クライミングのルートについて書かれた本・文章で、僕が好きなもの7選

クライミングのルートについて書かれた本・文章で、僕が好きなもの7選

偉大なる大先輩であるガメラこと菊地敏之さんからブックカバーチャレンジ(元々は「好きな本の表紙を1日1冊、7日間投稿する」という企画)が回ってきました。
ただ僕は普段から定期的に「読書感想」ブログを書いているのと、1年くらい前に人生を振り返って影響を受けた本などを既に紹介しています。

<僕が影響を受けた10冊の本>

<僕の好きな漫画家たち>


なのでここでは少し趣向を変え「クライミングのルートについて書かれた本・文章で僕が好きなもの」を7つ選びました。
僕はクライミングの技術本、歴史本、自伝、映像なども好きですが、やはりルートそれ自体について歴史やクライマーの内面まで深く踏み込んで文章が一番好きだし何度も読み返してしまいます。
ネット上の文章も入れても良かったのですが、ブックカバーチャレンジの延長ということで一応紙の本からのみ選びました。

有名&王道ばかりなので既にこのブログで触れているものも多いです。
またロクスノからのチョイスや瑞牆系にだいぶ偏りましたが、自分のクライミング対象やこれまで読んできたものを考えるとそうなるでしょう。
もっと載せたいものがたくさんあったのですが、7つになんとか収めました。
古いものから順に紹介します。

 
 


Hard Classic Collection

『岩と雪』にて1987~1988年に連載された、保科雅則さんが日本のクラシックルートを紹介したコーナーです。
ルートは全部で以下の7つ。
(グレードは掲載当時のものを表記。現在は1グレード上方修正されているものも多い)

・第1回(124号):小川山「スーパーイムジン」5.12b 池田功
・第2回(125号):城ヶ崎「タコ」 5.12- 堀地清次
・第3回(126号):湯河原「スパイダーマン」 5.12a 大岩純一
・第4回(127号):城ヶ崎「プレッシャー」 5.11b 松江良三
・第5回(128号):城ヶ崎「コロッサス」 5.12d 杉野保  
・第6回(129号):小川山「流れ星」 5.12b 堀地清次
・第7回(130号):小川山「ローリングストーン」 5.12c 橋本覚 

こうして並ぶと、どれも文句なしにクライミング史にとって非常に重要な課題であり迫力があります。
文章では初登者のコメントを交え心理描写も書かれていますし、初登の様子などが歴史的背景を踏まえ載っているのでクライミング史の勉強にもなります。
僕が特に好きなのは「流れ星」から「ローリングストーン」に渡る、堀地さんと橋本さんの初登争いのドラマ。
そこにグロバッツの描写も交じり日本と世界のクライミングレベルの差が浮き彫りになったり、平山さんの姿もあり新世代に移行していく雰囲気が出ていたりと読んでいてワクワクしますね。
トラッドを始めた時はここに載っているルートを全部登ろうと意気込んでいたのに、まだ「スーパーイムジン」と「タコ」だけしか登っていないのでもう一度このリストに立ち戻ろるのもありだなぁ。

 
 

The Perfect Free

平山ユージさんの記録はどれも凄まじいのですが、自分がその一端を体感し改めて読み直したところ驚愕すぎたので『Rock & Snow 018』の「The Perfect Free」を選びました。
1997年にヨセミテのエルキャピタンの「サラテ」(5.13c、30ピッチ)にオンサイトトライした平山さんは惜しくも失敗してしまいますが、全ピッチのオールフリーには成功します。
その後98年、00年とワールドカップで年間優勝し、クライマーとして心身ともに最高潮にあったと思われる平山さんが2002年に挑戦したサラテのワンデイレッジトゥレッジノーフォールオールフリーの成功を書いたものがこの「The Perfect Free」です。

