ヨセミテでクライミングだけを考える日々 2018 Day19~24
驚くべきことにツアーもあと2週間を切ってしまった!
かなり疲労も蓄積してきましたが、後悔のないように最後までしっかり登り切りたい。
<ヨセミテ日記その1,2,3>
日々の記録&登った課題
Day19 (11/5)
「Astroman」の翌日で2人とも身体がバキバキだったので、レスト&観光&岩探しにGlacier Pointへ。
Glacier PointはCapm4から車で1時間くらいのアプローチでヨセミテバレー周辺の山々が一望でき、観光客にも人気のスポット。
レストついでにここにある「Heaven」(5.12d)という強傾斜のクラック課題を探しに行ったけれど、取り付きまではどうやら懸垂下降が必要そうだったので疲れた身体では深追いはせず。
ネット上に転がっている航空写真と照らし合わせてアプローチして、それっぽい懸垂支点となる木だけは発見しておいた。
<Heaven参考>
・Dean Potterのフリーソロ動画
Day20 (11/6)
さっそく先日アプローチだけ見ておいた「The Phoenix」(5.13a)にトライしてみた。
<取り付きまではfixロープで懸垂。取り付きからの写真>
トポにはトップロープ推奨とあるが、懸垂支点となっているアンカーはラインとはずれているのでそもそもトップロープ用に使えないし、多くのクライマーがリードしているのでリードでトライ。(後日終了点のアンカー発見)
1便目は、、、下部の凹角の抜けでプロテクションが上手く取れずに思わずテンション。
正直恐い。
その後突っ込んだら1つカム外れたし。
テンションをしつつ中間部まで行くとどうやら”レイ・ジャーディンがフレンズを開発するきっかけになった”と言われるあのトラバースパートが核心なようだ。
そこは僕にはジャミングのしようが無く、ボルダリーなパワフルアンダーで切り抜けるしかなさそう。
上部の綺麗なシンハンドはなんとかなりそう(今回はクソほどテンションしたが)なので、下部のメンタルと中間部のフィジカル勝負になりそう。
マントルを返して自分でカムで終了点を作ったのだけれど、車まで戻る途中でその終了点を回収するのを忘れもう一度戻るハメに。
更にグリグリもATCも先に車に帰ったむっちゃんに預けていたことも忘れていて、もう一度戻って車まで、、、この道何往復してるんだ。
登った回数より懸垂とユマールの方が多い。笑
まぁ頭も疲れているんですね。
でもこういうものを回収し忘れない工夫は必要。
何事でもそうだけど、”後でやろう”という考えがよくないこと多し。
しかし、この課題が1970年代後半に世界初の5.13aとして登られているのは本当に驚きだ。
Day21 (11/7)
僕は前日のトライもあり指が疲れていたけれどワイドならできそうだったので前回オンサイトを逃した「Twilight Zone」(5.10d)へ。
下部の6番サイズと中間部の5番サイズのところは1度やっていたこともあってかなり力を温存してこなす。
そしてこの間落ちてしまったフィストのパートへ。
すると、フィストを効かせても悪い!
ちょっとやばいかなと思いつつも上部のガバが持てることは知っているので、そこからはワイド登りは捨ててフィストとフットジャムでグイグイ高度を上げることに。
そしてガバを掴んで、そのまま完登!
いやー充実感が半端じゃなかった。
<よく見るとトワイライトゾーンに挟まっている人>
ワイドが大分こなれてきた気がするけれど、まだまだ「こういう時はこうする」「ベーシックな手順」「作法」的なものがわからなくてオブザベが上手くできない。
なんというか現場処理で自分の身体が動くままに任せている。
でも夜にクロヒゲさんから
“俺もワイドはオブザベ通りにはなかなかいかなくて、その場にいってやってみたらできたということが多いよ”
との話を聞いて少し安心というか納得できた。
ワイドはたくさん経験して自分の身体が岩に対して自然と動くような攻略方法でよいのかもしれない。
夕方はむっちゃんの次なる目標の「Fish Crack」(5.12a)。
5.12bからグレードダウンしていますがかなり悪いとの噂。
とってもキレイなフィンガークラックなので僕も次はやってみたい。
Day22 (11/8)
レスト日だったのでシャワーを浴びたりのんびりしていたが、ちょっと登りたくなってLost Boulderへ。
まずは気になっていた「Cedar Crack」(V5)というクラックボルダー。
2つの岩の間を登るという課題で一見キワモノ感があるけど、シンハンド~ワイドまで全てのベーシックな技術を要する良い課題!
