女性のボルダー、スポート、トラッドの最高RP記録まとめ(2020/7 時点)
※2020年2月に投稿し、2020年7月に追記※
少し間が空きましたが、クライミング基礎データまとめを進めていきます。
今回は岩場でのボルダリング、スポートルート、トラッドルートそれぞれの女性の最高レッドポイント(RP)グレードの記録のまとめ。
女性の最高RP記録まとめ
まずまとめの表を貼ります。
いつも通りの注釈ですが、クライミングのグレードは暫定のものもあるのでこの表が絶対的ではないです。
それと抜け漏れもあるかもしれないので、あくまで僕が調べた限りの記録と捉えてください。
ボルダーは女性による最高RPグレードはV15(五段+)であり、完登者は白石阿島(Ashima Shiraishi)、カッディー・レーマン(Kaddi Lehmann)、石井秀佳(Mishika Ishi)、オリエン・バートン(Oriane Bertone)の4名。
V14も5年ほど前の時点で5名くらいでしたので、現在でもそれほど人数はいないかもしれません。
スポートルートの女性による最高RPグレードは5.15bで、アンジェラ・アイター(Angela Eiter)、ラウラ・ロゴラ(Laura Rogora)の2名!
アンジェラは世界選手権でリードを4度制している上に5.15bを登るとは、歴代の最強女子クライマーと呼んで良いですね。
5.15aを登っているマーゴ・ヘイズ(Margo Hayes)、アナック・ベルホーベン(Anak Verhoeven)、ジュリア・シャノーディ(Julia Chanourdie)の3名も表に載せました。
トラッドは5.14c (8c+)以上のトラッドルートまとめの記事で既に紹介しているので、詳細は割愛しますが5.14cと世界最高レベルをRPしたクライマーが女性でも2名います。
ベス・ロッデン(Beth Rodden)によるMeltdownとヘイゼル・フィンドレイ (Hazel Findlay) によるMagic Lineです。
以下、ボルダーとスポートに関して簡単にルート説明等をします。
女性のV15ボルダー完登課題
まずはボルダーから。
白石阿島 ホライゾン
女性で世界で初めてV15を登ったクライマーは日本人にもお馴染みの白石阿島さん。
宮崎の比叡にあるホライゾン(Horizon) を2016年3月に14歳で第2登し話題に上がりました。
また白石さんはスポートルートでも大きな成果を挙げていて、ホールド欠損後のOpen Your Mind Directを登っておりこちらは5.15aあるかもしれないと言われています。
ホライゾンは2015年5月に小山田大さんによって登られ、当時は小山田さんによってV15~(五段+~)というグレードが与えられていましたが、白石さんによる再登などを経て現在ではV15で定着しているようです。
第3登は一宮大介さん。
<白石さんによるホライゾン>
カッディー・レーマン Kryptos
女性2人目のV15完登者はドイツのカッディー・レーマンであり、2018年の3月にスイスでKryptosを登っています。
Kryptosは2009年にフランツ・ヴィトマーが初登した課題であり、カッディーでもまだ第4登だそうです。
< Kryptosの初登動画>
石井秀佳 白道
女性の3人目のV15はこちらも大きな話題を呼びましたが、2019年5月の石井秀佳さんによる鳳来の白道(Byakudo)。
ワンフィンガーからの大デッドなどで有名なポケット主体のルーフ課題です。
石井さんの完登はおそらく第4~6登にあたると思われます。
更に当時13歳での完登であり、世界最年少のV15の記録も打ち立てました。
<課題内容がよくわかるので、村井隆一さんによる白道を貼ります>
オリエン・バートン Satan I Helvete (low)
2020年5月にフランスのオリエン・バートンがSatan I Helveteのロースタートを初登(!)し、V15を登った4人目のクライマーとなりました。
オリエンは2005年3月生まれの15歳であり、12歳の時にGolden Shadowを登り、V14の最年少完登記録も持っています。
この課題はデイブ・グラハムが2003年にスタンドver.を登りV14を付け(再登者の中にはV13とする人もいる)、そのロースタートをオリエンが初登した形になります。
オリエンは2019のアルコでの世界ユースでユースBのボルダリングとリードの両方で優勝するなどコンペで無類の強さを発揮していましたが、岩でも偉業を成し遂げました。
<Satan I Helvete low>
