クライミング天国!スコーミッシュ2019夏 中盤戦
早すぎるものであっという間にツアーも中盤戦、というか折り返しているのでもはや後半戦。
そんな中、最大の目標であったUniversity Wall(5.12a, 8P)が2度目の挑戦で昨日ワンプッシュでレッドポイントできました。
本当に嬉しい。
ここ3日間の記録を付けておきます。
<スコーミッシュ前半戦ブログ>
Day 6 (8/28)
昨日のUniversity Wall(以下、U Wall)の疲れが半端じゃないのと、以前のヨセミテツアーでしっかりレストをしなかったせいで心身共に困憊してしまったことの反省として2日間のレストをいれることに決めた。
ブレナンパーク(Brennan Park)でシャワーと温水プールに入りストレッチを十分にするのんびりDay。
長期ツアーだと身体のメンテナンスが疎かになりがちだから気を付けないといけない。
その後、シャノンフォールズ(Shannon Falls)というブリティッシュコロンビア州で3番目に高い滝を見に行って癒されたりなどした。
<シャノンフォールズ>
Day 7 (8/29)
実はむっちゃんが下山で足首を軽く捻挫してクラックへのフットジャムが難しそうなので様子見も兼ねて簡単なフェイス的なルートをやることにした。
まだ筋肉痛が残っていたが、身体に負荷を与えない範囲のクライミングはレスト!
というわけでTop100ルートにも選ばれているStar Chek(5.9, 3P)へ。
Cheakamus川から道路まで上がるルートでとにかくロケーションが最高。
<カンテ沿いを上がっていく>
人気ルートらしく、平日なのに僕らを入れて4パーティーもいた。
<1ピッチ目を登る僕>
易しいピッチが続くけれどピン間隔はかなり広め。
最後はバリエーションで左に抜ける5.10cをやって少しメンタルにも刺激が入って、なかなか楽しかった。
ルートのトップアウト付近はタンタラス(Tantalus)山などが良く見えて綺麗だった。
<タンタラス山をバックに>
午前には登り終えたのでその後はカフェでまったりしたり、パン屋にいったり。
それでも時間があったので僕はChiefにFreeway(5.11c, 11P)を見学に行くことに。
FreewayもスコーミッシュNo.1マルチに挙げるクライマーが多い代表的なルートで、僕らのやりたいリストにも入っている。
取り付きから見上げるFreewayは傾斜を感じ、色んな要素が詰まっていそうなルートに見えた。
<Freeway取り付きから>
夕方から明日のマルチに準備で買い物へ行ったり、むっちゃんがパスタを作ってくれたり。
翌朝かなり早く攻める予定なので21時頃にはテントに入った。
<パスタ!>
Day 8 (8/30)
この日はU Wallへ再度挑戦。
むっちゃんは足のこともあってフォローすら厳しそうなので、僕が全ピッチリードしてユマーリングで登ってきてくれることに。
下部の3ピッチでまた落ちる可能性があるのと上部3ピッチは未知だったので、精神的にも余裕を持たせるために暗いうちにアプローチをこなして日の出と共に登り始める作戦。
実は雨予報も出ていたので不安だったが、起床して天気予報を確認すると降ったとしても軽めになりそうでまずは安心。
6:00頃取り付きに着くと先行パーティーがいる、、、と思いきやどうやら夜中登っていて今下山してきたところらしい!
お父さんと小さい女の子に見えたけれどすごいな。
なんだかんだ準備して1P目(5.12a)スタートは6:30くらいになっていたと思う。
このピッチの自分の印象は、”核心のスロットにきちんと入ることができればおそらく登れるだろう”というものだったが、再度やってみると下部から結構悪い。
オンサイトの時は集中しているし保持も全力だから悪さに気づかないことも多いものだ。
しかもなんと3日前よりもなぜか中間部の濡れが激しい!
雨はあれから降っていないのに、水が下りてきているのか?
