もしボルダリング初心者に戻ったら何から始めるか

もしボルダリング初心者に戻ったら何から始めるか

今週末はボルダリング検定in名古屋プレイマウンテンに運営として参加してきた。
今回は受験者に対して、課題が求める要素、なぜ落ちてしまったか、どうすれば登れるようになるか、などをお話させていただく機会があった。
特に5級クラスを受験する方などはたぶん僕が話したことの中には初めて意識するようなこともあっただろうし喜んでもらえたとは思うのだが、ふと「彼ら彼女らは明日からどう具体的に日々登っていけば良いのだろうか」と考えてしまった。

巷にはクライミングに関する本やweb記事はたくさん出回っている、が具体的にビギナークライマーが日々どう過ごせばよいのかというアクションにまで落とし込まれているものはあまり見かけない。
ムーブやホールディングを詳細に説明した解説本も数年前よりは随分増えたし、科学的な考察やデータを集めてうんちくを語っているブログもあるが、彼らに必要なものはそんな壁上の理論ではない。
どんなことを、どういう優先順位で、どれくらいやれば良いのかという具体的な行動を示す必要がある。

というわけで今回の記事では、もし僕が完全なボルダリング初心者に戻ったとしたら、どうやってトレーニングして上達し中上級者になるだろうかということを考えてみた。

 
 


まずは本能のままにクライミングを楽しむ

今はネットで検索すれば「ボルダリングの基本!」的な記事はたぶんたくさん出てくる。
そのためか、ほぼ初回に近いお客さんでも「腕を伸ばして登る」とか「手より先に足から上げる」などの謎の知識を持っていることが多い。
はじめてのクライミングにこのようなこざかしい(一部間違った)知識は要らないし、むしろ邪魔になると僕は感じる。
最初の5回くらいは本能のままに、自分の身体が自然に動くままに、楽しんでがむしゃらに登る方が良い。
何も知らなくてもゴールできる課題はたくさんあるはずだから、そこでクライミングの楽しさを十分に味わい、そして登れない悔しさの原体験もしておくのが良いのではないか。

 
 

基本中の基本フォームやポジションを身に付ける

たぶん8級から始まるジムなら6級にチャレンジするくらいまでは本能で登っていても到達するはずである。
ここから5級に差し掛かるところが一番基本となるフォームやポジションが出てくるグレードである。
基本とは何かをここで全て網羅することはできないが、
・ホールドに足をどうのせるか、どこにのせるか
・身体の左右のバランスを取りながら登れるか
・片足スメアリングになったり、1本足になったりしてもダイアゴナルを基本としたカウンターバランスを取れるか
・親指をきちんと使うなど力の込められるホールディングができるか
・肩を無駄に上げず、脇を締めながら登れるか
・引き付けるだけでなく、身体の振りを使ってデッドの初歩ができるか
などなどたくさんある。

特に僕は初級者くらいの頃は
・クライミングシューズの先端できちんとフットホールドに置く。どんなに大きいホールドでもそのホールドのどこに置いているか意識する
・側対のダイアゴナルでひたすら8級や7級を足自由で登る。その後正対でまたひたすら8級や7級を足自由で登る
ということをアップで意識して反復練習していた。
これが今の自分の基本フォームとなっているだろう。

特に感じたのが上記の様な基礎というかお約束事を知らない、もしくは身に付けていないまま中級グレードにチャレンジしている人がとても多いということだ。
ダイアゴナルの登りができていないのに既にコーディネーションをやっていたりする。
スメアリングができないのにランジをしていたりする。
もちろんアグレッシブに色んなクライミングを体験することはダメではないけれど、一番の基礎中の基礎は身に付けておかないとその上に多くのものを積み上げることは難しくなると感じる。

<参考記事>

 
 

「圧倒的に上手い人」と「自分より少し上手い人」がいるジムを選ぶ

とは言え上に書いたような基礎は自分一人で身に付けられるものではない。
ある程度クライミングジムに通ったら本を読んだりしてフォーム、コツ、ムーブ、ホールディングの種類、等を勉強することは効果的というか絶対にやるべきだとは思うが、それを知ったからといって自分で正しく動作に起こせるかは別問題だ。
基本的には
・圧倒的に上手い人の理想の動きをよく見る
・自分より少し上手い人とセッションして真似したり一緒に考える

ことが大切だと思う。
語弊があるが、いつまでも下手くそな人はとにかく他の人の登りを見ていない。
また上級者の登りは見ていて憧れや目標になりモチベーションに繋がる。
そして、自分の動きを客観的に見つめて自分自身でフィードバックできる人でない限り、ひとりぼっちで登り続けることはおかしな自己流に陥る危険もある。
なので、こういった理想になるクライマーがいたり、良き仲間になったりする人がいるジムを選ぶということは重要だ。

