば良いか」などと自信が付きます。

一方で、腕の引きに頼ってばかりいると足を残す意識などが無くなりがちなので弊害がないとも言えません。
登りを間近で見る機会が多いのですが、波田君やりょーがなどは片手ロックオフさえもままならないですが、激ツヨです。
もちろん人並み以上の保持力も持ち合わせていますが、彼らは足の使い方が抜群に上手いのですよね。
もし初めから片手懸垂ができるほどの有り余るパワーがあった場合彼らのような足遣いを習得することは、もしかしたら難しいかもしれないです。わからんですが。

それと、その他のトップクライマーでも片手懸垂がJ君のように10回以上できる人もいれば、意外と0回~1回くらいという人もいます。
例えば中嶋徹さんも過去のブログ

やっぱりフィジカルの不足と頭打ち感は否めないところです
流石に片手懸垂1回は出来んとな

と書いていますし(その後できるようになったらしいですが)

安間佐千さんも、ロクスノ47号の連載で片手懸垂が通常時は1回、筋力トレーニングをした後でようやく2回できるようになったと書いています。

 

とするならば、僕ら程度のクライマーにとっては片手懸垂よりも先にいくらでもやるべき事項があるはずなんですよね。本当は。

 

終わりに

とまぁこんな感じで結局はそんな必要ないみたいな話になってしまいました。
さらっと書くつもりがめちゃくちゃ長くなってしまった、、、
ちなみに今更ですが片手懸垂の成功動画撮って以来、一度も再成功していないです。まぐれか。笑
ではでは。

 

その後に書いた片手懸垂系の別記事

片手懸垂が手っ取り早くできるようになる方法

 

 

<旧『フリークライミング』 こちらにトレーニング系が載ってます>

 

<新『フリークライミング』 岩系が中心>

<ロクスノ47>