ヨセミテ(とジョシュアツリー)でクライミングだけを考える日々 2018 Day31~37
1ヶ月以上に渡るヨセミテ(最後にジョシュアツリー3日間)ツアーもついに終わりを迎えました。
本当にかけがえのない良い経験でした。
今はとにかく身体と心を休めて、また次のクライミングに向けて動き出したいですね。
<ヨセミテ日記1,2,3,4,5>
日々の記録&登った課題
Day31 (11/17)
ショートルートの3連登の後だったのと、今後のツアーで何を優先すべきかなどを組み立て直す必要があったのでこの日はレスト。
そして僕の32回目のバースデイ。
肉とケーキが食べたかったので、むっちゃんに肉を焼いてもらって更にヨセミテのスーパーでずっと気になっていたチョコレートファッジを2人で食べた。
ヨセミテで誕生日だなんて幸せすぎる。
<肉約1ポンド 2人でぺろりといけた>
<チョコレートファッジ これだけで約1,000kcal。重量感がやばい>
Day32 (11/18)
2人して心身ともに疲れていて、早朝に起きてマルチという感じでも無かったのでショートルートに。
朝むっちゃんが「Fish Crack」(5.12a)→午後僕が「Tales of Power」(5.12b)という流れに。
むっちゃんは相当スムーズになっているけれどまたしてもほぼ最終局面落ち。
僕は今回は下部は切り抜けられたけれど、核心のシンハンドパートはまだ勝負になっていない。
とにかく手が微妙に入りきらないジャミングでさらに120度くらいある強傾斜。
でもこういう逃げようのないクライミングを求めていたのかもしれない。
もう少しムーブとかカム戦略を練らないとこのまま漫然とトライしていても登れなそうだ。
残り日数をこれにかける。
Day33 (11/19)
この日も前日と全く同じ流れ。
むっちゃんは実はここ数日かなりナーバスになっていたが、昨日ついに感触を掴んだのか「Fish Crack」に対してかなり前向きになっていた。
いつもよりちょっとだけ早起きして、日が出始めた頃の8時過ぎにトライ開始。
核心パート前のゼノリス(黒い大きなボコ)に立ち上がるところまではスムーズに行き、そこで10分ほどレストをする。
前日よりもカムのセットやクリップが落ち着いている。
そして核心入口。
普段はここはプルプルしているのだけど今回はレストができているので”これはいけるのでは!”とビレイをしながら感じる。
最終クリップでカラビナの向きが悪く手間取るが冷静に処理。
そしてこれまで落ち続けた最後のクラック取りを掴む!
ラスト一手のガバ取りでむっちゃんにしては珍しく声を出した。
そのまま完登。
Day6にして登り切った。
ヨセミテの、しかも超クラシック課題でトラッドのグレード更新。
おめでとう!!
一方で僕の「Tales of Power」はシンハンドパートで最高高度は記録したけれど、やはりだめ。
とにかく吐き出されるジャミングの連続、かつフットジャムも決まりづらい。
カムをセットした状態でトップロープ的にやるとなんとかなりそうだが、カムセットしつつではまだできそうにない。
しかも人気ルートのためこれまでの3日間全てで他のクライマーとバッティングしていて十分なトライ時間と回数が確保できずに、ワークもそれほどできない。
ただわかったことはクラックはその全てがホールドになり得るため、ツアー中には自分にあったスタイルで登る方が良さそうだということ。
僕の場合は「順手」かつ「正対」が自分のスタイル。
他の人が逆手ジャミングの方が良いところも「順手正対」で自分の型にはめた方が登り易い。
本当はルートに応じて自分の引き出しをいくつも柔軟に出すべきなのだろうけれど、このツアー中に登るには自分の土俵に引き込むやり方しかない。
明後日からストームと雪のため明日がヨセミテ最終日になりそう。
明日は早朝からやってみるしかない。
Day34 (11/20)
5時前に起きてtales of power。
3連戦。
日が出てくるくらいの7時半頃にトライ開始。
岩のコンディションはかなり良い。
何度やってもイヤなでだしのフレアードチムニーを処理して大レスト。
シンハンドパートも何とかジャムが抜けずに数手進む。
これまでとどまることが困難だった箇所で冷静にカムを決める。
しかし、、、やはり核心でフォール。
本当にあと1,2mm手をねじ込むことができない。
そのため引きつける力も出なくてさらに次のジャムもうまくねじ込めないという連鎖。
結局2テンでトップアウトが精一杯だった。
難しい。
これまで真っ向勝負のジャム課題を避けていた付けが回ってきたのかもしれない。
ただとにかく素晴らしいルート。
来年またここに来て登る。
最後のシメにヨセミテで1,2を争うクラックルートと言われている「Lunatic Fringe」(5.10c)を登った。
フィンガーからワイドハンドまで色んなクラックが出てきて、ルート長も40mと登りごたえ抜群。
何より終了点からの眺めが最高だった。
むっちゃんは最終日も夜遅くまで「Bachar cracker」(V4)を撃ち込んだ。
繋げて核心を越えたけれど最後のガバ取りで落ちてしまった。
でも最後の最後の日にホントに惜しいトライ。
こちらも来年の宿題!
そして翌日からヨセミテは雨&雪予報なのでここから夜通し8時間のドライブでJoshua Tree(ジョシュアツリー)へ転戦することに。
ハイウェイを抜け、ひたすら砂漠の様な荒野を進む。
しかし8時間運転してもまだなおカリフォルニア州というのが驚き。
アメリカを存分に感じながら明け方ジョシュアツリーに着いた。
Day35 (11/21)
ユースケさん、川崎さん、かずえさん、おけいさん、おくさん、が丁度ビショップからジョシュアツリーに来たところだったので合流して一緒に朝ごはん。
<The アメリカの朝食>
Joshua Treeはエリアが広大でボルダー、スポート、トラッドとなんでもできる素晴らしいところ。
砂漠なのでこの時期でも陽が当たるとポカポカ。
<無限の岩>
僕らは何だかんだ4連登目だったので、久々に少し簡単目のボルダリングをみんなと楽しむことに。
まずは看板課題の「Stem Gem」(V4)!
