2020年秋~21年春に二子山で登ったスポートルート 美しき流れなど
昨年の夏~秋はボルダリングに力を入れていたのですが、Rampageを登り一区切りついた後は二子山でスポートルートに取り組んでいました。
以前今シーズンは3つの目標を立てたと書きましたが、3つ目の目標は
・スポートルートでの自分の限界を知り、押し上げる
-5.13台をいくつか登る
-5.14a前後に挑戦する
としていました。
これまで僕自身はスポートルートの経験が乏しく、クライマーとしてもう少しスポートを登り込み身体の使い方や持久力を高めたかったですし、何より今自分がどこまで登れるのかを知りたかったです。
そしてスポートを追求することで得るクライミング能力は自分の器を間違いなく大きくしてくれると信じていました。
このシーズンに登った課題について書いてみます。
登った課題
自分の限界に近いグレード帯だとどうしても日数がかかってしまうもので、5.13a以上だと登ったものは以下の4本。
いずれも二子山。
・オタクノGorilla(8a+, 5.13c)
・吽(8a, 5.13b)
・真珠入り(5.13a 体感グレードは5.13b)
・美しき流れ(5.14a?)
オタクノGorilla
昨年の二子山西岳再生活動に際して平山ユージさんがローソク岩の北面カンテに引いたルート。
通称ゴリラ。
大工さんがかつて初登したオタクノコザル(7b, 5.12a/b)をトップ付近までエクステンションしたもので、パッと見て登攀意欲をそそられる攻撃的なラインです。
初登時は季節的にかなり暑く8b 5.13dが付けられましたが、その後8a+ 5.13cで落ち着いています。
シーズンインしたばかりの9月に幸先よく登ることができ、自信にも繋がった思い出深い1本です。
<ゴリラのインスタ>
吽
二子山西岳の墨壁にマサさんが引いたラインです。
序盤から気が抜けず最後にガツンと核心があり、登りごたえがあります。
僕はこの吽を2ピッチ目として上下にルートを開拓し、西岳頂上に抜ける全4ピッチのマルチピッチ「ハイウェイ」を設定。
1ピッチ目も7c 5.12c/dと強度がありその後に吽が控えているという手強い構成でしたが、3日間のチャレンジでハイウェイをワンプッシュで登り切りました。
<ハイウェイのインスタ>
真珠入り
シーズン最終目標の美しき流れを登るためにも、まず流れと最終局面を共有する真珠入りを先に登ってみようと思い触りました。
結論から言うと真珠入りは流れの核心に逆から入るのが主流なのでムーブとしてはあまり共通していないですが、それでも真珠入り単独で良いルートでした。
出だしの2級はあると思われるパワフルなボルダーパート、そして最後によりハードなバランシーパートが待ち構えています。
途中でニーバーで大レストできたり、右のホテル二子のホールドは使わないなどの限定はありますがユニークで面白いルートだと感じます。
またグレードはどのトポでも5.13aとなっていますが、任侠道を5.13aとするのが現在のスタンダードならば、明確に1グレード以上任侠道よりも悪いと言えるので少なくとも5.13bは付けて良いのではないでしょうか。
実際に僕が完登までに要した日数やトライ数を他のルートと比べても、
・真珠入り 5.13a:3日間6トライ
・ゴリラ 5.13c:3日間5トライ(下部のコザルパート2トライを入れると7トライ)
・吽 5.13b:3日間6トライ(ハイウェイとして下ピッチからトライ。完全に濡れている状態での2トライ含む)
と5.13b~cとほぼ同等になっています。
むじろ真珠入りは12月と超グッドコンディションの時期にトライした結果なので、ゴリラや吽よりも難しい可能性もありますが僕だけでは判断できないです。
ちなみにグレードの話ついでに唐獅子牡丹にも触れておきます。
唐獅子はトポでは5.13bや5.13b/cと表記されていますが、僕の体感では上記3本より日数やトライ数もかかっている(2年前ですが4日間10トライ)上に、隣の任侠道と比べても確実に2グレードは高いはずなので5.13cが妥当だと感じます。(最近のホールド欠損に関しては後述します)
弓状で登っているクライマーの中には唐獅子牡丹よりも真珠入りの方が難しいのではないかと言う方もいますが、僕は全体的なムーブ強度と必要な持久力という意味で唐獅子牡丹の方が1グレード上だと思います。
<真珠入り>
美しき流れ
美しき流れは唐獅子牡丹を登り真珠入りに抜けるラインであり、二子山の弓状エリアの真ん中を横断します。
1992年にサンチェさんこと鈴木朗さんが初登。
今シーズンのスポートの集大成としたいルートはいくつかあったのですが、せっかくボルダーを離れてスポートを登るなら短くて強度が高いものよりも持久力が問われるものに挑戦したいと考え流れを選びました。
