2019年4月~6月に読んで面白かった本

2019年4月~6月に読んで面白かった本

さて四半期に1度の「面白かった本」ブログです。
4月~6月は岩シーズンなこともあって普段より読書量が落ちていたかもしれませんが、特に漫画を中心に面白い本にいくつか出会えました。
早速紹介します!

これまでの読書感想記事

 
 


たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング

著者:西口一希
ジャンル:ビジネス、マーケティング

P&G、ロート製薬、ロクシタン、スマートニュースでマーケティングを担当してきた西口氏がその手法を丁寧緻密に書いた本。
どのような商売をやっている人にとってもものすごく参考になる本だと思います。
その神髄である「顧客起点マーケティング」を簡単にまとめると、

1. 「顧客ピラミッド」と「9セグマップ」で顧客を分類
2. 一人ひとりの顧客に焦点を当てる「N1分析」
3. ビジネスを成長させる「アイデア」を開発、効果検証

という流れです。
特に頷けたのは、一人の名前を持つ具体的な顧客にインタビューするなどして”N=1″を徹底的に理解する「N1分析」。

名前の見えない複数の誰かではなく、実在する一人のお客様に会って、ブランドとの初めての出会いからこれまでの経験に丁寧に耳を傾ければ、購買行動とその行動を左右する深層心理の関係が有機的につながります。

ここ、めちゃくちゃ共感できるのですよね。
例えば僕の場合ブログでも記事でも何か文章を書くときに、ぼやーっと「クライミングに伸び悩んでいる人」とか想定するよりも、実際に誰か知り合いで行き詰っている人を思い浮かべたり、もっと細かいところまでクライマー設定を絞って、何かを書いたりした時の方が上手くかけたりみんなに刺さる気がします。

また後半部分では著者が実際に行ったマーケティング分析のやり方と数値まで公表しているため、この部分だけでも本の代金を軽くペイするお宝データとなっています。
やはり昨今はこういたデータや手法の公開は惜しみなくしてしまって構わない時代なのですね。
巡り巡ってその方が著者の利益に跳ね返ってくるのでしょうし、結局はこういった手法を公開したところで、やる人はやるしやらない人はやらないのです。

セグメンテーションとか言葉の定義も綺麗にカッチリおこなっていてとても僕好みの本でした。

<9セグマップ>

<アイデアとは>

 
 

ザ・コピーライティング――心の琴線にふれる言葉の法則

著者:ジョン・ケープルズ
ジャンル:マーケティング、広告

こちらはメンタリストのDaiGoさんが薦めていた本で、効果的な「広告」「ブログ」「記事」「プレゼンタイトル」などのコピーや見出しについて書かれたもの。
1900年代前半の伝説のコピーライターであるジョン・ケープルズの『Tested Advertising Methods』の改訂版であり、多少古い表現はありますが現代のネット社会でも通用する効果的な手法や至言・金言に溢れています。

かなり分厚い本でありあらゆるTipsや具体例が載っているのですが、その根底にありまず理解したい一番大事なことは、広告とはすなわち
・見込み客の注意を引く
・見込み客の関心を保つ
・見込み客にこちらの望む行動を起こしてもらう
のいずれかを狙うものである、ということですね。
ここを押さえると、本書で挙げられているテクニックの合理性がすっと腹落ちします。

具体的な細かい手法としては、

「効果的な文章の書き出しの6つの型」
・ハッとすること
・ギョッとすること
・ニュースネタ
・予告
・引用
・エピソード

「注目を集めるビジュアル」
・花嫁
・赤ちゃん
・動物
・有名人
・奇抜な格好をした人
・変わった状況の人
・ストーリー性のあるシーン
・現実離れしたシーン
・大惨事のシーン
・報道写真
・タイムリーなもの

などなど本当にものすごい数のやり方が書いてあるので、いろいろなものに応用できる内容となっていますね。
一冊あると何かと便利な本ではないでしょうか。

 
 

ナイルパーチの女子会

著者:柚木 麻子
ジャンル:小説

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文学Youtuberのベルさんが薦めていた小説で、軽妙で皮肉の効いているエネルギー溢れる文体で最後まで飽きずに読めました。
ナイルパーチとは肉食の淡水魚で、池や湖に放してしまうと生態系を完全に破壊するまで食い進む習性を持ちます。
大手商社に勤めるエリートだが友人との距離の取り方が苦手で女友達のいない栄利子と、主婦で人気ブロガーのおっとりした翔子がひょんなことからであって、その関係がいびつになっていくお話。
「友情」の拗れ方とか、人間の偏執性とかも書かれていて、大人になった女性が読むとまた何か特別に感じるものがあるのかも。

僕としては章ごとに視点となるキャラクターが変わるため、その都度読み手の思考回路とか感情移入先とか場面の捉え方も変わっていくのが新鮮でした。
さっきまでは翔子の見方側に自分が立っていたのに、 栄利子視点で理屈を語られると「あぁそうかも!」と思ってしまったり。
世の中のいろんな物事もこの小説のように、ほんのちょっと見方とか思考の順番を変えるだけで善いものにも悪いものにもなるし、ちょっとのボタンの掛け違いで大きな対立になるものだということも浮き彫りにしているようでした。

 
 

天才はあきらめた

著者:山里 亮太
ジャンル:エッセー、自伝

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南海キャンディーズの山ちゃんこと山里亮太さんの自伝的エッセー。
2006年に書かれた『天才になりたい』を大幅に加筆修正したものです。
蒼井優さんとの結婚で話題になったので読んでみましたが、とっても良い本!