 
 

とにかく色んな種類の課題を触る

そしてとにかく好き嫌いせずに様々な傾斜にある色んなタイプの課題を触る。
基本的にはそのジムのテープ課題を自分が登れるギリギリのグレード1つ上まで全て触るという心づもりで良いだろう。
初中級者の中には自分自身で自分の限界を設けてしまっている人が多い。
「あの傾斜は私にはできない」
「私は5級がまだ全て登れていないから4級は早い」
などという声もよく聞かれる。
冒頭で言ったようにもちろん動きの質も大事だが、量もこなしてなんぼである。
時には量は質を凌駕する。
それにテープ課題にはクライミングに必要なベーシックな動きが揃っていることが多いので、自分ができなくてもとにかく幅広く経験することが大切である。

 
 

保持力と持久力を舐めない

できない課題がいくつかあって、何かしら撃ち込む必要があるときは具体的にどのような課題に取り組むべきか。
僕は初中級者こそムーブ重視というよりは単純な保持っぽいホールディング重視の課題を多めにやってよいと思う。
もちろん指や身体を壊さない範囲で。
例えばトウフックが難しい課題、ランジが難しい課題などに撃ち込めば、洗練されたトウフックやランジ技術が身に付くだろう。
しかしそれらの出現頻度は全課題の内どの程度なのかと考えるとそんなに多くないはずである。

対して、カチが悪い課題やピンチが悪い課題を撃ち込むことで身に付けたカチ力やピンチ力はとても汎用性が高い。
それは当然カチやピンチはあらゆる課題のいたる所に出現するからだ。
悪いホールディングに強いということは色んな場面で自分を助けるのだ。

そしてボルダラーが軽視しがちなのが持久力である。
ボルダリング検定を見ていても感じたが、60分間パフォーマンスを維持できているクライマーは4,5級だとほとんどいない。
これはコンペなどでは致命的なことだし、普段の練習でも自分の限界グレードにトライできる時間が短くなるというデメリットを背負っている。
故に初心者こそ持久力を身に付けることが上達に向けて手っ取り早い道だと感じる。
限界グレードができないくらいに身体がよれたら、色々な持久力向上の追い込み方があるが
・限界グレードの2つ下を1分インターバルで15本
・限界グレードの3つ下5本を壁から降りないでクライムダウンしながら繋いで登る
など、とにかく身体を適切に疲れさせる習慣は付けた方が良いだろう。

 
 

週10時間は登りたい

やはりクライミング日数が週1回だけでは大きな成長は望めないだろう。
最低週2日、できれば週3日は登って身体も頭もクライミングモードを維持して上達していきたい。
週末どちらか4時間、平日2日それぞれ3時間、計週に10時間程度は登る時間が確保できると良い。
本当に理想を言えば15時間を目指しても体は壊れることなく向上するというのが僕の経験則だ。

 
 

やって損がないことはやる

基本的にやって損がないことは積極的にやった方が上達は早い
・ストレッチで身体を柔らかくする
・肥満体型を治して体重を下げる
・せっかく買ったからなどの謎の理由で自分に合わないシューズを使い続けない
などなど、明らかに実行した方がクライミング能力が上がることは結構あるので、もちろんやるべき。

 
 

まとめ

まとめると以下の様になるだろうか

・まず基本フォームが身に付くまでは、アップ時にダイアゴナルや正対で簡単な課題を繰り返し登る
・以前登った課題でも、足の置き方、スメアの仕方、脇の締め方など細部にも気を付けながら理想とする動きが体現できるようにイメージして復習する
・登っていないテープ課題や信頼できる人が作った課題で、自分が1撃できるレベルから少し背伸びするくらいまで数本こなす
・宿題に撃ち込む。宿題が複数あるなら、持てるかどうかのホールドが出てくる保持主体の課題を僕は薦める
・よれてきて限界グレードに取り組むことが難しくなってきたら、持久力トレーニングで追い込み適切にヘロヘロに疲れる

これを週2~3日で行い、日によってホールディングの種類をわけたり、ちょっと保持が疲れていたら限界強度の課題は避けて、低負荷の持久トレ主体にしたりなど、適宜うまくやるのが良い。




こうして書いてみると当たり前なことばかり。
というか、今でも日々やっていることとそんなに変わらないことに気付く。
あんま成長していないかも、、、。
まぁクライミングなんてそんなもんだ。
ではまた明日!