ボルダリング&リードのオンサイトorフラッシュ最高グレード記録まとめ(2020/7時点)
※2020年3月に書き、2020年7月19日最終追記
クライミング基礎データまとめ、自分が気になることを淡々と続けていきます。
今回は岩場でのボルダリングとリードにおける、オンサイトとフラッシュの最高グレードの記録をまとめます。
オンサイト、フラッシュ、とは
用語の説明
・オンサイト (OS)
他人の登りを見る、ムーブを教えてもらう、などの課題に関する一切の情報を得ず、自分の最初のトライで完登すること
・フラッシュ (FL)
課題に関する情報はいくら得ても良いので、自分の最初のトライで完登すること
なので通常OSはFLに包含されます。
用語の定義に関する諸問題
ただし、クライマー個々人でこのあたりの用語の違いがあったり、クライミングの種類によっても用語の捉えられ方が違ったりします。
例えば、OSで許される情報はどこまでなのかという点。
「他人の登りを見る」「ムーブを教えてもらう」をしてしまったらOSにはならないというのは共通見解ですが、「ルートの写真を見る」「(クライマーを注視せずに)当該ルートのビレイをする」などをしてしまった場合OSなのかはおそらく判断の分かれるところです。
トラッドなら「使用カムの番手」「カムをどこに決めるか」などの情報の扱いも人によって分かれる気もします。
また、ボルダリングにおいてトライの前に「途中のホールドを触って保持感を確かめる」という行為をし、その後1回で登った場合はFLと呼べるのか、という問題もあります。
コンペだとこれはFLにはなりませんが、岩の場合容認されていることもあるように思えます。
後はある課題を既に触ったことがあり、その課題を下部や上部を共有する別の課題を1回で登った際にOSやFLとなるのか、ということもよく議論されますね。
本記事ではこのあたりの諸問題に関して、個別の情報を取得することが難しいため基本的にはWeb等で発表されている通りにまとめます。
そしてボルダリングでは近年あまりOSという表記自体を見なくなってきましたので、FLということで一まとめにしました。
オンサイト、フラッシュの最高グレード記録一覧
まずは一覧表から。
リストの中にはダウングレードが提唱されていたり、再登者が易しいとと感じているものも含まれていますので、暫定的なものと捉えてください。
ボルダー
ボルダーの記録はOnBoulderingの「The 8B (V13) Flashers Club」の記事を大いに参考にしました。
ボルダーのFL最高グレードはダニエル・ウッズ(Daniel Woods)によるEntlingeのV14/15ですが、ダニエル自身はV14に感じると述べています。
ダニエルの他、V14をFLしているのは以下の6名です。
アダム・オンドラ(Adam Ondra)
ジミー・ウェッブ(Jimmy Webb)
リアム・ヴァンス(Liam Vance)
ネッド・フィアリー(Ned Feehally)
ヤコブ・シューベルト(Jakob Schubert)
楢﨑智亜(Tomoa Narasaki)
また冒頭でも触れましたが、別課題(現世)との共通部分を過去に触ったことがあるので厳密にはFLとはなりませんが、野村真一郎さんが浮世(V14/15 五段+)をFLしています。
リード
リードのOS最高グレードは5.14dであり、
アレックス・メゴス(Alexander Megos)が2本
アダムが3本達成しています。
FL最高グレードはアダムによる5.15aであり、現時点で達成しているのは彼唯一人!