また流れは僕にとって弓状エリアの最終目標的な位置付けであり、この二子山というフィールドで遊んでいる以上はいつかは向き合わなければならないルートでした。
最初の何日かは唐獅子の感覚を思い出すのにも手こずり、また最後の最後まで上部の真珠入りへ入る核心のムーブ選択に苦戦し結局のところ16日間40トライ、2年前の唐獅子も合わせると20日間50トライと自身最も日数を費やしたルートとなりました。
“唐獅子で100%落ちなくなってからが流れのスタートライン”というのはよく聞く話で、最初の頃は唐獅子核心の確率が半分程度、その後も数回に1回は落ちてしまう感じだったのですが、最後の7日間くらいは完全に唐獅子を自動化。
一度も落ちるはずがないという状態に持っていきようやく流れの完登に辿り着きました。
なので唐獅子を連続20回くらいRPした計算になりますね。
正直なところ唐獅子牡丹があまりに完成された傑作ルートであるため、そのエクステンションである美しき流れに挑戦することにどれほど意味があるのかと思うこともありましたが、登り終えた今は流れのライン取りやルート構成が合理的かつ素晴らしいと心から感じます。
むしろこの壁に1本だけラインを引くならそれは美しき流れではないかとすら思えます。
(登れるとその課題を絶賛するという、クライミングあるある。笑)
ルートとの向き合い方、日々のトレーニング、体重、食事など迷走に迷走を重ねまた一つ成長できた気がします。
このあたりも後日ブログに思っていることをまとめます。
<美しき流れ>
唐獅子牡丹、美しき流れ、のホールド変化・欠損等
変化の前後を僕はわかっていないので言及するか迷ったのですが、2つのホールド変化について書いておきます。
ムーブについて触れるので気になる方は飛ばしてください。
1つ目。
去年の11月に唐獅子牡丹の核心右手ピンチのホールドが欠損しています。
大幅な変化はないようですが、右手ピンチが持ち易くなったと感じる方もいるようです。
ただ僕は少し特殊なガストンムーブで核心を処理しているためこの欠損した箇所は元々使っていないので、保持感がどれほど変わったのかはわかりません。
流れに迷走している時にここをピンチムーブに変えようかと試みたこともあるのですが、相変わらず悪くて選択肢から除外しました。
なのであくまで僕にとってはこの核心は欠損箇所を使わないガストンムーブの方がやり易いことには変わらないため、唐獅子牡丹は現状でも5.13cに感じています。
2つ目。
『日本100岩場』などの美しき流れの説明文に”ホールドが欠けグレードが上がっている”などと書かれていますが、その真珠入り核心に入る際の左手粒がここ最近で更に欠けたようです。
(スタンスの変化もあると耳にしたことがあるのですがこちらは詳細不明)
ですので従来のこの粒を握ったまま右足を振り上げて核心を取るムーブは難易度が上がっていると思われます。
今シーズン流れは知る限り僕を含め4名の完登者が出ていますが、この従来の左手で粒を引いていくムーブでの完登者はいないです。
僕もこの左手で粒を握ったまま右手縦ホールドを取りに行く従来ムーブをずっと試していたのですがバラすことはできても繋がらず、day10あたりに最近主流となりつつある左手で薄いカチを使うムーブに変更しました。
ただこの件に関しても以前のホールド状態を知らないので、それを比較して語ることはできないです。
美しき流れのグレード
美しき流れを除くと5.13cまでしか登っていないのでグレード感について正確に語れないのですが、わかる限りで言及しておきます。
近年トポ等で美しき流れは、以下のように書かれています。
・『日本100岩場』:元々5.13c、ホールド欠損で5.14a?
・『関東周辺の岩場』:5.13d/5.14a
・Climbing-net:5.14a
僕の中にまだ5.13dや5.14aの指標が無いので絶対的なグレーディングはできませんが、
・流れ核心は唐獅子核心よりもボルダーとして明らかに悪い
・自身のトライ日数や他の方との話などから、唐獅子よりもグレード2つ分は上だろう
とは感じています。
このあたりはもう少し他の岩場を含めてスポートルートの経験値を高めた時にいずれ振り返ってわかることでしょう。
とにかく今はこの素晴らしきルートを登り切ることができたことに満足。
(言い方は悪いですが)ようやく流れの呪縛から解放されたという気持ちも多少ならずともあります。
しばらくはトラッド、マルチ、ボルダーなどにまた楽しく厳しく取り組みます。
ビレーをしてくれた方々、一緒にトライしてくれた方々、ムーブなどについて色々語らせてもらった方々、応援してくれた方々、みなさんありがとうございました。
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