2017年9月~12月に読んで面白かった本
だいたい半年に一回くらい面白かった本シリーズを紹介しているのですが、溜まりすぎると書く気が起きなくなるので適当なタイミングで書きます。
さらっと簡潔にいきます!
前回はこんな感じ。(上半期と書いているのになぜか4月~8月の5ヶ月だし)
昨日までの世界
著者:ジャレド・ダイアモンド
ジャンル:文化人類学・民俗学
世界史を綴った本としての名作中の名作である『銃・病原菌・鉄』のジャレド・ダイアモンドの最新作。
相変わらず次から次に面白いエピソードや考察の連発でどんどんページをめくりたくなる内容。
本書のテーマを一言で表すなら「伝統的社会の研究」。
現在我々は資本主義や民主主義が当たり前であり巨大国家が支配することで工業化された所謂「西洋社会」に暮らしています。
しかしニューギニアなどには小規模血縁集団や部族社会で暮らしているような伝統的社会が今も残っています。
本書ではそれら伝統的社会の文化・習慣・思想を研究することで、我々が当たり前に感じている西洋社会の構造も浮き彫りにしていきます。
伝統的社会と西洋社会の対比の具体例がふんだんに載っていて興味深いのでいくつか紹介すると、
・伝統的な小規模社会においては集団の外側の世界に関する知識をほとんど持ち合わせていないこともある。ニューギニアの部族の中には自分の住居域からわずか80~190km先に海があるにも関わらずそこに海があるという話を聞いたことがある者がひとりとしていない
・小規模社会の戦争における戦死率は西洋社会のそれを遥かに上回ることが多い。ダニ族の戦争では部族の総人口約2,500人の約5%にあたる125人が1時間のあいだに殺害された。第二次世界大戦の太平洋戦線における最悪の激戦である沖縄戦では3ヶ月の間に約26万4千人がなくなったが、これは日米双方の総人口の0.1%に過ぎない
・伝統的社会では人々の塩分摂取量は少ない。そのため人々は塩を強く求め、塩を手に入れるためであれば努力をいとわない。西洋社会では最も少ない地域で1日6g多いところで20gであるが、例えばバナナを主食としているブラジルのヤノマミ族の1日あたりの平均摂取量は50mgである。
などなど。
それと写真も巻頭にふんだんに使われていて、例えばニューギニア高地人とヨーロッパ人のファーストコンタクトの写真は衝撃的。
ジャレド・ダイアモンドの凄さは自身が教授として進化生物学・生物地理学などの研究をしているのですが、実際にニューギニアなどの伝統的社会に入り込んで彼らの言葉を習得しコミュニケーションを取り、一次情報にたくさん触れているのですよね。
なので綴っていることが具体性を帯びていて、生き生きとしているのです。
やはり何事も自分の目で見て手で触れて頭で考えることが何より大切だと痛感されされますね。
失敗の科学
著者:マシュー・サイド
ジャンル:ビジネス・経済
フェイスブックで繋がっている方から薦められた本で1年以上前のものですが、これもむちゃくちゃ面白い。
「失敗から学習する組織、学習できない組織」という副題が本書のテーマを的確に表していますね。
失敗から学習できない組織の例として(かつての)医療業界の医療ミスの実例で本書は始まるのですが、まずここが緊迫感があり引き込まれます。
あるアメリカの患者が副鼻腔炎の手術という全身麻酔は伴うもののリスクは高くない手術を受けることになりました。
しかし顎の筋肉の硬直によるマスクの装着失敗、軟口蓋によって気管の入り口がふさがれている、など想定外の出来事が重なり患者に酸素を送ることができないまま事態は徐々に深刻に。
もう局面としては気管切開をせざるを得ない状況であり、看護師がそれを医師達に提案するがなぜか医師は気管切開の可能性に関心を示さず口からの気道確保に躍起になり、結局患者は死亡してしまうのです。
そしてこの医療ミスは偶発的な事故としてしばらくの間明るみに出ることはありませんでした。
対照的に失敗から学習する組織として上げられた航空業界は、ブラックボックスによる飛行データとコックピット内音声の分析などにより劇的に事故率を改善しています。
1912年には米陸軍パイロットのうち14人に8人が事故で命を落としていたにも関わらず、現在の事故率はなんとフライト100万回につき0.41回。
まずはこの2つの業界を切り口に失敗を科学するのですが、自分たちにも当てはまりそうなことが多く考えさせられる内容になっています。
クライミングも事故が多いスポーツですが、事故の内かなりの部分が原因分析をしたり学習システムを改善することで防げるはずなんですよねぇ。
サルは大西洋を渡った
著者:アラン・デケイロス
ジャンル:遺伝学・生物学・地質学
HONZか何かで紹介されていて目からウロコだった本です。