ムーブが唯一無二で面白かった。
昼間の暑さでフリクションも得られなかったせいか難しく、なんだかんだみんなで2,3時間やっていたかも。
なんとか泣きの3トライくらいで完登!
<バランシーかつテクニカル>
次に向かったのはルーフからクラックに抜ける「Pig Pen」(V4)。
これも充実感のあるとても綺麗なラインで登れて満足。
<抜けだけでもV2。そこだけやったら一回落ちた>
他にもV9~V11のラインがあったけれど今の身体では全く歯が立たなかった。
最後はMax Boulderという岩でV0~V3くらいを4本登ってフィニッシュ。
久々のボルダリング、楽しい!
<ワイドにハマる川崎さん>
夜はThe North Faceの撮影チームのお家にお邪魔させていただいて、なんと食事までふるまっていただいた。
久々にお酒を飲んで酔っ払ったので記憶があいまいだけれどひたすらクライミング談義で楽しかったことだけは確か。
みなさんありがとうございました!
Day36 (11/22)
この日はツアー最後の登れる日になりそうだったので簡単なクラックでもやろうかと思っていたけれど、ジョシュアツリーの良い感じの気候と溜まりに溜まった疲れから岩見学だけで終わらせることに。
ということでアプローチは少し遠かったけれどまずはジョシュアツリーと言えばこれ、「Equinox」(5.12c)!
岩頭にそびえる垂壁から少しスラブ気味の岩に0.3~0.4番サイズのフィンガークラック。
次に来たら絶対に触りたいな。
お次は鈴木英貴さんが初登し23年間再登者が現れなかったハードなフィンガークラック「Stingray」(5.13d)。
わかりづらいですがかなり被っています。
こんなの登れるのかというレベルに感じた。
風格があって威圧的。
ただ岩を見学しただけなのに車で昼寝が必要なほど僕らは疲れていたので、早めに帰路へ。
そしてこの日はThanksgivingだったのでお店も閉まっているところが多くて、ウォルマートでチキンとクッキーを買って早めに就寝。
Day37 (11/23)
とうとう最後の日。
車でまた8時間かけてサンフランシスコへ行き夜の飛行機に乗る必要があったので、朝8時にはジョシュアツリーを出るプラン。
しかしむっちゃんが一昨日宿題になってしまった「Stem Gem」を登りたいということで、朝5時過ぎに起床して岩場へ。
着いてみると朝は気温が低くコンディションが良さげ。
夜型のむっちゃんも徐々に高度を上げてきて、時間的にほぼラスト1トライというところで気合の完登!
むっちゃんのツアー終盤の尻上がりっぷりがすごい。
とにもかくにも綺麗に締まったツアーになった!
短い間だったけれどジョシュアツリーものんびりと満喫できた。
これにて40日間に及ぶ長期ツアーも終了。
2人とも色々な学びがあった良いツアーでした。
僕としては
・ユマーリングやロープワークを含めたマルチピッチのタクティクス
・ワイド/フィンガークラック技術
がヨセミテ前より少しだけ成長した気がします。
感じたこと&メモ
長期ツアーにおける休息の必要性
ヨセミテに来たばかりのときは
“しゃー!ルート全部登りてー!帰りたくねー!”
と心から感じていたが、30日を過ぎたあたりから僕ら2人ともフィジカル的にもメンタル的にも疲労が溜まり変化が生じてきた。
連日のCamp4でのテント生活、レストは最大でも1日で週5日岩を登り続けるペース、食事も決まりきったもの、頭も身体も常にクライミングのこと。
そうなってくるとだんだん岩へのモチベーションも高く保つことができなくなり、パフォーマンスを発揮することが難しくなる。
The phoenixを登り終えて僕は何か燃え尽きたのか自分のコンディションを上手く保てなくなり、最終日には体重は3kgくらい増加してしまった。
長門さんなどに言われたが
・2日以上のレストを挟む
・一旦街に降りてクライミングのことから完全に離れる
ということが1ヶ月に及ぶ長期ツアーでは必要そうだ。
その意味ではツアー最後だったけれどジョシュアツリーに行ったことはとっても息抜きになって良かった。
まぁ今回はそういうツアーとの向き合い方がわかっただけでも収穫なのかもしれない。
”オンサイトできる課題” vs “数日撃ち込む課題”
特に時間が限られたツアーだと
・オンサイトできるくらいのグレードで傑作ルートを楽しむか
・数日撃ち込まないと登れないような(もしくは限界ぎりぎり)課題にチャレンジするか
という選択に迫られ迷うときがある。
もちろんどちらもクライミングの素晴らしい楽しみ方。
ただどちらかと言えば僕は限界より下のグレードの傑作四つ星ルートが10本登れるよりも、たとえ登れなくても自分の限界プッシュの1本にチャレンジしたい。
一方でビッグウォールやマルチピッチをやる場合はオンサイトできるグレードをきちっと登り切る能力も必要なので、前者のようなクライミングの練習ももちろん必要。
まぁようはバランス良く楽しむということですね、なんの結論にもなっていないけれど。
というわけで、長きに渡ったヨセミテ日記もこれでおしまいです。
このあと登ったルートのまとめ的なものを書くかもしれませんが。
楽しみに読んでくださったみなさんありがとうございました。
また来年!
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