東京オリンピックのスポーツクライミング代表選考プロセスを理解&図解する

東京オリンピックのスポーツクライミング代表選考プロセスを理解&図解する

先日、東京オリンピック2020のスポーツクライミングの日本代表選手の選考条件とプロセスが発表されました。

<選考条件とプロセス>

第32回オリンピック競技大会(2020/東京)におけるJOC推薦選手の選考について

これに関して『CLIMBERS』などでも噛み砕いた記事が出ていて、それを読んで大方把握はしたのですが、本当に自分がしっかり理解し細部の疑問をはっきりさせるために図解付きで解説してみます。
ただわかりやすくするためにいくつかはしょって説明しているのと、間違っている可能性もあるので、きちんと理解されたい方は原文もぜひ読んでみてください。

★19年8月23日に以下の記事も含めて大幅に追記しましたので、正しく理解したい方は読んでみてください。まだ曖昧さは残りますが。

  
 


前提事項

まず選考プロセスの前にいくつか前提事項を書いておきます。
基本的には上記の日本代表の選考方法とプロセスの記事と、「第32回オリンピック競技大会(2020/東京)選手選考システム」という各国に対する全体の選考システムの記事を基にしています。

<選考システム>

第32回オリンピック競技大会(2020/東京)選手選考システム

 

オリンピック出場人数

スポーツクライミングでオリンピックに出場できるのは、各国最大でも男女2名ずつの計4名
全体では男女20名ずつの合計40名です。
日本には「開催国割当」があるので男女1名ずつは必ず出場が保障されるのですが、それを利用して3名ずつの計6名などにはならないです。

 

正確なプロセス

一応厳密なプロセスを書いておくと、

1. 選手は選手適格性を満たす必要がある
2. 出場枠を有する選手から、日本山岳スポーツクライミング協会が最大男女2名ずつをJOCに推薦
3. JOCが推薦選手を東京オリンピックにエントリーする

というプロセスらしいのですが、今回は2.の「JOC推薦選手に選ばれる」=「日本代表に選考」というニュアンスで書きます。

 
 

選考プロセスの説明

細かい補足や疑問点はあとに回すとして、まずは選考プロセスの全体像を示します。
男女で全く同じなので、ここでの説明は男女ともに成り立つものだと思って構いません。

 

 

出場枠獲得大会&条件

まず選手は代表に選ばれるには以下の3大会のいずれかに出場する必要があります。

・世界選手権八王子大会(世界選手権、2019年8月11日〜21日、日本 八王子)
・オリンピック予選大会(オリンピック予選、2019年11月28日〜12月1日、フランス トゥールーズ)
・アジア選手権盛岡大会(アジア選手権、2020年4月27日〜5月3日、日本 盛岡)

そして各大会に選考大会割当出場枠(以下出場枠、もしくは単に枠)が割り振られていて、選手はその出場枠に入らなければなりません。

・世界選手権:7枠
・オリンピック予選:6枠
・アジア選手権:1枠

しかし各国に割り振られた枠は2つなので、それぞれの大会で枠を獲得できる日本人は上位2名のみなことに注意です。

 

枠獲得総選手数による選考プロセスの場合分け

すると上記の3大会を終えた時点で、出場枠を持っている選手が0~5名いるという状況が起きます。
それぞれについて選考プロセスが異なるので見ていきましょう。

※19年8月23日 追記※
規約を読み込み理解が進んだので追記します。
以下「選考大会割当出場枠」が最大5名に回ってくることを想定していますが、文面通りに読むとそれは起きえないです。
「選考大会割当出場枠」は各国2枠であり世界選手権で2枠獲得した場合、1枠を確定、1枠を放棄 、という流れになると思います。放棄した分は最後に開催国割当を使って1枠確定させるはずです。
(現時点では野口選手が7位以内かつ日本人1位なので確定。日本人2位の野中選手分は放棄ということになっているはず。)
すると、世界選手権後日本に残された「選考大会割当出場枠」は1枠しかないので、次のオリンピック予選では6位以内かつ日本人1位の選手にしか 「選考大会割当出場枠」 は回ってこない、すなわちオリンピック予選から2名の代表候補は出ないとなります。
これが
・上記のように文面通りに受け取って、「選考大会割当出場枠」 を獲得(&放棄)した選手のみを代表候補、すなわちオリンピック予選では全体6位以内かつ日本人上位1名のみを代表候補としたいのか
・ 「選考大会割当出場枠」 という言葉を使ったのが間違いで、とにかく全体6位以内に入った日本人上位2名を代表候補としたいのか
は現時点では不明です。
※追記終わり※

 

枠獲得総選手数:5~3名の場合

3名以上の枠獲得選手がいる場合、まず世界選手権で枠を獲得した日本人最上位者1名が優先選考選手として代表に内定します。
もし世界選手権で枠を獲得した日本人がいなかった場合はオリンピック予選で枠を獲得した日本人最上位者が内定です。
(ちなみに原文にはオリンピック予選でも該当選手がいない場合を想定しているが、そうすると枠獲得選手数は1名以下となるので、枠獲得総選手数が3名以上としているこの場合ではありえない)
つまり、世界選手権で7位以内かつ日本人首位(世界選手権でいないならオリンピック予選)、であればその時点でオリンピック内定です。

そしてここが大事なのですが、もう1名は優先選考選手を除いた出場枠を持っている選手4~2名の中で、2020年のスポーツクライミング第3回コンバインドジャパンカップ(CJC、2020年5月16日〜17日)の最上位者が内定となります。

なので出場枠を3名以上の日本人選手が獲得した時点でそれ以外の選手にはオリンピックの道は閉ざされてしまうということです。

 

