5級ってなんだ?~ボルダリング検定で考えたこと~

日本クライミングジム連盟によるボルダリング検定通称「ボル検」が開催2年目に入り、先日の2019年1月12日(土)にPump大阪店で今年の第3回が開かれました。
僕は1年目は課題を作るセッターでしたが、今期は技術委員という立場であり僕一人ではないですが課題全体の責任も負っています。
その中で当然、課題の難しさを表す「グレード」はボル検のまさに商品でもある重要テーマです。
しかしクライマーならご存知の通り、グレードをびしっと的確に定義できた人はこれまでのクライミング史でおそらく誰一人としていません。
ボル検のホームページや要項のどこを読んでもグレードの定義など書かれていません。
というよりグレードというものが明確に定義できないことこそがクライミングをより面白いものにしているとさえ言えます。
誰しもが5級とはこうだと明確には述べられないけれど、クライマーとしての過去の数多の経験から感覚として身体に5級というものが染み着いている。
そして経験豊富なクライマーやセッターが何人か集まると暗黙知として5級というものがある程度共有できる。
そんな奇妙で捉えどころがないけれどクライマーが脈々と受け継いできたものがグレードなのです。

とそれっぽく書いたものの、それでも何かちょっとでも明確化して言語化できないかと考えてしまうのも僕の性格です。
グレードを明確に定義することは無理だとしても、ちょっとでもその一端を明らかにして言葉に落とすことがMickipediaの使命であるとも感じるのです。

というわけで今回はまずはボルダリング検定のエントリーグレードである「5級」について「5級ってなんだ?」ということを考えてみます。
もちろん結論は出ていません。
が、結論が出ていない途中段階で記事を書くのもありなのかなと最近感じております。
むしろそうやって曖昧な部分を残した方がみなさんの意見が入る余地があって面白いかなと。
どうやっても結論付けられるテーマではないですしね。


8級~6級ってなんだ?

5級の前にまず8級~6級をある程度明確にしておきましょう。
ボルダリング検定には8級~6級はないので、完全な僕の主観で書きますね(まぁこれから語る5級もボル検共通認識ではなく主観だけどね)。

8級

僕がよく登るジムではだいたい8級が一番下のグレードです。
つまり8級とは完全なクライミング初心者が登る課題となります。
とすると身体的に障害を持つ人や極端に小さな子供などを除いて基本的には全ての人が登れるものでなくてはならないです。
所謂、全人類系課題ですね。
しかしその課題がただのハシゴではクライミングではありません。
ですので、一見ハシゴと大差ないとしても、登るとそこにクライミング的なエッセンスを感じられるもの、それが8級ということになると思います。
スラブや垂壁なら少しだけ手が持ちづらいとか足がハシゴよりはかからないとか。
100度くらいの被り壁なら手はガバなんだけれど、若干向きがついていて身体を少しクライミングっぽく動かす必要があるとか。
そして125度あたりを超えるとどんなにガバでもなかなか8級にはならないのかもしれません。


7級

では8級より1グレード難しい7級とはなんなのでしょうか。
完全な初心者であっても1撃する人はいるでしょうが、何も考えずに登れば落ちてしまう人が多いでしょう。
しかしほんの少し手順足順を考えたり身体のポジションを気にすれば初日であっても多くの人が登れる課題、それが僕の中の7級のイメージです。
100度くらいまでならハンドホールドはガバなんだけれど容易にマッチができないサイズだったり、逆にマッチをする必要があったり、手順がある程度限定されていたり、足も親切に設定されているけれど身体の向きを少しは入れないと楽に持てなかったり。
125度くらいの傾斜ならば、少しだけ向きがついている程度のガバで構成されていれば7級に収まることも多いでしょうか。
しかし150度を超えるルーフになるとどんなにガバであってもなかなか7級に収めることは難しいという印象です。

 

6級

多くのジムの場合、下から3グレード目という存在である6級。
運動神経が良い人、身体のバランス感覚が求められるスポーツに打ち込んだ経験がある人、めちゃくちゃ筋トレしている人、そういう人はボルダリングを始めた初日に自分の力だけで登れるかもしれません。
でも多くの人にとってはちょっとしたクライミングの動き方やコツをスタッフなどの経験者から教えてもらわないと初日で登ることは厳しく、またどんなにレクチャーを受けても1日では登れない人がいてもおかしくはない、そんなグレードが6級ではないでしょうか。
ホールドはガバだけれど小ぶりになったり、サイドやアンダーなどの向きが入ってきたり、足も両足では無く片足でしっかりと対角線を取らないと難しかったり、距離もちょっとだけ出てきたり、そいういうクライミングという世界の入り口にまさに片足をいれるかどうか、6級とはそういうイメージです。
なのでドガバで構成されていれば6級が150度のルーフに設定されることもあるでしょう。