女性の5.15a以上のスポートルート完登課題
続いてスポート。
アンジェラ・アイター La Planta de Shiva
女性で初めて5.15bを登ったのはアンジェラ・アイターで、スペインのLa Planta de Shivaを2017年10月に完登。
La Planta de Shivaは5.14bをエクステンションした45mのルートであり、2011年にアダム・オンドラが初登しています。
アンジェラは過去に5.14dを3本登っていましたが、5.15aは登った経験がなく1グレード飛びで5.15bのこのルートを完登しました。
ラウラ・ロゴラ Pure Dreaming Plus
2020年5月30日、イタリアの19歳ラウラ・ロゴラがPure Dreaming Plusを登り、女性として5.15a以上を登った5人目のクライマーとなりました。
Underground (5.14d/9a)のボルダーセクションをこなしたあと、Pure Dreaming (5.14d/9a)に繋げるようで、50メートルのルートとのこと。
初登は2018年のアダム・オンドラで、今回のラウラはそれに次ぐ第2登。
ラウラは2019年のアルコの世界ユースでもジュニアでボルダーとリードを制しており、コンペと岩の両方で世代のトップを走っています。
その後ラウラは2020年7月にスペインのロデジャールでAli Hulk Sit Start Extension Total(5.15b) を完登し、アンジェラに次いで女性で5.15bを完登した2人目のクライマーとなりました。
洞窟のボルダーから5.15aに繋ぐラインのようで、スペインのジョナタン・フロール(Jonatan Flor) が初登。
<ラウラのインスタ>
マーゴ・ヘイズ La Rambla、Biographie、Papichulo
5.15aを登っている女性は世界で3人だけであり、その内の1人はよく知っているクライマーも多いと思いますがマーゴ・ヘイズです。
マーゴは現在までになんと3本の5.15aを登っていて、1本目は2017年2月に登り世界で初の女性5.15a完登となったスペインのシウラナのLa Rambla。
2003年にラモン・ジュリアンによって初登された世界で最も有名なルートの1本と言っても過言ではありません。
マーゴの完登後の感極まった写真はおそらく誰もが見たことのある1枚なはずです。
マーゴは2017年9月にフランスのセユーズのBiographie(別名 Realization )も完登。
Biographieは2001年にクリス・シャーマが初登した世界初の5.15aです。
そして2019年3月にスペインのオリアナで自身3本目の5.15aとなるPapichuloも登っています。
アナック・ベルホーベン Sweet neuf、Joe Mama
アナック・ベルホーベンも、2017年9月にフランスでSweet neuf(5.15a)を登っています。
さらに特筆すべきはこのルートはアナックが初登であり、女性によるスポートルート初登の最高グレードの記録でもあるのです。
ルートの概要は15mの5.14dと25mの5.14b/cをリンクしたもの。
その後Sweet neufはセドリック・ラシャにより再登され、5.15aあるとされています。
アナックは2019年11月にもスペインのオリアナでJoe Mama(5.15a)を登っていたようです。
Joe MaMaはスロベニアのクレメン・ベーコン(Klemen Becan) が 2016年に初登。
ジュリア・シャノーディ Super Crackinette
2020年3月にはフランスのジュリアがSupercrackinette(5.15a)を登りました。
Supercrackinetteは「オンサイトorフラッシュ最高グレード記録まとめ」の記事でも紹介したように、アダムがフラッシュの記録を現在持つあのルートです。
ジュリアは先日のトゥールーズのオリンピック予選でも準優勝で、Tokyo2020への出場権を得ていて、インドア・アウトドアともに絶好調。
<ジュリアの Supercrackinetteのトレーラー>
このシリーズ、まとめることで自分の知識の定着にもなって良いです。
しばらくは間を見つけてもう何本かこのようにできるだけ基本データに立ち返った記事を書きます。
次回もお楽しみに。
-
前の記事
買って良かったクライミングアイテム in 2019 2020.02.17
-
次の記事
「Rock summit in KISHIRA 2020」 鹿児島でボルダリングイベント 2020.02.26