クライミングの挟み込み、右足で踏むか?左足で踏むか?

クライミングの挟み込み、右足で踏むか?左足で踏むか?

科学するクライミングシリーズ。
せっかくなので自分では答えを出し切れなかったテーマを書く。
重箱の隅をつつく話だけれど、今回は「フットワークの”挟み込み”はどちらの足で上から踏んだ方が安定するのか」について。

 
 


用語の定義 挟み込み?ピンチフック?ピンチステップ?

スムーズに話を進めるために、まずは用語の定義から。
「挟み込み」とは、片方の足で普通に踏んで、もう片方の足でトウフックをかける以下の様なフットワークである。

<黄色いピンチを挟んでいる>

ここで左右の足を入れ替えても挟み込みをすることは可能だが、一体どちらが良いのかというのが今回考えたいことである。
そしてこのフットワークは多くのクライミング本では挟み込みと命名されているが、調べると「ピンチフック」とも呼ばれている。
そして僕の周りでは「ピンチステップ」と皆呼んでいるが、web検索したところピンチステップはほとんど引っかからなかった。
よってこの記事では「挟み込み」で統一する。

また特段断りが無い限り、「上」または「踏む」と書いたら上からつまさきで置いていることを指し、「下」または「フック」と書いたら下からトウフックを掛けていることを指す。

更に保持している側の手に対して(上の写真では右手で保持して左手を出したところ)、対角線となる側の足を「順足」(上の写真の場合は左足)、同じ側の足を「逆足」(上の写真の場合は右足)と呼ぶ。
ただこの記事では右手保持からの左手出ししか扱わないので、常に左足が順足で、右足が逆足、である。

 

経験から来る感覚 

僕の場合は、挟み込みを使う際に順足が上が良いのか順足がフックが良いのか混乱することがある。
これまでの経験から感覚としては
・トウフック主体で動いていきたいなら、逆足が上で順足がフック
・つま先主体で動いた後にフックで補助的に止めたいなら、順足が上で逆足がフック
・腰で捻った感じで動きたいなら、順足が上で逆足がフック
・身体を開きたいなら、逆足が上で順足がフック
・近すぎるホールドは、順足を上に置くだけで挟み込まない
・遠くて丁度良い位置で十分にトウフックがかかるなら、順足をフックするだけで挟み込まない
のように考えている。
が、適当に上下をえいっと決めて挟むと、”あ、違った逆だった”となってしまい落ちることもしばしばある。

もちろんどちらの足が上でどちらがフックが良いかは、ホールドの形状、手と足の距離、次のホールド位置、壁の傾斜、等々さまざまなものに影響する。
よって一概にこうとは言えずケースバイケースである。
しかし、このケースバイケースという言葉は思考することを放棄しているようであまり好きではない。
少なくともそのケースとやらを限定して考えれば、きっと何か言えるはずなのである。
以下、理屈と実技で考えてみる。

 
 

保持している手の向き、次のホールドの位置、の2軸

「保持している手の向き」と「次のホールド位置」の2軸で整理してみる。

 

保持している手の向き

保持している手がガストンであれば、順足を上に乗せた方が手の力と足の力の方向が逆になり利いている状態になりそうである。
対してガストンに対して順足をトウフックすることはほぼ無さそうだ。
例えば右手でガストンに右下に引いているなら、順足の左足は外に向かって左下に踏みたい。

同様に、保持している手がサイドプル(内に向かう横引き)であればそれに対して順足がフックでも利くポジションは取れそうである。
ただもちろんサイドプルに対して順足を上に乗せることも通常ありえるだろう。
つまり右手がサイドプルの時は左足はトウフックでも利くことはあるだろうし、普通に踏むこともある。

 

次のホールドの位置

順足を上に乗せる場合、多くの場合身体は上に向かう。
よって次に取るホールドが上にあるならば、順足を上に乗せた方が身体が上がって取りに行きやすそうだ。

一方でトウフックをかけると一般的に身体はすこし沈んだところで安定しがちだ。
上に向かって高い距離を出すというよりは、横方向に安定して向かう時にトウフックは使い易いように思う。
よって次に取るホールドが横方向にあるならば、順足はフックでも良さそうだ。
ただ上から普通に踏んで横方向に距離がでないわけではないので、順足で踏むこともだめではなさそう。

 
 

実技で検証

「保持している手の向き」と「次のホールドの位置」の4つのパターンで実際に挟み込みをやってみた。
全ての写真が右手で保持して、挟み込みをした後に、左手を出したところである。

 

サイドプル×上方向

サイドプル×上方向の場合。
順足が上だとこの写真のように次のホールドが上にあっても取ることができる。

しかし、順足がフックだとサイドプルとフックの決まりは良いのだが、フックにひきずられあまり上に身体を起こせず距離が出ない。

よってサイドプル×上方向の場合は順足が上が良さそうだ。

 

サイドプル×横方向

次はサイドプル×横方向の場合。
順足が上でサイドプルをして横に行こうとすると、手も足も同じような方向に力が加わってイマイチ安定しない。
また横に行きたくてもフックをかけているのが逆足なので不安定であり、写真の黄色ピンチを上手くとることができない。

一方で順足をフックすると、サイドプルと順足のフックが綺麗に決まる。
更に力が入る方の順足でフックをかけているため、横方向への動きに強く写真のように黄色ピンチを捉えるところまで身体が伸びる。

よってサイドプル×横方向の場合は順足がフックが良さそう。

 

ガストン×上方向

ガストン×上方向は一番イメージし易い。
ガストンで外へ引いているのだから上から順足で踏みたいし、更に進行が上方向なので気持ち良く順足で推進できる。

これが順足がフックだとまず身体をキープすることが難しい。
それは当然でガストンの向きに対して順足もフックで同じ方向だからである。

つまりガストン×上方向の場合は順足が上である。

 

ガストン×横方向

最後はガストン×横方向だが、この判断が難しかった。
ガストンに対しては順足で上から踏んだ方が良いが、横に行くためには順足でフックを決めた方が安定する。
実際に順足が上でもフックでも同じようにホールドへは届く。
ただし順足が上の場合は上からクロス、順足がフックの場合は身体が沈むため下からクロスが良さそうだ。

つまりガストン×横方向の場合はおそらくどちらでも可能である。

 
 

まとめ

結構わかりづらい、と言うか僕も途中から混乱した、がまとめると以下の図になる。

正直言ってこれがどの場合でも応用できるのかは自信が無い。
ただ迷った時の判断にはある程度使えるだろう。
今後意識して実際に自分で使ってみようと思う。

それと、もしこのあたりの話を体系化している本や記事を知っている人がいたら教えて欲しい。
ではちょっと今日はマニアックでしたが、また明日!