 
 

5級とは

いよいよ本題。
5級のボルダリングとは何なのでしょうか。
まず結論から言ってしまうと、クライマーでなければ登れない課題の第一歩目、そう僕は定義付けたいと思います。
6級まではちょっとしたクライミングの要素の一端は入っているものの、一般の人でも持ち合わせているバランス感覚やものすごい筋力で解決できても良いと思います。
しかし5級はそこから更に一歩踏み込んでいる課題、つまりクライミングをさせないといけないのです。
ではクライミングとは何か。
それは、ホールディングがあったり、ムーブがあったり、シークエンスがあったり、するということではないでしょうか。
ごくごく易しい持ち感に収まっているものの、カチ、ピンチ、スローパーが入ってくる。
入門的だけれど、ヒールフック、トウフック、フラッギング、スメアリング、マントリング、デッドポイント、そういった”ムーブ”が登場する。
オブザベーションを要する、「次にこっちに動くためにここではこっちの手を出さないといけない」「後のことを考えて先に足を振っておく」など一連の流れを意識する必要がある、そういったクライマーとしての考えを求めてくる。
そういった組み合わせ次第では無限の身体の動きが可能になる、きちんとクライミングになっている課題それが5級だと言えるのだと思います。

こう書いてもまだまだ曖昧ですし、全然言語化レベルは低いのですが今の僕にはこう書くことが精一杯です。
そして「じゃあ4級はなんなんだよ」となると思いますが、そこはまた今度に回しましょう(というか全然考えがまとまっていないだけ。笑)

 

これまでのボル検の5級はどうなのか

上に書いたことは今さっき言語化したことなのでボル検チーム内で出した結論ではないですが、きっとセッターを含めて皆同じような感覚は共有できていると思います。
それを踏まえてこれまでのボル検の5級でセットされた実際の課題をを少し見てみましょう。

例えば1年目の第1回Mabooでの正面の紫色課題が5級です。
筒状スローパーのホールド(TeknikのBig Tall Round Slopers)が並びます。

これはスローパー系課題としてはとてもイージーですが、ラップ持ちを知らないと途端に苦しくなり完登から遠ざかります。
決して強度は無いけれどラップ持ちというクライミング特有のホールディングを要し、また手順もきちんと考えさせる、まさにクライマーでないと登れないけれど基礎的な持ち方が身についていれば登れる課題です。

このオレンジのスラブ課題は先日のPump大阪での5級です。

ホールドは見た目よりも心許なくしっかりとは持てません、またフットホールドとして踏めるところもかなり丸みを帯びていてクライミングシューズの使い方をわかっていなければ途端にすべります。
しかしそれでいて強度は全くなく、クライマーとしての足置きとバランス感覚が身についていれば登れるThe5級のスラブに感じます。

最後に紹介するのは赤と白のsimpl.のハリボテから構成される凹角の課題。

経験豊富なクライマーからすればどのホールドも持てるし足もハリボテに置きやすく登り易い。
動きも凹角のセオリーに従えば良い。
しかしおそらくクライミングをしたことがなければ「なんのこっちゃこれ?どうやって登るの?」となって登り方の発想が全く思い浮かばないでしょう。
クライミングという無限の動きや可能性がある世界の入り口に立っていなければ登れない、そんな課題だと思います。


やはり言語化した後でこれまでの課題を見返してみると、どれも「クライマーでなければ登れない課題の第一歩目 」になっている気がしますね。

ボル検との関わりを置いておいたとしても、クライミングを続ける限りはグレードについては今後も考え続けることになるでしょう。
グレードに振り回されすぎる必要はないけれどクライミングとはもはや切り離せないものだし、なにより個人的にもっと色々な側面から捉えたいテーマです。

ではでは。

 

これまでのボル検関係の記事

去年書いた記事。
ちょっとえらそうですが許してね。笑

 
シンプルにコンペとの違いを書いた記事。

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