1テンよりも、「繋がる感」

1テンよりも、「繋がる感」

自分の考えの整理のためにも、スポートルートに取り組んで見えてきた自身の課題や気づきを書いてみる。
全3記事くらい。
脳内でぼんやり思っていることをバーッと書くので、あまりきちんと論理立っていなかったり結論がなかったりする内容だけれど。

主にオンサイトよりも、何回もトライした上でのレッドポイントに関する話が多め。
 
 


1テンが完登に近いとは全く限らない

あるルート(もしくは長めでバラせるボルダー)のトライをした時に、途中でテンションが入りながらもトップアウトできたとする。
その際テンションが入った回数が〇回だと、「〇テンで抜けた」のように表現することがある。
“オンサイトを狙ったけれど3テンだった”
“ようやく1テンまでこぎつけた”

などなど。

この時普通に考えると、3テン→2テン→1テンと徐々に少ないテンション回数を達成していけばその先に完登があるような気がする。
僕も以前までは、”1テンに持ち込んだからあと少しだ”などと考えていた。
しかし最近わかったことは、テンション回数を縮めて1テンまでもって行ったところで完登が近い保証はどこにもないということだ。
課題の性質によるが1テンと完登の間に果てしない溝が存在することは往々にしてあるし、場合によっては1テンよりも完登に近い2テンなども存在するだろう。
そして完登のためには、「1テンに持ち込むこと」以上に、「次のトライできっと下から上まで繋げ切って完登できるはずだ」という「繋がる感」をいち早く得ることが大切だと思う。

 
 

どうやって「繋がる感」を得るか

美しき流れを登るのに16日かかったわけだが、day5の時点で2テンに、day6の時点で1テンに迫っていた。
しかし自分の中で“次のトライできっと登れるだろう”という「繋がる感」が全く得られていなかった
1テンで抜けることができても自分がこの課題を最初から最後まで落ちずに登れるイメージが全く湧かなかったのだ。
そして過去の自分を振り返ると「繋がる感」が無いままトライしても登り切れた経験はほぼない。
(もちろん繋がると思ってなかったけどやってみたら登れちゃったということも稀にはある)
オンサイトトライでも、”きっと登り切れる”という確信無しに取り付くとだいたい落ちる。

「繋がる感」が得られない原因はケースバイケースだろう。
持久力がどうしても続かない、最後に核心があるため強度負けする、あまりに確率の悪いムーブが連続する、などなど。
しかし一流のトップクライマーは少ないトライ回数で、場合によってはオンサイトトライのオブザベ時点で、「繋がる感」を得ているように思う。
仮に最初のトライでテンテン(何度もテンション)していても、効率良くムーブを探り、繋がる可能性の高いシーケンスを次々に見つけていく。
ルートの核心を見抜いて、”この核心でこの強度を出すために、その前でこれくらいレストで勝負だな。あとは現場処理でも繋がるけれど最終局面は落ちないためにこのムーブ選択だな”などと素早く判断を下し、次のトライでそれを決め切る。
仮にその日のうちに登り切れなくても、次そのルートに対峙する時にどれくらいの下準備をし、どうコンディションを整えれば登れそうか、もしくはどういったトレーニングを積めば完登できそうかという中長期的な「繋がる感」を得る術も長けているように見える。

実際に僕の美しき流れの場合は、day6~10までは1テンだけれど全く「繋がる感」が持てず、まるでただ1テンするために登っているというような出口のない状態に陥っていた。
どうせ落ちると思っているため気合も上手く入れられず、登っては落ちることを繰り返す悪循環。
これは流石に何かを変えなければと思い、day11頃に最終核心で使うホールドをそれまで選択肢から外していたものに思い切って変更してみた。
すると以前とは違ってそのホールディングがしっくり感じるようになり、これは繋がるかもしれないと一気に完登への希望の光が見えた。(この現象は別記事で書く)
あくまでこのケースだが、「繋がる感」を埋める最後の1ピースはムーブチョイスにあったのだ。
人によってはその最後のピースは、レストポイントの改善かもしれないし、体調を整えることかもしれないし、天候がグッドコンディションになることを待つことかもしれないし、一概には言えることではないだろう。

 
 

「繋がる感」の確度

しかし「繋がる感」を持てたとしても、実際にトライしてもやっぱり繋がらないことは往々にしてある。
実際に僕もday11に「繋がる感」が下りて来てから完登までに6日もかかってしまった。
要は「繋がる感」の確度が低いということだ。
その原因は、自分の実力を上手く見積もれていない、パフォーマンスが安定しない、ムーブの細かいところまで詰め切れていない、思わぬ障壁を見逃している、などなどあるが端的に言ってしまえば「繋がる感→決め切る」という経験をどのくらいしてきたかによるだろう。
「繋がる感」のテンパイ状態から上がり切るには、身も蓋もないけれどルートに取り付いて完登する絶対的な経験量がものを言うのだ。
この「繋がる感」の確度は失敗と成功を繰り返して自分自身チューニングしていき上げていく他ない気がする。