まず驚くのが山ちゃんの努力量。

極端に関係ないことでも、芸のために結び付けられるともっと自分を褒めたくなった。
例えば、壁のシミなどを見つめて、そのシミが何かの形に見えるかを考える脳トレーニングがあると聞いてから、僕はトイレに入った時は必ず壁のシミから何かを5個みつけるまでは出ないというルールを課した。

ダウンタウンさんの番組で自分の笑ったところで止めて「今なんで面白いと思ったか」をノートに書いた。

M-1初出場時で鮮烈デビューした「医者ネタ」に関してはものすごくて、

一つのくだりに、単純にボケの候補を50個作って全て試して、一番ウケたやつを残す。
(中略)
ネタの内容が一緒でも、ボケを言ってからツッコむまでの時間を長くしてみるとかそいういう細かいことまでした。
ノートのなかのネタの横には、ツッコむまでの秒数とそれのウケの量を書いていた。
接続詞の一つまで気にして、医者ネタは50回以上書き直した。

芸人さんて努力を見せたりしゃべったりあまりしないけれど、皆これくらいやっているものなのか?素直にすごい。

テレビやネット記事などで散々語っているところもあるので割愛するけれど、しずちゃんとの不仲→仲直りのエピソードも本当に良い話です。

そして極めつけはオードリー若林さんの巻末解説「僕が一番潰したい男のこと」。
これは必読ですね。
出だしだけ書いておきます。

逆に、山里亮太を天才だと思わない人ってこの世にいるのだろうか。

 
 

アオアシ

著者:小林 有吾
ジャンル:漫画、サッカー

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超人気漫画になりつつあるみたいなので読んだことのある人も多いと思いますが、サッカー漫画の『アオアシ』がドストライクで最高にハマっています。
以前、「Don’t think Feel.」のブログを書いたら、友人にアオアシでも取り上げていたテーマだと教えてもらい読んでみることに。

<考えずに感じられるのか、というブログ>

このシーンですね。

いろんなことが、いずれ考えなくてもできるようになる。
そうしたら、ようやくそれが自分のものになる。

アオアシが面白いのは、このようにテーマの一つとして「考える」ことの重要性が挙げられている、それでいて考えるとは何なのかみたいなところまで踏み込んでいる、というところが僕にとってドンピシャだからですね。

考えられない選手は先には行けん!!

言語化できねえからムラがあるんだ。

他にも載せきれないくらい名言連発なんですよね。

フィジカルという言葉はテクニックのない人間の「言い訳」

とかもクライミングで今日から使えるでしょ。

それと、少年漫画のありがちなパターンに収まらないで一つ一つの心理描写とか物語の展開もこちらの考えの少し斜め上を行ってくれるところもとてもグッドです。
主人公にとってめちゃくちゃ重要な転機のシーンの監督のセリフが残酷だけれど現実をみごとに抉り出していてマジで刺さるのですが重大なネタバレになるので伏せておきます、、、。

 
 

度胸星

著者: 山田芳裕
ジャンル:漫画、宇宙

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『度胸星』は2000年~2001年に描かれた、宇宙飛行士と超科学的存在「テセラック」が対峙するストーリー。
まず宇宙飛行士の訓練などの描写が『宇宙兄弟』顔負けに細かな描き込みやヒューマンストーリー溢れて良いです。
宇宙兄弟の小山宙也先生は、度胸星に似てしまうことを恐れてあえて本作を読まなかったらしい。

そして本作品の肝はなんといっても「テセラック」という空間という概念を飛び越える存在。
こいつが何者なのか終盤で徐々に明らかになっていき、かなり理系心くすぐる「高次元の超立方体」という設定まで入ってきてかなり作りこまれたSFだ!
と思ったのですが、、、なんと打ち切り終了!!
残念過ぎます。
続きが読みたい。

(参考)
4次元は図示できる
4次元の立方体の理解


特攻の島

著者:佐藤秀峰
ジャンル:漫画、戦争

『海猿』『ブラックジャックによろしく』などを代表作に持つ佐藤秀峰さんが、太平洋戦争の人間魚雷「回天」をテーマに描いた漫画。
2004年に連載を開始して高校生ながら読んで衝撃を覚えた漫画だったのですが、2017年末に完結したので改めて最初から読みました。

人間魚雷といって、自ら魚雷に乗り敵艦に特攻する隊員たち。
誰かのために生きてそして死ぬのか、自分のために生きて死ぬことはできるのか。

まず歴史の知識が僕は乏しいので単純にいろいろと太平洋戦争のことが勉強になったのですが、この漫画が描き出す「人間の生と死」というテーマが刺さるものがありましたね。
彼らは戦争と言う状況下なので僕とは違う環境なのは百も承知ですが、それでも今僕はクライミングと言うものに人生を懸けているといえる状況なのでどこかしらダブって読んでしまいました。

俺自身の人生を…
俺のものにするためです……!!

真に生きることができた時……
生と死は同義だ―


少し前の本ですが、佐藤さんの自伝的エッセーである『漫画貧乏』も読むと作者のモットーや信念がわかって良いです。

ではこんなところで。