用語を説明すると、以下になります。
・ワンデイ:24時間以内に登ること。平山さんは13時間で登った。通常は数日間掛けて登られる
・レッジトゥレッジ:ハンギングビレイを極力なくし、レッジからレッジまでピッチを繋げて登る。当然繋げたピッチのグレードは上がる。平山さんは通常は30ピッチあるサラテを20ピッチで登った
・ノーフォール:一度も落ちないこと。通常はフォールしてもそのピッチをもう一度登りなおせばマルチピッチ全体でオールフリーしたことになる
・オールフリー:全てのピッチをフリーで登ること。もちろん平山さんは全てリードした

レッジトゥレッジにこだわることで、例えばエンデューロコーナーのピッチは、5.11d→5.12d→5.12a/bを休むことなく繋げトータルのグレードは5.13aになります。
ヘッドウォールも5.13c→5.13bを繋げ5.13dとなります。
(いずれも当時の掲載グレード)
この2セクションはおそらく80m近くあるため、ロープも80mロープを使用。
何百メートルも登ってきた上で一度も落ちられないプレッシャーと闘いながらこの登攀を成功させるのは偉業という言葉では片づけられない信じがたい記録。

全て調べ切ったわけではありませんが、平山さんと同等以上のスタイルでサラテを登ったクライマーってこれまでにいるのでしょうか?

僕もフリーライダーの挑戦でエンデューロコーナーのピッチはチャレンジしたことがあるのですが、確かに途中でピッチを区切る不自然さは感じたものの、ここを繋げ更にもう一つピッチを足そうという発想はよほど強い信念を持っていないとできないですね。

同じく18号に載っている平山さんの「クァンタム・メカニック」のオンサイト、「フリーライダー」のオンサイト、そして22号の「エルニーニョ」オンサイトチャレンジなども必読です。

<ロクスノ 018>

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OLD BUT GOLD

もはや紹介するまでもない、クライミングのルートについて書かれた文章の永久保存版ですが触れないわけにはいかない杉野保さんによる「OLD BUT GOLD」。
Hard Classic Collectionが時代のスタンダードとなったルート紹介であったのに対して、OLD BUT GOLDでは逆に埋もれてしまったルートに光を当てると言う趣旨の連載でした。
杉野さんがルートを語るだけでなく、実際に本気でトライしにいくというのが良いですよね。
文才とその熱いトライの甲斐もあって、ここに書かれたルートのいくつかは今では人気ルートになっています。
自分のためにも紹介されたルートをここにまとめておきます。

・第1回(019号):城ヶ崎「スカラップ」5.12d 池田功
・第2回(020号):湯川「白髪鬼」 5.13b/c 保科雅則
・第3回(021号):小川山「サマータイム」 5.13b/c 堀地清次
・第4回(022号):障子岩「踊る蒟蒻」 5.13a 草野俊達
・第5回(023号):城ヶ崎「マリオネット」 5.12a 山野井泰史
・第6回(024号):城ヶ崎「MARS」 5.13d 吉田和正
・第7回(025号):層雲峡「蝦夷生艶気蒲焼」5.10b 小笠原浩 畠山恭二 石垣博美
・第8回(026号):小川山「Ninja」 5.14a シュテファン・グロヴァッツ
・第9回(027号):水俣「モンキーハング」 1級/初段 柏木敏治、他2本
・第10回(028号):三崎海岸「レッドイーグル」 5.13a 橋本覚
・第11回(029号):小川山「大聖堂」 5.12a 中根穂高
・第12回(030号):硯岩「NATTO」 5.12c 平山ユージ
・第13回(031号):二子山「エアウェイ」 5.11+ 寺島由彦
・第14回(032号):大日岩「グレートテール」5.11c 小野巳年男
・第15回(034号):日光「エロイカ」 5.13c 柴田朋広
・第16回(045号):ニードルズ「ロマンティックウォリアー」 5.12b トニー・ヤニロ ランディ・リーヴィット

こうして並ぶと実は自分は「マリオネット」しかトライしていないのか。
もっとガンガン登らなきゃだめだし、自分も杉野さんのように自ら足と手を動かして名ルートを見つけたり、開拓とかしないといけないと思い知らされます。

