クライミングジムは何軒あるか 全国ver. (2020年5月)

クライミングジムは何軒あるか 全国ver. (2020年5月)

6年ほど前に「クライミング市場動向シリーズ」として、
1. ジム店舗数
2. 競技人口推定
3. 他スポーツとの比較
という一連の記事を書きました。
この記事は良くも悪くも大きな反響があり、振り返るとこのブログmickipediaを広く知ってもらえるきっかけになったと感じます。
この時期からクライミング業界はマス層も取り込みメディア露出も増え大きく盛り上がっていきました。

今回は「クライミングジムの店舗数」を最新版(2020年5月ver.)にアップデートします。
かねてから、
“ジム件数は500件に迫る/超える”
“クライミングジムは飽和状態だ”
“閉店数の方が多い”
などと方々で聞きはします。
ですが、直近の店舗数に関して正しいデータが見当たらなかったので、それならばと自身で調べました。

また、新型コロナ騒動の渦中で再びクライミング業界がターニングポイントを迎えようとしている今、数値としてこの瞬間の事実を把握しておくことにも意味があると思います。
後述する通り、ここに記載するジム件数等の数値は正しい保証はなく抜け漏れやダブり等のある暫定的なものです。
それでも構わなければ、誰でもご自由に資料等に使っていただいて構いません。

 
 


調査方法

2017/9まで

前回記事に記載していますが、2014/9までの数値は『CLIMBING joy』と当時の BOLLOGというサイトを参考にしました。
それ以降、『CLIMBING joy』 は年1冊の3月発行となったので、2015/9と2016/9は3月データからの推定値です。
Rock&Snow 076』にて2017/6付近で、ジム件数が505軒というデータ出ています。
またこの時点で幅広くカウントすると530軒はあったという情報が、ロクスノの編集部から寄せられたため2017/6時点で530軒と仮置き、2017/9はそこから推定しました。

 

2020/5現在

以降、2018年と2019年は丁度良い参考資料が無かったため飛ばし、2020/5現在を調査しました。
現在のジム件数はCLIMBING-netの「クライミングジム一覧」で検索をかけると554軒と出るのですが、相当数の抜け漏れ、及び既に営業を止めてしまったジムもいくつか見られました。
ですので、現在のジム軒数に関しては非常に原始的ですが、Google Map検索で「都道府県 クライミングジム」「都道府県 ボルダリングジム」などと検索し集計しました。

 
 

注意事項

クライミングジムとは

まず難しいのが「クライミングジム、ボルダリングジムとは一体どこまでの範囲を含むのか」というものです。
スポーツジムにボルダー壁がある、公共施設の中、複合アミューズメント施設の一部、温泉に併設、etc…。
このあたりは線を引くことが難しかったため、ホームページを見るなりして「ここなら一般的なクライミング、ボルダリングをすることが可能そうだ」と私が主観で判断しました。
生粋のクライマーの方々からするとクライミングジムと呼べないような施設もあるとは思いますが、実際にそういった場所でクライミングが楽しまれている以上、これが現在のジムの在り方の一側面なのかなと考えます。
なので、かなり広めにはカウントしたと思います。

 

データ整合性

2017年の『Rock&Snow 076』ではかなり細かく調査したようです。
ですので2016年以前から実は存在はしたものの、数値に含まれていなかったジムが2017年時点で洗い出されたはずです。
同じく、2017年時点の530軒には含めなかったような施設併設系のジムを今回数え上げた可能性もあります。
ですので、データの整合性を考えるうえで以下を考慮する必要があります。
2017年の数値はそれ以前の数え漏れを調べ上げている
・2020年の数値は2017年以前では対象に含めていないジムまでカウントの範囲を広げている可能性はある

つまり、2017年と、2017年~2020年にかけての純増数は多少割り引いて考えるべきことに要注意です。

 

閉店チェック漏れ、カウント間違い

調査の仕方がGoogle Map上でのカウントである以上、
・閉店チェック漏れ
・単純なカウント間違い、漏れやダブり
・Googleに登録されていないジムの漏れ
等々の人的ミスはかならずあります。
ここはご容赦ください。

 
 

クライミングジム件数推移

いつものごとく前置きが長くなりましたが、ジム軒数推移を貼ります。

<クライミングジム軒数推移>

調べた限りでは、2020年5月現在で全国のクライミングジムの件数は666軒でした。
僕自身550軒くらいかと思っていたのでこの数字はかなり多い印象を受けます。
調べるとわかるのですが、特に地方では直近でも新規のクライミングジムはまだまだ出店されています。
また上述したような複合施設や県営・市営施設の中に併設されているようなウォールの数も相当数あります

ただし、2017年に103軒増えているというのは上述したようにここで精緻に調べ上げが行われたからであり、実際にはここまで増えていないはずです。
また、直近の3年間で年平均45軒増えているという数値も真に受けて良いかは要注意です。
前述の通り、2017年時点で対象施設の違いからそもそもカウントしていない可能性もありますし、2017年から2020年までの3年間で大きく業界の環境が変わったので3年間で均一に45軒増えたと見るのはおそらく間違っています。

 
 

ジム軒数は直近で飽和したのか

666軒全てでオープン年を調べたり、営業を止めてしまったジムの時期を全て調べ上げることは困難だったのですが、閉店開店.comというサイトである程度のトレンドは見れるのでまとめてみました。
このサイトは全て網羅しているわけではないですが、代表的な店の開店年月と閉店年月がまとめられています。
それによると、2017年から2019年、そして2020年5月までのクライミングジムの開店数と閉店数は以下になります。

<クライミングジムの開店・閉店数の推移>

2017年と2018年はあくまで開店閉店.comに載っていた範囲ですが、開店数が閉店数を上回りそれぞれ純増が7軒と10軒となっています。
しかし2019年では逆転し、開店数が12軒、閉店数が19軒となり差引マイナス7軒です。
2020年も5月までですが、9軒の純減です。
開店閉店.comは全てカバーしていないのと、施設併設系ジムが実は増えている可能性も捨てきれないのですが、トレンドとしては2019年を境目にクライミングジムの件数が飽和に近づいたという見方はできるかもしれません。

都道府県別の件数推移もあるが、長くなってしまったので次回に回します。

<都道府県別>

 

note記事:クライミングジム業界の収益性を、5フォース分析で考える

この調査に付随して、
・クライミングジムの件数はなぜ増えたのか
・競争環境など、業界の構造はどう変化してきたのか
・それによって収益性はなぜ落ち込んだのか
などをもう少し踏み込んで考えたのですが、マニアックなのでnoteに書きました。
興味がある方はどうぞ。