従来の生物学や地質学の常識では何らかの地理的障壁(大陸移動による陸地の分断、山の隆起)によって生物の生息域が分断され、分断された地域で隔てられた個体群がそれぞれ異なる方向に進化していく、と考えられていました。
これを分断分布といいます。
しかし本書では、海洋その他の障壁を越える生物の自然分散が歴史上世界のあらゆるところで起こったという説を唱えています。
ゾウが50km以上泳いで大陸を移動した例、コンゴ川の河口から自然にできた浮島に乗って400km離れた島に辿り着いた両生類、そして数千kmの大西洋を渡ったサル。
長い歴史の中での生物の進化や分散に関してこれまでの常識的な考えが覆される本です。
東大から刑務所へ
著者:堀江貴文、井川意高
ジャンル:対談集
サラっと読めますが、共に東大出身で刑務所に入ったことがある2人の対談で、なかなかに刺激的なことが多く書かれています。
編集者は今話題の箕輪厚介さん(幻冬舎)。
僕はホリエモン(堀江さん)は好きでたくさん本を読んでいるので知っていることが多かったですが、井川意高(もとたか)さんについてはほとんど知らなかったのでかなり楽しめました。
井川さんは大王製紙の元会長だったのですがマカオなどでギャンブルにハマり負けがかさんだ結果、なんと106億円以上のお金を自分の会社や子会社から借り入れてしまいます。
結果、特別背任という罪で懲役4年の判決で刑務所へ。(別に横領したとか、脱税したわけではなく、任務に背く行為をしたという罪なのです)
もうスケールが大きすぎてここまでくるとスガスガしいですね。
ホリエモンとの刑務所あるあるも結構笑えます
・刑務所での運動後の麦茶が美味い
・差し入れで嬉しいのは「花」「厚い座布団」
・xx刑務所の飯が美味い/まずい
・禁固以上の刑を受けた場合は満期終了から10年後に刑の言い渡しが効力を失うからそれまでは色々と不便。例えばJRAの馬主になれないなど
とか。
知っていてもほぼ人生で使う機会ないわ。と思ったけれど何があるかわからない世の中ですからね。
そして、井川氏はこんなセリフを
大王製紙は、製紙業界では第3位かそこらの会社なわけよ。
そこの創業家3代目がちょこっとエリエールの事業を立て直したからと言って、井川意高の名前はちっとも歴史には残らん。
今回の事件のおかげで、しょうもない文化史の隅っこかもしれないけど、「井川意高」の名前は間違いなく歴史に刻印されたと思うよ。
器が違いますわ。
押見修造の漫画 『血の轍』『ハピネス』等
著者:押見修造
ジャンル:漫画
押見修造の漫画にハマっております。
『惡の華』が大好きだったのだけれど、特に今連載中の『血の轍』と『ハピネス』はそれを超えるかもしれない。
ただ両方ともその面白さを説明することがとても難しいのですよね。
超簡単にストーリーを書いてしまえば、『血の轍』は「過保護すぎる親とマザコンな息子」の話、『ハピネス』は「吸血鬼と宗教をテーマにしたSF」。
とにかく押見修造は何か自分の中に強烈なトラウマというか原体験みたいなものがあってそれをエネルギーにまかせてドバーっと表現することが得意ですね。
それと、初期の作品から絵が劇的に上手くなっていて感動です。
『血の轍』とか特に絵だけで引き込まれる。
楳図かずおの影響を受けているのかな。
血の轍
ハピネス
あとヒロインが全員くっそカワイイのもポイント高し。
絶対押見さんの何らかのコンプレックスが表れている。
らーめん才遊記
著者:原作 久部緑郎、作画 河合単
ジャンル:漫画
らーめんを中心とするフードコンサルティング企業に主人公の女の子が入社して様々な出来事を越えていくストーリー。
僕の大好きなベンチャー社長であるノリ弁さんがこう評していたのでこれは読むしかないと思い即買い。
多分それっぽいビジネス書とかを答えるべきなんでしょうが、やっぱり僕は「らーめん才遊記」ですかね。ビジネスにおいて業態も環境も成功要因も違う中で、国民食とも言えるラーメンを売って成功させる知見や感性というものには得るものは大きいと思います。#Sarahah pic.twitter.com/5vBRZYfz7J
— 1つ目の徳ノリ弁当 (@tokunoriben) 2017年11月24日
普通にらーめんのグルメ漫画としても楽しめるのですが、グルメ漫画というよりはビジネス漫画ですね。
随所にかなり鋭いことが書いてあります。
特に芹沢(ハゲ)がマジで核心突きます。
有名な「金と仕事と責任」に関するこれとか
まぁ時には「やるな」も言うべきだけど、謎の説得力のあるこれとか
主人公の女の子によるリーダーシップ戦略とか
競合に対して付加価値をつけてむしろ値上げをして勝った話とか
気軽に読めるのでオススメです。
と、なんだかんだで長くなってしまった、、、。
僕が好きそうなオススメ本あれば紹介してくださいー!
ではでは。
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