綺麗な課題だけをやる弊害はあるのか
連日のセットとコンペ準備で疲れているので簡単に書きます。
ほとんどタイトルで完結していますが、今回はクライミングにおいて綺麗な課題だけをやることの弊害はあるのかということについて。
これも自分の中であまり結論が出ていないテーマです。
綺麗な課題ってなんだ
まず「綺麗な課題」とはなんぞやということなのですが、どちらかというと見た目よりも内容の綺麗さを意味してこの言葉を使っています。
ただ、何を綺麗と思うかは好みもあるので曖昧な表現しかできず、定義をバシッと書くことは難しいのですが、
・ベーシックな動きで構成されている
・きちんと保持をすること、固めること、距離を出すことなど、クライミングの基本が求められる
・故に登っていて爽快感があったり気持ち良さがある
・理不尽な身体の動かし方や、気持ち悪い動きが無い
などでしょうかね。
例えば小川山ならクジラ岩の「穴社長」「エイハブ船長」「穴社員」などはどれも綺麗な課題だと僕は感じます。
そしてこのような課題にはトポで多くの★が付けられていたり、オススメ課題とされることが多いです。
なので以下、とても感覚的な言葉になりますが、綺麗な課題、変な課題、などと書かせていただきます。
ヨセミテでの苦い経験
特にクラック課題の場合は綺麗な課題というのがわかりやすく、クラックがスパっと美しくはしっている課題は名課題とされやすいです。
ヨセミテのような岩資源が膨大にあるエリアだとそれは顕著であり、3つ星課題はこれでもかというくらいめちゃくちゃ綺麗な課題ばかりです。
<中央のFish Crackも右のCrimson Cringeもどちらも超綺麗>
<Butter ballsも美しすぎるフィンガークラック>
ツアーなどでは看板課題を触ることが多いので、基本的にこのような超綺麗なクラックばかりを触ることになります。
そうすることでベーシックなクラック技術の底力が鍛えられますし、このような綺麗なクラックで身に付けた動きは他の課題にも応用できる汎用性の高い技術として自分の中に蓄えられるのでとても良いです。
一方で、ヨセミテと言えどもマルチピッチの中などには、お世辞にも綺麗な課題とは言えないクセモノなピッチもあります。
例えばFreeblastの8ピッチ目はグレードこそ5.10bですしMountain Projectにもthe easiest of the wide features on the Salathe(サラテで一番簡単なワイド)と書かれているのですが、なんか上手く言葉にできないですが気持ち悪くて変なワイドなのです。
ツルツルしてるしかなり無理矢理足を上げていくような動きが難しく、上手く突破できず僕はこのピッチはフォールしてしまいました。
正直言って他の5.11台のピッチよりも悪く感じました。
このようなルートであってもきっと総合力、対応力、突破力があるクライマーならなんなくこなしてしまうのでしょうが、他の同グレードの綺麗なクラックのベーシックなセオリーで切り抜けることは難しいように思えてしまったのです。
それまで他のショートルートなどでは綺麗なスパッとしたクラックばかりやっていてそこそこ登れていたので、この5.10bのピッチのレッドポイントを逃したことは苦い経験となりました。
基本は綺麗な王道課題、だが、、、
僕は基本的にはクライミングでは綺麗な課題や王道課題を積極的にトライしていくべきだと思っています。
王道からそれてマイナー課題や超地味系課題ばかり触るのは、何か本流から逃げているような気がします。
以前にもブログ記事にもしました。
<1.5年前の記事 穴社長は登ったけどインドラ登れてないや>
しかし、かといって綺麗な課題ばかりやっていて、上で挙げたようなトリッキーだったり、気持ち悪かったり、理不尽だったりするような課題が登れるようになるかと言われるとそれも怪しい気がしています。
徹底的に基礎の動きを繰り返し身に付けることで総合力や対応力も付くという考えもあるとは思いますが。
変な課題にどう対応すれば良いのか
じゃあこういった変な課題に対応するにはどうすれば良いのでしょうか。
まず考えられるのは「日頃から変な課題も触る」という至極当たり前のやり方です。
王道課題の記事にも、王道課題8割、地味系課題2割、くらいの割合と書きましたが割合は適当ですがある程度王道的な綺麗な課題以外も触った方がクライミングの幅が広がりますし、たまにやると邪道系・地味系も楽しいです。
それもあって僕は最近インドアでは積極的にプロセッターではなくお客さんが作った課題も登るようにしています。
お客さんの課題はいわゆるインドアで課題を設定する時の作法とかお約束事が破られていたりすることもあって、それが逆に自分にとって新鮮でトレーニングになると感じます。
(もちろんきちんと綺麗な課題を作るお客さんもいる)
もう1つは「根本的なフィジカルを鍛える」ということでしょうか。
これは綺麗な課題を正しいフォームで登っていれば鍛えられるのかもしれませんが、登る以外の基礎的な筋トレや身体の動きを調整するようなトレーニングをしても良いのかもしれないと思うこともあります。
例えば体操をバックグラウンドとしているようなクライマーは、他のクライマーが登れないような風変わりな課題を力強く突破することなどは経験上ある気がしています。
最後に考えられるのは「登りたいその変な課題の個別のコツだけ掴む」ですかね。
そういった綺麗でない課題は初見だと全然対応できないこともありますが、実は強度が高くなくてコツさえ掴んでムーブがわかってしまえば楽に登れるということも多々あります。
ハッキリ言ってクライミングの動きなんて無限に近いので、そもそも全部の課題に対応できるフィジカルや技術を身に付けることは難しいです。
なので綺麗な課題や王道課題をやって汎用性の高いフィジカルやムーブを身に付けることが最優先事項であり、その課題でしかでないような特殊系ムーブにオンサイトで出会ってしまったらもうそれは言葉を選ばなければ「運が悪かった」とある程度諦めるしかないという考え方もできます。
まぁとは言えそれでもなんとかオンサイトするのがカッコ良いし、本当に強いクライマーはそれができるのですけどねぇ。
と、あまり結論は僕の中でも出ていませんがこんな感じです。
色々できるクライマーを目指しつつ、でも常に王道からはそれないようにありたいですね。
ではまた明日!
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