楢﨑智亜選手の圧倒的安定感 ボルダリングWC決勝の順位分析

楢﨑智亜選手の圧倒的安定感 ボルダリングWC決勝の順位分析

先日ボルダリングワールドカップ(BWC)の戦績を過去9年分アップデートしたのですが、実はそれはある検証をするためでした。

ダリングワールドカップ(BWC)の戦績を過去9年分アップデートしたのですが、実はそれはある検証をするためでした。

それは
・楢﨑智亜選手は優勝を逃して準優勝になっているイメージが強いが、実は優勝も含めて決勝で高順位に着けることが多いだけではないのか
ということです。

ここ2年ほど、智亜選手は2位が多いというイメージをみなさん持たれていると思います。
実際に2011年から2019年呉江戦までの表彰台内訳を再掲すると、智亜選手は1位4回に対して2位が11回と、一見1位を逃していることが多いようには見えます。
他の選手と比べても2位の回数は多いです。

しかしこれはあくまで順位の総計です。
本記事ではこのテーマを少し詳しく突っ込んで見ていきます。

<参考 最強ボルダラー記事>

 
 


検証内容・方法

本記事で調べるものは以下です。
・決勝に行く力のある選手は誰か:決勝進出率
・決勝でパフォーマンスの高い選手は誰か:決勝進出時の1位~3位になる割合

その中で智亜選手が他の選手とどのような違いがあるかを調べます。

また、対象は以下とします。
・大会:BWC男子
・期間:2011年~2019年ミュンヘン戦まで

選手:上記期間で5回以上決勝に進出し、かつ1回でも3位以内に入っている選手

あまりにも決勝進出経験が少ない選手は除外するために、5回の決勝進出というのを1つのラインとしました。
要はこの9年間、BWCの最前線で活躍している選手が対象ということですね。

 
 

BWC男子 決勝進出率

ではまずは対象となる選手の決勝進出率を見てみます。

決勝の進出率第1位はやはりthe legend of legends のキリアン選手!
対象は2011年からだけですが、70%を超える凄まじい記録。
続いては宇宙最強クライマーのアダム選手の70%で参戦回数は10回と少ないながら、7回も決勝に行っています。
こうして並べると、智亜選手は決勝進出率は52.9%と高い方ではありますが、ずば抜けて高いわけではないですね。
もちろん2大会に1回以上決勝進出と考えるとそれもすごいことなのですが。

 
 

BWC男子 決勝でのパフォーマンス

いよいよ本題である、決勝進出時に表彰台(1位~3位)になる割合、が以下。

赤が1位、青が2位、緑が3位、になった率です。
分母は決勝進出回数としています。
決勝進出人数は通常6名なので、完全にランダムというか皆の実力が同じならこの数値は50%となりますね。

楢﨑智亜選手は決勝へ行けば9割表彰台

そして、予想通りこの数値が智亜選手は89%と驚異的。
89%ということは、つまり決勝進出すればほぼ9割の確率で表彰台に乗っているということなのです!
アダム選手も86%と非常に高いですが、この2名を除くと残りの選手は7割台以下。
ちなみに智亜選手の順位の内訳は
1位:4回
2位:11回
3位:1回
4位:0回
5位:1回
6位:1回
となっていて、3位も少ないです。

なので2位以上になった割合で見ると83%となるのですが、この数値も断トツです。
グラフの赤と青の足し算で見るので、2位以上の割合はアダム選手で67%、ヤン選手で65%であり、2位以上の確率が80%を超えているのは本当にすごいパフォーマンスなのです。

 

智亜選手は優勝を逃しているわけじゃない

智亜選手はその2位の多さから、”優勝を決めきれない”などと言われることもありますが、実は決勝進出時の優勝確率は22%と決して低くはないのです。
全選手の実力が同じならこの値は1/6=16.7%となるはずなので。

この決勝時の優勝確率はキリアン選手が47%とずば抜けてはいますが、近年智亜選手のライバルと位置付けられているチョン選手が24%、藤井選手も24%なので、彼らと比べても智亜選手は決勝時の優勝確率はそこまで変わらないのです。

 
 

結論

以上より結論付けるならば、智亜選手は1位になり切れず2位が多いというよりはむしろ決勝の舞台で圧倒的な安定感がある、となります。
彼は勝負弱いのではなく、決勝にむしろ強く大舞台でこけずに安定してパフォーマンスを出す力がある選手と見る方が正しいのです。

ただ、とは言え2位になった回数が1位よりこれだけ多いので、なにかそこに要因はあるのかもしれないです。
その傾向を探れば、1位を逃しているパターンとか見えてくる可能性はあります。
それでも決勝に行って22%は優勝しているので、まったく悲観しなくて良いように思えますけどね。

今回はこんなところです。
ではでは。