濡れているためハンドジャムにまごつくが何とか突破して核心前まで。
スロットはやはり威圧的で少し怖かったが、アンダーを取ったら迷わずに一気に身体をねじ込んだ。
前回よりもスムーズにこなせてなんとかレッドポイント。
最初のピッチで落ちなかったことで精神的に相当落ち着けたと思う。
続いてまたまた核心ピッチの2P目(5.12a)。
ちなみにトポを解読すると2P目と3P目(5.11c)を繋げると5.12bとなるようだ。
前回来たときは序盤のフィンガークラックがびしょ濡れだったので今日も不安だったがこちらはむしろ前よりも濡れが収まっていた。
雨の影響は何日かかけて上から下に出ていくのだろう。
フィンガークラックは濡れていないこともあって前よりも保持感が良くルーフ手前まではすんなり。
ルーフももうムーブは解決できているので思い切って突破して、残るは最終のちょっとしたワイド。
ここはそれほど難しくないワイドだとタカをくくっていたのだが、最後落ちたくないという焦りからかこのピッチで一番嫌な箇所に感じた。
自分のワイド登りが少し信じられなくなり、目の前のカチを全力で握って身体を上げて終了点へ。
想定より悪かったがとにかくここも落ちずにレッドポイント!
<2P目完登後>
これでU Wallのグレード的な核心を終えて一安心だが、3P目(5.11c)も全く油断できない。
前回落ちた時にここはキーホールドだけ確認してきちんとムーブは繋げてはいなかったピッチ。
案の定ルーフの抜け口のワンムーブで足が抜けそうになり躊躇するが、信じてここも突破して登り切れた。
この時点で「ワンプッシュでU Wallの全ピッチを登り切る」ということが自分の中で現実的になってきた。
4P目(5.11a)は前回フォローだったので初リードだがここもレッドポイント。
しかし悪いピッチ。
他のピッチと比べると5.11bくらいに感じる。
5P目(5.10d)は前回オンサイトしていることもあってスムーズにこなす。
登り終えて時間は11時15分と1ピッチ1時間以下という想定していた最も良いペースで登ってこれていて、この後の未知のピッチで苦戦しても大丈夫な時間的な余裕を持てた。
6P目(5.11b)はこれまた綺麗なグルーブから、オリジナルは左へ一旦トラバース。
直上し続けるのは5.12cのバリエーションライン。
このピッチはトポに「scary(怖い)」「bold(大胆な、けわしい)」「don’t fall(落ちるな)」などと書かれていて上部の中では最も警戒しているピッチだった。
<6P目を見上げる>
前半は凹角に結構足を張れるのだけど、そろそろふくらはぎが疲れ始めたのと何よりプロテクションが乏しくて怖い。
ナッツと極小カムで進んでいく。
ある程度行くと明確に左にトラバースする箇所がありここが難所だと思っていたのだが、フェイスクライミング的にはなかなか持てるカチで心の中ではガッツポーズ。
難なく切り抜け今にも剥がれそうなフレークをどんどん左上していき流れのままに左のテラスにマントル。
しかしそこから上は明らかに登られていないラインであることに気づき、下のむっちゃんにトポを確認してもらうと実はフレークの途中で再び右にトラバースしてグルーブへ戻るのが正規ラインであった。
トポをしっかり確認していなかったことを後悔しつつ、なんとかフレークまで戻ることに成功。
ただフレークからグルーブへ右に戻る一連の流れがめちゃくちゃ面白いのだけどとにかく怖い。
今日一番足が抜けそうになりながらも、”このピッチをオンサイトするかどうかに全てかかっている!”と自分に言い聞かせてギリギリ切り抜けた。
そのままトップまでいき完登!
とても印象に残ったクライミング。
このピッチも素晴らしい。
と、ここまでは良かったのだがむっちゃんがユマーリングしようとするもトラバースしているため難しいことが判明。
結局試行錯誤した上に、
・僕がロワーダウンしてプロテクション回収
→ATCガイドをガイドモード装着して登り返し
→上でロープをフィックスしてむっちゃんがユマーリング
という流れで処理した。
ここで3時間以上使ってしまったが時間的に余裕があって助かった。
しかし終了点からスタートへロワーダウンできなかったり、もしこれがスラブでなくてかぶった壁で回収や登り返しが難しかったとしたらかなり困っただろう。
色々な想定をしてどんな場合でも対処できるようにしないといけない。
7P目(5.10d)はフェイス的なクライミング。
ちょっとリーチ―だけどU Wallで一番落ち着けたピッチでオンサイト。
<7P目>
いよいよ最終の8P目(5.11c)。
まずスタートのマントルが悪い。
そのあとはボルトラダーで直上するか、回避して左からスラブを上がるかの2択。
僕はここまで来たらフリーでいきたかったので左から行くことにした。
reachと書かれている遠い5.10dのパートがどうやっても1手届かなかったため、リップが絶対ガバだと信じてランジで解決。
そのあとHeart-pounding(ドキドキする)と書かれているフレークトラバースはこれもスポートのフェイス的な動きで、僕にとってはやり易かった。
とはいっても落ちたくない気持ちが強かったのと、日が当たり始めて滑ってきたのでめちゃくちゃカチを握りこんだが。
最後に凹角を上がって、完登!!
