フリーソロの最高グレード記録まとめ(2020/4時点)
しばらく間が空いていましたが、クライミング基礎データまとめ 。
今回はフリーソロの記録です。
フリーソロとは
「フリークライミング」と「フリーソロ」の用語の違いは、勘違いされることが多いので説明しておきますね。
・フリークライミング(もしくは単にフリー)
登るためにチョークやシューズ以外を使わず自分自身の身体だけ行うクライミングを指します。
墜落した時のためにロープ等で安全確保することはOKです。
・フリーソロ
フリークライミングの中でも、通常はロープを付けて登攀する高さのルートをロープを付けずに登るスタイルを指します。
ただし、高さのあるボルダリング(ハイボールなどと呼ばれる)と捉えるか、フリーソロと捉えるかの基準は曖昧です。
墜落したときに死や超重大な怪我に繋がるかどうか、というのは1つの基準かもしれないですね。
あとどれだけ高くてもクラッシュパッドを敷いていたらハイボールと分類される気はします。
<参考>
フリーソロの最高グレード記録一覧
フリーソロ記録を
・シングルピッチ or マルチピッチ
・オンサイト(OS) or レッドポイント(RP)
にわけて一覧表にしました。
前提として、フリーソロの記録は発表されていないものもあるため上の表が正確でない可能性はあります。
また冒頭で触れたようにどこからをフリーソロとするかは難しいです。
例えばディープウォーターソロ(ロープ確保は無いが下が海などであり、落ちても死なない可能性が高い)であれば、クリス・シャルマは超高グレードのAlasha(5.15a~b)を登っています。
ジェイソン・キールやケビン・ジョージソンなどもクラッシュパッドを使用して、ボルダースタイルでThe Fly (5.14d/V14)を登っています。
この他にもフリーソロだけれどウイングスーツを着用していて、落ちてもベースジャンプのように滑空できるようにしておくスタイルもあります。危険であることに変わりはありませんが、空身のフリーソロよりは安全です。
と色々と議論は尽きませんが、この記事では一先ず何も安全バックアップ付けていないと思われる記録をまとめてみました。
この記事でも大いに参考にしましたが、フリーソロの歴史や記録は『Rock & Snow 070』が非常によくまとまっています。
<ロクスノ70号>
フリーソロ記録の個別ルート紹介
上記の表に挙げたルートを個別に簡単に紹介していきます。
Michael Reardon「Neon Dust」
シングルピッチのオンサイトフリーソロ記録。
マイケル・リアドン(Michael Reardon)は超有名クライマーというわけではないかもしれませんが、フリーソロの世界で数多くの功績を残しています。
彼が持つ信じられない記録に、19時間で280本のルートのフリーソロがあるなどとにかくぶっ飛んでいるクライマー。
★追記★
アレックス・オノルドも16時間で290本というフリーソロ記録を持っていました。リアドンの280本を意識した?
★追記終わり★
特にオンサイト(初見)でのフリーソロを得意とし、杉野保さんも「世界最強のフリーソロイスト」と称しています。
リアドンの記録ははっきりと残されていないものもあるのですが、調べた限りではイギリスでネオンダスト(Neon Dust)という5.13b/cのルートのオンサイトに成功していると思われます。
あのアレックス・オノルドですら、フラッシュ(情報ありでのファーストトライ)での最高グレードがヘヴン(Heaven 5.12d)であることを考えると、5.13b/cのオンサイトフリーソロという記録の凄まじさがわかりますね。
残念ながらリアドンは2007年にアイルランドのシークリフでフリーソロ中に壁の取り付きにいるところを高波にさらわれ、帰らぬ人となりました。
<リアドンの映像>
Dave MacLeod「Darwin Dixit」
シングルピッチのレッドポイントフリーソロ記録。
デイブ・マクロード(Dave MacLeod)はスコットランドのクライマーであり、イギリス最難トラッドのラプソディー(Rhapsody E11/7a 5.14b~c)の初登などで知られます。
それまでシングルピッチのフリーソロ記録はアレックス・フーバーのコミュニスト(Kommunist 5.14a)でしたが、2008年にデイブ・マクロードがスペインのマルガレフでダーウィンディグジット(Darwin Dixit 5.14b)を登り記録を塗り替えました。
<デイブによるダーウィンディグジット>
Michael Reardon「Romantic Warrior」
マルチピッチのオンサイトフリーソロ記録。
前述したリアドンの最大の偉業とも言えるのが、ニードルズのロマンティック・ウォーリアー(Romantic Warrior 5.12b 9ピッチ)のオンサイトフリーソロです。
このルートは『Rock & Snow 045』のOLD BUT GOLD海外編で紹介されているので、ぜっっったいに必読!
少し引用させていただくと、杉野さん曰く
それがヨセミテのアストロマンやロストラム(たとえルーフフィニッシュだとしても)だったら、ここまで驚かなかっただろう。同じ12でもフィンガーロックの続くクラックならわかる。しかし、このルートは性格が違う。傾斜の緩い花崗岩特有の不確実なムーブ、指先をほんの少ししか受け付けないレイバックとステミング、足は今にも滑りだしそうなスメアで耐え、わずかに開いたクラックに指をねじ込む順番を間違えたら、もう戻れない。
私には、自暴自棄になった自殺願望者がイチかバチかでやったフリーソロとしか思えなかった。
とのこと。
この後の杉野さんの挑戦も胸が熱くなるので本当に全てのクライマーに読んで欲しいです。
ロマンティックウォーリアーは壁の見た目も本当に美しく、僕たちの生涯ティックリストの1つです。
<ロクスノ045>
Alex Honnold「Freerider」
最後はマルチピッチ(というかビッグウォールですが)のレッドポイントフリーソロ記録。
こちらは映画にもなっていますし、もう皆さんにお馴染みですがアレックス・オノルドによるフリーライダー(Freerider 5.13a 29ピッチ)が最高グレードです。
(もしかしたら僕が調べ逃していて、もっとピッチ数の少ないマルチで高グレードのフリーソロはされているのかな?)
説明不要かもしれませんが、アレックスは数々のシングルルート・マルチピッチのフリーソロを成し遂げ、その集大成となったのが2017年のヨセミテエルキャピタンのフリーライダーのフリーソロ。
クライミングをやらない人であっても、高さ約1,000mのルートを命綱なしで登ると考えただけである程度は伝わるでしょう。
エルキャピタンのフリーソロを成し遂げたのは未だにアレックスただ一人。
今後追随するクライマーは果たして現れるのでしょうか。
<フリーライダーのフリーソロ>
国内のフリーソロ記録
日本国内はオンサイトは不明ですが、レッドポイント記録をわかる範囲で紹介しておきます。
シングルピッチはおそらく中原栄さんによる備中のプリシラ(5.14a)が最高グレードだと思います。
ただしクラッシュパッドの使用等は不明。
マルチピッチは佐藤裕介さんによる甲斐駒ヶ岳のスーパー赤蜘蛛(5.12a 9ピッチ)です。
スーパー赤蜘蛛は5.11dともグレーディングされていますが、7,8P目のスーパークラックを繋げると5.12aと言われています。
このルートは濡れていることが多くワイルドさもあるため、グレード以上の快挙だと個人的には感じています。
以上です。
今後も気になる記録系をちょこちょこまとめていこうと思います。
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