またDig Itというほぼ同じ趣旨の連載も036、037、039に掲載されているのでそちらもおすすめです。

<OBGの第一回が載っているロクスノ019>

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日本の登山家が愛したルート 50

岳人編集部が、フリー、冬期アルパイン、沢登り、などのルートを対象にクライマーや登山家に「マイフェイバリットルート」を尋ねた企画。
ボルダーも載っています。
これ本当に好きで、ときおり目を通してしまうのですよね。
自分のブログでも何人かにお願いしてリレー形式でやろうかなぁ。

ちなみに、選定条件は以下の3つ。
1. 日本国内であること
2. 誰も知らない山やルートではないこと
3. 自分が初登したルートではないこと

初っ端から杉野さんが「エクセレントパワー」を紹介、平山さんは「任侠道」、室井さんは三峰のボルダー「ひも」。
サバイバル登山家の服部文祥さんも登場し「ポケットマントル」を挙げるなど、面白いです!

また、おそらくこの企画の元になったと思われる「FIFTY FAVORITE CLIMBS」も超オススメ。
英語なのでまだあまりちゃんと読めていないですが。
ジョン・バーカー、ジム・ブリットウェルなどから始まり、トミー・コールドウェルやクリス・シャルマも登場します。
ちなみにシャルマのフェイバリットルートはなんとヨセミテのロストラム!

<日本の登山家が愛したルート50>

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美しき日の訪れ

ボルダーの文章で一番好きなものは『Rock & Snow 054』に掲載された、室井登喜男さんが瑞牆ボルダー開拓の日々を綴った「美しき日の訪れ」でしょうかね。
室井さんの各課題への愛が伝わってきますし、時には瑞牆に籠って一人で没頭して開拓するさまがとても羨ましくもあります。
単に自分が登った課題などを室井さんがこのときどう書いているのかなど見返すのも面白いです。

2011年当時このロクスノを読んだ僕とむっちゃんは瑞牆に行ってみたいと強く感銘を受け、翌2012年の5月に初めて瑞牆へ。
そこで見た風景や、必死で登った「瑞牆レイバック」や「日々の暮らし」の感覚は今でも忘れないです。
そして今ではホームといって良いくらい通い詰めている岩場に。

<ロクスノ 054>


瑞牆 クライミングガイド

以前の本紹介でも触れましたが、読み込んだ回数が半端じゃないのでこれを外すわけにはいかないですね。
瑞牆のルートクライミングのトポなのですが、トポの域を超えています。
写真も美しいのですが、初登者や再登者のコメントやルート解説が読み物として素晴らしい。
日本のトポではこのクオリティに匹敵するものはないと断言できます。

どのルート解説も最高なのですが、あえて一番好きなものを挙げると山岸尚将さんの帝王ですかね
(以前はネットでも読めたのに今は読めなくなっている、、、?)

「いいのが、あるんですよ。」
船山君は麻薬の売人のように声をかけてきた。

この書き出し、インパクトがありすぎる。笑

 
 

「千日の瑠璃」その開拓と登攀の思想

最後は近年のフリークライミング史を語る上で絶対に外せないですし、個人的にも尊敬している倉上慶大さんの瑞牆の「千日の瑠璃」(5.14a R/X、7ピッチ)の開拓の様子を綴った文章。
『Rock & Snow 070』に掲載されています。
十一面岩のモアイフェースという歴史ある岩壁にここまでのルートを見出し初登したこと自体もすごいのですが、そのスタイルの追求と苦悩のさまはクライマーなら読むべきでしょう。
グラウンドアップへのこだわりと妥協、ボルトを打つかどうかの葛藤から、打たないという選択。
そしてその後、ワンプッシュでのフリー化成功にまで繋がっていきます。

また開拓記と題して、日付とともに当時にやったことや感じたことをきちんと書いているのも良いです。
歴史的登攀に対する真摯な態度ですし、いちクライマーとしてもここまで細かく書いてくれる方が嬉しいですね。

<ロクスノ070>

色々読み返したり、クライミングについて書いていたら岩に登りたくなってきました。
来月はひさびさに岩行くぞー!