V14以上をフラッシュしたクライマー
今回はクライマーごとにフラッシュした課題を簡単に紹介します。
アダム・オンドラ
世界で初めてV14をFL、かつその合計3本達成と最も多くの数を誇るのはやはり宇宙最強クライマーであるアダム。
2009年12月にスイス クレシアーノのConfessionsをFLしたのが、世界初のV14FL記録です。
この時アダムは “他のV14と比較すると易しく感じたが自分に合っていただけでV14ではないとは思わない” とコメント。
その後フランス フォンテーヌブローのGecko assis、コロラドのJadeと有名なV14を2本もFLしています。
ダニエル・ウッズ
アダムがConfessionsを易しめと表現したこともあってか、世界初のV14以上のFLはダニエルが2011年11月に登ったEntlingeと書かれていることも多いです。
Entlingeはスイスにある課題で、初登者はフレッド・ニコル(Fred Nicole)。
グレードはV14/15とされているので、現在のところボルダー課題FLの最高グレードですが、ダニエル自身はV14に感じるとのこと。
ジミー・ウェッブ
ジミーは2013年6月にロックランズを代表する課題である、ダニエル初登のSkyをFLしています。
やはりアダム、ダニエル、ジミーの3人は常に先頭を走っていますね。
その後2016年3月にフィンランドでThe GlobalistもFLし、2本目のV14FLとしています。
<ジミーのThe Globalis>
リアム・ヴァンス
リアム・ヴァンスというアメリカのクライマーもジミーに次いでSkyをFLしています。
リアムは、”SkyはV13に感じる”とコメントしていますが、多くのクライマーによってV14だろうとされています。
<リアムのSky>
ネッド・フィアリー
イギリスのネッド・フィアリーが2017年7月にTrust Issuesというボルダーを登り、V14をFLした5人目のクライマーとなりました。
Trust Issuesは同月にナーレ・フッカタイヴァルが初登したばかりの課題です。
<ネッドのTrust Issues>
ヤコブ・シューベルト
2018年1月にヤコブがスペインのCatalan Witness the FitnessをFL。
クリス・シャーマ初登のルーフ課題でグレードはV15となっていたそうですが、ヤコブはV14だとコメントしそれで定着しているようです。
ヤコブは2020年6月にもスイスのマジックウッドでこちらもクリス・シャーマ初登の超有名課題であるNeverending Storyをフラッシュ。
V14のフラッシュ記録を2本としています。
<ヤコブのツアー記録のインスタ>
楢﨑智亜
昨年話題になりましたが、楢﨑さんが瑞牆のDecidedをFLし7人目のV14をFLしたクライマーに。
Decidedは中嶋徹さん初登の前傾ボルダーで、近年日本のトップクライマー達によっていくつかの再登が成されていました。
そんな中、楢﨑さんが1撃し日本のFL最高グレード記録を更新!
またSDスタートのUnitedを村井隆一さんが初登し、V16というグレードを付けたことも大きな話題となりました。
<楢﨑さんのDecided動画>
5.14d以上をオンサイト、フラッシュしたクライマー課題
続いてはリード。
アレックス・メゴス
世界で初めて5.14dをOSしたのはアレックス・メゴス!
2013年3月にスペインのシウラナのEstado CriticalというルートをOSしています。
このルートはラモン・ジュリアンが初登していて、当初は5.14c/dでしたがその後5.14dで定着しているようです。
当時メゴスは19歳で、この記録をきっかけに全世界的に超一流クライマーとして知られるようになっていきました。
その他メゴスはTito Claudio Traversaという5.14dもOSした記録を持っています。
イタリアのルートで初登はステファノ・ギソルフィであり、クイックドローの使用ミスで死亡したチト・トラバーサの追悼ルートだそうです。
アダム・オンドラ
メゴスに次いで5.14dをOSしたのはやはりアダム!
メゴスがEstado CriticalをOSした4か月後に、スイスでLa cabane au CanadaをOSし世界で2人目となりました。
ちなみにアダムはメゴスに先んじて2011年にRed River GorgeでPure ImaginationとThe Golden Ticketという2つの5.14dをOSしているのですが、自身で両ルートとも5.14cだとし述べてその後ダウングレードが定着しているようです。
その他アダムは以下の2つの5.14dもOSし、計3本の5.14dをOSしています。
・スペインのIl Domani
・Tito Claudio Traversa
そしてアダムが世界で唯一達成しているのが5.15aのFL!
フランスのSuper Crackinetteというルートを2018年2月にFLしました。
初登はメゴス。
5.15aという本当に一握りのクライマー達が一生を賭けて達成するレベルのルートを1度目のトライで登るというのは一体どんな感覚なのか。
その時のインタビューの訳がとても興味深いので是非読んでみてください!
世界初の5.15aをフラッシュしたアダム・オンドラのインタビュー
<アダムのSuper Crackinette>
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