85%の10トライより、100%の1トライ

85%の10トライより、100%の1トライ

ここ2ヶ月ほど岩に行く頻度を減らして少し真面目にインドアでボルダリングを中心に取り組んできた。
体重は依然として増えたままだが(これが歳ってやつか?ヨセミテで下半身筋肉付いた?単に食べている?)、調子は概ね戻ってきたように思える。
だが、やはりあと一歩限界を超えられない。
いつも通りの動きから抜け出せない。
以前ブログに書いたように器を大きくすることは本当に難しくて、当たり前の檻にも閉じこもってしまっている。

そんな時、ライノ最強のお客さんであるTKG氏のこのツイートを改めて思い出した。

おそらく僕が限界突破できていない一番の原因は「最大筋力を上げる練習が適切でない」ことにある。
ということで最大筋力を上げることについて、前にどこかで書いてはいるかもしれないが知識の再整理かつ今後のトレーニング指針の明確化ということで簡単に記事を書いてみる。

 
 

最大筋力とは

まず最大筋力とは何か。
色々な定義はあるのかもしれないが、手元の『スポーツトレーニングの基礎理論』に従うと、
1回しか持ち上げることができない重さ
と定義されている。
何回繰り返せるかというRM(最大反復回数、レペティション・マキシマム)を使って表すならもちろん1RMということになる。

これをクライミングに当てはめるなら、自分にできる限界の1手、と捉えて問題ないだろう。
つまり今の仮説としては「僕はこの限界の1手の強度が伸びていない故に強さの天井が対して変わっていない」ということだ。
そしてTKG氏はとにかく今自分にできる最大筋力の出力を積み重ねることが大切だと説いている。

<『スポーツトレーニングの基礎理論』>

 
 

普段の自分と超一流選手のトレーニング

あくまで僕が見ている範囲ではあるが、超一流と言われる選手たちはこの最大筋力の発揮に長けているように思える。
例えばボルダリングジャパンカップやワールドカップでも優勝経験のある杉本怜選手は集中してこの最大筋力を出すことがとてつもなく上手い。
本番の大会ではもちろんのこと、練習でものんびりモードかと思いきや急にスイッチを入れて凄まじい咆哮と共にとんでもない1手を止めてしまう。
そしてそのような極限集中のクライミングを数トライしただけでその日の練習を切り上げることもある。(僕は彼の練習の一部しか観ていないからいつもそうかはわからないが)

他にもOff the Wagon Low (V16)を登り一躍有名になったショーン・ラバトゥも『ROCK CLIMBING 010』でこう語っている。

僕のトレーニングは短い時間で、集中的にやります。
ほとんどは2時間くらいのセッションを週に4回くらい。
(中略)
V16を登るには、V16をトライしなきゃいけない、と思う。

おそらくショーンも2時間の中で自身が目指している強度と同程度の最大筋力を発揮すること、そしてそれを超えることを目的とする動きをしているのだと思う。

 
 

最大筋力を出すため、上げるために

一方で自分はもちろん頭では限界トライを積み重ねることの重要性をわかってはいるが、闇雲に身体を疲れさせるだけのトレーニングに走ってしまう傾向がある。
具体的には、
・身体がまだ回復し切っていない85%くらいの状態でトライをして、”やっぱりダメだったー”、というのを繰り返している
・連登を続けるなどレスト日の間隔が短く、そもそも疲労がたまった状態でのトレーニングが常習化している
などだろう。

そして先ほどの『スポーツトレーニングの基礎理論』に立ち返ると、最大筋力のためのトレーニングは以下のようにすべしと書いてある。

目的負荷反復回数インターバル頻度
最大筋力の向上90~100%1~3回3分以上週1~2日
筋肥大75~85%6~12回1分以内週1~2日
筋持久力の向上30~60%20~50回1~2分週2~3日

なのでいつも僕がやってしまいがちな、少し疲れているけれど登りまくるというのは筋肥大や持久力の向上にはつながるかもしれないが最大筋力を上げてはくれない。
もちろんリードやビッグウォールのために持久力向上は必須なので目的次第ではそのやりかたは正しい。
しかし一発の爆発的なボルダリング力の限界を上げるという目的に対しては間違っている。
85%の力で10トライすることは最大筋力を上げてはくれない。

最大筋力を上げるためには、
・100%の力を出す1手を
・十分なレスト(3分以上)間隔を設けて
・週1~2度フレッシュな状態で

取り組む必要がある。


最新の研究などではもっと別の効果的なやり方はあるのかもしれないが、ここで書いたことは自分の限界を超える一つのトレーニング指針にはなり得るはずだ。

春くらいまでは意識してみようと思う。