2度目の挑戦とは言え、ノーフォールで全ピッチレッドポイントできた。
3日前は相当厳しいと感じていたけれど、自分の力を出し切って達成できたことに満足。
これまでいろいろなクライミングやトレーニングをしてきたことも全てここに繋がってきたのだろう。
涼しい気候にも恵まれた。
何より全ピッチサポートしてくれた妻のむっちゃんに感謝。
<University Wall完登後>
登り終えて17時。
オリジナルはこちらもGrand Wall同様にここからRoman Chimneys(5.11d, 4P)に繋げるらしいけれどそれは、、、またの機会に!
ちなみにアレックス・オノルドはRoman Chimneysまで含めてフリーソロです。
Belly Good Ledgeを右へトラバースしてトレイルに出て、下山。
お祝いでSushi senでビールとお寿司を食べた!
幸せな1日。
あと残り3日、楽しみます。
<寿司とビール>
レストする勇気
今回のツアーで英断だったのは、11日間という短い日程にも関わらず実質的に2日間レストしたということだと思います。
ヨセミテツアーの時は40日近い日程なのに2日連続でレストすることはなく、毎日のように何かしら登り続けたり懸垂下降&ユマーリングでルート偵察へ行ったりして最終的には心身ともに疲れてしまいました。
目標ルートを定めてそれに向けてしっかりレストをする勇気も持つ、という当たり前のことが実践できたことが大きいです。
<ヨセミテツアーブログ>
オンサイト、フラッシュ、の難しさと充実感
U Wallをやって改めて感じたことはオンサイト(人からの情報もなしで1トライ目)やフラッシュ(情報ありだけど自分の1トライ目)でルートを登るということは本当に難しいけれど、充実感がケタ違いだということ。
U Wallの下3ピッチはルート全体を通して強度は高いのだけれど、前回のファーストトライの時と今回とでは壁から受ける印象が全然違いました。
端的に言うと、怖さがなかったです。
一度トライすることで、”あそこでプロテクションが取れる”、”あそこにガバがある”、”ここは難しいけれど一気に行けば落ちない”、などの情報を既に持っているということが自分の登りに与える影響はとってもとっても大きい。
なのでむしろ今回一番自分として充実していたのは6P目の5.11bのオンサイト成功だったかもしれません。
もっとファーストトライを大切にして登らないといけないし、それでこそ自分のクライミングが充実するはずです。
と、言いつつ高難度を登りこんで登りこんでレッドポイントをすることも大好きだしそれもクライミングの重要な楽しみ方ですけどね。
1ピッチ目の大切さ
ボルダーコンペで1つ目の課題を登れるかどうかが大きく勝敗を分けるということはこれまで自分でも言ってきましたし、多くの選手がそう感じると思います。
同様にマルチピッチで1ピッチ目が1回目で登れるかどうかもそのルートをワンプッシュし切れるかどうかに多大な影響を与えます。
1ピッチ目で落ちないことで、
・疲労を軽減できる
・時間的余裕ができる
・精神的や肉体的に波に乗れる
などのメリットがあると今回感じました。
この点は今後もマルチの戦略を立てる上で意識していきたいです。
やはりフューチュラだ!
この1年近くマルチのシューズはフューチュラで良いのかどうか悩み続けました。
僕にとって最強の相棒なのですが、ノーエッジでソールが薄く柔らかいので
・長時間のステミングなどでふくらはぎや足の指への負担が大きい
・フットジャムが痛い
・先端が尖っていないからフィンガークラックへのジャミングなどが不利(?)
などの欠点があると思っていました。
しかし今回のスコーミッシュツアーでやはりどんな足置きにも万能に対応でき、抜群の足裏感覚やフットホールドへの信頼感はこのシューズでなければ得られないと確信しました。
おそらくヨセミテもフューチュラで基本全てのルートに臨みます。
(と言いつつバッグの中にTCプロを一応忍ばせる。笑)
<フューチュラ愛を語ったブログ>
<後半戦ブログ>
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