枠獲得総選手数:2名の場合

この場合は簡明で、枠を持っている2名がオリンピック内定です。
CJCは選考には使われないです。

 

枠獲得総選手数:1名の場合

枠獲得選手が1名の場合は、この選手はオリンピック内定
そしてもう1名は、上記の3つの出場枠獲得大会のいずれかに出場している選手の中でのCJC最上位者が内定となります。(開催国枠での出場)
つまりこのケースになれば、世界選手権、オリンピック予選、アジア選手権、のいずれかに出場してさえいればその成績とは関係なくCJCでの勝負となるのです。

 

枠獲得総選手数:0名の場合

枠獲得選手がいなかった場合は、上記の枠獲得1名の時の残りの1名を選ぶ方法と全く同じですね。
3つの出場枠獲得大会のいずれかに出場している選手の中でのCJC最上位者が内定です。(開催国枠での出場)

 

ざっくり理解

ここまでの話を理解するなら

・世界選手権7位、オリンピック予選6位、アジア選手権優勝、のどれかを満たすとオリンピック出場の候補
・その中でも一番早い段階で枠に入ってかつ日本人首位なら内定
・もつれ込んだ場合はCJC勝負


という感じでしょうかね。

 
 

補足・疑問点など

いくつか補足しておいた方がよい点、疑問や自分で理解しきれない点があるので書いておきます。

 

3つの出場枠獲得大会はいずれかの参加で良いか

CJC勝負にもつれ込んだ時の条件として、僕は上で「上記の3つの出場枠獲得大会のいずれかに出場している選手」の中から選ばれる、と書いているけれどこの理解があっているのか少しだけ不安です。
原文には

JOC推薦選手の選考は、上記【1】1〜3の大会に出場した選手の中から

とだけ書いてあるので、「すべての」なのか「いずれの」なのかが判別できないからです。
ただ「いずれの」と解釈するのが自然なので、そう書きました。

 

出場枠の繰り上がり

僕が「選考システム」の「F. 未使用出場枠の再配分 」や「 G.出場枠確定までの日程」あたりを咀嚼しきれていないだけかもしれませんが、出場枠の繰り上がりパターンによっては選考基準が曖昧になるケースがあるような気もします。
いくつかパターンを想定してみます。

 

出場枠に他国の同国選手が3名以上

例えば世界選手権の上位7名の内、スロベニアの選手が3名いて日本人選手の最上位が8位だったとします。
この場合は

世界選手権大会男女各上位7名䛾選手にそれぞれ出場枠1が配分される。ただし各 NOCに男女別に割当てられた選手数を尊重しなくて䛿ならない

原則として7位以内の成績の選手。ただし、繰り上がりの可能性あり

という文言から、8位の日本人最上位の選手に枠が回ってきて、オリンピック内定となるはずです。

 

他国に出場枠を獲得したがオリンピックに内定しない選手がいた

他のケースとして世界選手権の上位7名の内、スロベニアの選手が2名で日本人選手の最上位が8位だったとしてみましょう。
この時点ではスロベニアの選手2名は枠を獲得するので、8位の日本人選手には枠が回ってきません。
しかしその後スロベニア内の選考が進み、世界選手権でスロベニアとしては2番目の順位だった選手がオリンピックに内定しなかった場合はどうなるのでしょうか。
世界選手権としては7枠配る必要があるので、日本人の最上位で8位の選手には枠が回ってくるはずです。
しかしその段階では日本の方も選考プロセスが進んでいるので、あとから「世界選手権8位の選手は内定になります」という決定が下されることになり、他の選考大会と前後して混乱するような気がします。
おそらくそれを防ぐために 「F. 未使用出場枠の再配分 」や「 G.出場枠確定までの日程」 が記述されているのでしょうが、ちょっと大変で追えなかったです、、、。

※19年8月23日追記※
G.出場枠確定までの日程 にあるように大会後2週間以内に各国は出場枠を使用するか放棄するかを確定させる必要があります。
なので上記のような混乱はおきないはずです。
日本だけが開催国割当の枠を持っているので、一度枠を放棄してもあとからその選手が代表になれるというプロセスを踏めるのだと思います。
※追記終わり※

 

同着の可能性

また「選考大会で同着が生じたらどうなるのか」という疑問を持った方もいると思います。
ですが基本的に複合では同着は起こらない仕組みになっているはずです。
なぜならその大会の成績が完全に同一であった場合はシーディングというランキングにさかのぼって順位を決めるというルールがあるからです。

11.11 C) 2)
a)の適用後,なお同着の選手がいる場合,各選手のそのラウンドへのシーディングを比較する.

ただ、シーディングの詳しい算出が(僕には)不明なので、シーディングまで同順位がありえるならば完全な同着も起こりえますが。

 

出場枠獲得大会、特に世界選手権への出場条件

3つの出場枠獲得大会自体への出場条件は本記事では割愛しました。
そして世界選手権への出場条件は以下に記されているのですが、、、正直理解しきれなかったです。
もう2019年の第2回CJCも終えているのでここは重要なのですが、特に「5 選手選考基準」の「1. 単種目」の「b」(というかaとの繋がりも含めて)の箇所がわからないので、その結果複合に出場する選手数が5名になるか6名になるかがちょっと僕には判断できなかったです。
もしわかる方いたら教えていただけるとありがたいです。

<世界選手権出場条件>

世界選手権八王子大会への派遣選手選考について

 

終わりに

簡潔にまとめるつもりが結構長くなりましたがこんな感じです。
もし解釈違いなどがあればぜひ教えてください!
ではでは。