リードクライミングの予選で、順位の相乗平均を取る理由
- 2017.02.22
- データ&ルール リードクライミングルール
3月4,5日(土日)に日本選手権リード競技大会2017(以下、日本選手権)が開かれます。
そしてダッシュさんと僕がまたYoutube中継の実況解説を担当させていただく予定なのですが、個人的にリードはボルダーより詳しくないのでちょこちょことルールを読み返したりなどしています。
その中で面白い発見などがいくつかあったのですが、今回は「予選の総合順位付けの方法」について簡単にですが考えてみたいと思います。
予選のルール概要
日本選手権も含まれますが、IFSCルールに則ったリードクライミングコンペの予選では基本的には全選手が2本の異なるルートを登ります。
そしてそれぞれのルートでの順位をR1、R2とした時に、以下の式で求められる総合ポイントが小さい選手上位26名が準決勝に進みます。
総合ポイント=(R1×R2)の正の平方根 (すなわち予選順位2つの相乗平均)
ちなみに予選の各ルートで同高度の選手が複数人生じた場合には、R1やR2は「複数人が占める順位の平均順位」になります。例えば、10位が3人いた場合は、10位、11位、12位を3人で占めていると考え、3人ともに11位と扱います。
なぜ相乗平均なのか
しかしなぜ予選順位の相乗平均を取るのでしょうか。
もっと単純に一般的な平均(相加平均)を取って
総合ポイント=(R1+R2)/2
などではいけないのでしょうか。
もしこの理由や経緯を知っている方がいれば是非教えてほしいのですが、とりあえず自分で考えた限りでは2つの理由が浮かんだので書いておきます。
理由1. 総合ポイントがばらけやすい
1つ目は相乗平均を取った方が総合ポイントがばらけやすくなるからだと思います。
単に足し算より掛け算の方が出来上がる数の組み合わせが増えるという話なのですが、一応例として10人参加の場合を書き出してみました。
例えば現行ルールでは
予選の2本のルートの組み合わせが
1位と6位の時、総合ポイントは2.4
2位と5位の時、総合ポイントは3.2
3位と4位の時、総合ポイントは3.5
となります。
しかしこれを順位の単純な相加平均を取ってしまうと、上記の3パターンはいずれも総合ポイントが3.5となり、同点となってしまうのです。
つまり相乗平均を取ることで同点で準決勝進出者多数ということが防ぎやすくなるのです。
(ちなみに10人参加の場合では、相乗平均を取った場合42通りの総合ポイントが生じますが、相加平均では19通りしか生じないです。)
理由2. 高順位により価値を持たせる
理由の2つめは相乗平均を取る方が高順位により価値が出るということです。
先ほど挙げた予選2ルートで、1位と6位、2位と5位、3位と4位、の3選手で考えてみると、
相乗平均を取った場合、1位と6位の選手が2.4ポイントで最も総合ポイントが少なくなり、一番評価される選手となります。
そして3位と4位の選手が総合ポイントで3.5となり一番評価が低い選手となります。
一方で相加平均の場合はこの3選手とも総合ポイントが3.5で同じ評価となってしまいます。
要は現行ルールでは掛け算をしているので、高順位ほど1つ順位が違うだけで総合ポイントに大きく影響するのです。
(1位と2位の差は2倍なので、10位と11位の差とは全く違います。10位と20位の差に等しいのです)
これは僕の予想も大いに含まれますが、予選の片方のルートで1位を取れる選手というのはかなりの強豪選手なので、仮にもう片方のルートで多少こけても高い総合ポイントを与えて予選通過させようという狙いがあるのではないでしょうか。
他スポーツとの比較
他のスポーツでも順位の相乗平均を取ることが一般的にあるのかと思い調べてみたのですが、、、見つかりませんでした。
他のスポーツだともっと複雑な得点の算出をしているのですよね。
例えばスキーのノルディック複合では、ジャンプの飛距離を得点化して、そのポイントの差分を更にクロスカントリーの時間に換算してスタート時間をずらしています。
陸上の十種競技はもっと複雑でそれぞれの競技結果に対してポイントに換算する独自公式があり、それによって換算されたポイントの合計で競います。詳しくはリンク先を見てください。
なのでリードクライミングの相乗平均もスポーツ等で広く使われている一般的な順位付けの方法ってわけではないのかもしれません。
他のスポーツで使われている例を知っている人がいたら教えてくれると嬉しいです。
終わりに
こんな感じです。
相乗平均の合理性ははっきりとはわかりませんでしたが、自分の中ではなんとなく納得できました。
他のルール等も調べたりしてみます。
ではでは。
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