抜けを確認した後繋げ2トライ目で登れた。
<奥の方>
<抜け口>
その後150度超のルーフクラックである「Deliverance」(V8)を軽く触るも、今の実力では相当に難しいことを実感。
これはジャミング力とルーフ力を鍛えるというかそれ仕様の身体にしないと登れそうにない。
最後に「To be someone」(V4)というフェイスの真っ向カチ課題を苦戦しながらも登ってこの日は終わり。
自分のフェイスボルダー力の低下を認識し、同じツアーの中でトラッドのマルチやショートルートとフェイスのボルダーを両立することの難しさを痛感させられた。
Day23 (11/9)
今日も午前から「The Phoenix」。
前回の怖い下部は切り抜けられたが、やはり核心のトラバースに上手く入れずそこでテンション。
フィンガージャムも再度試したが正直自分には難しく、ここは自分に合ったムーブで切り抜けるしかないことを再確認。
帰ってから「Dosage Ⅴ」のBeth Roddenのムーブ見たら核心で真っ向勝負のフィンガージャムをしていて震えた。
そして上部も繋げてみると結構長くて落ちどころがそれなりにあるんだよなぁ。
まぁ5.13aなんだから難しくて当たり前。
それ以上に撃ち込みたいと思えるルートに出会えたことに感謝。
あと終了点はよく探したらちゃんとアンカーがあった。
危うく自分の適当なカムをゴールとしてしまうところだった。笑
その後は有名ワイドの「Generator Crack」(5.10c)を見学した。
<ジェネレータークラック>
Day24 (11/10)
身体が疲れているのはわかっていたがどうしても登りたいので連日の「The Phoenix」。
いつものように朝5時くらいから起きて、質量の軽いもの食べて、トイレに行って、テントでストレッチして、8時半に出発して、駐車場で準備して、懸垂下降して、10時半あたりにトライ開始。
3日目でトータル3便目。
昨日よりも暑かったが、最終局面以外もう陽は当たらない。
怖い下部のパートを少し昨日よりぎこちなくこなし、核心前。
軽くレストした後にまずはトラバースパートにカムを決めるが、なぜかカムの選択を間違える。
しかしなんとかカムはハマり核心のムーブ。
僕は右手でアンダーを指した後左足を高く上げるのだが、右手の効きが甘く足が上がらない。
現場処理で下のクラックにねじ込んで、そのまま核心。
ボルダーパワーでギリギリ耐えてのり切り、その後のレイバック地帯は1つカムを飛ばして小棚まで。(というかさっき間違えて使っているので決めるカムがない)
腕はパンプし切っていたが小棚に乗り込んだ後少し進んで長いレスト。
冷静になりここまで落ちずに来れたことに、喜びと希望と欲と怖さが入り混じった精神状態。
登りたい気持ちとつらくて落ちてしまおうかという気持ちがせめぎ合う。
ここからの「長いシンハンドパート」→「カンテ抱え込みパート」はフレッシュでムーブもわかっていればきっと5.11台前半程度なはず。
しかし本当に腕も身体もヨレきっていて、左のカンテに出るところで落ちそうになり1度戻ってムーブを組み立て直す。
最後のカンテ抱え込みパートは4mはあると思うが、もうカムを決める力が残っていないので突っ込むことを決意。
ここはボルダーグレードにして4級あるかないかなのだけれど全ての手で落ちそうになりながら、ほぼ最後のマントル。
焦る気持ちを抑えて冷静に4,5回チョークアップし、気力のみで岩頭に這い上がって涸れ切った喉で叫び声を上げた。
もう終了点までは8級くらいのボルダーパートなので落ちようがないが岩頭で3,4分はレストしただろうか。
慎重にもう1段這い上がって終了点にクリップ。
感情が爆発した。
これまでの自分のクライミング人生で一番良い登りができたかもしれない。
The Phoenixが登れた。
まさにギリギリのクライミング制して、旬を掴めた。
感謝と喜びと安堵。
<こんなこと書いたので久々の成果が嬉しい>
<長期的&短期的な旬を掴めた!>
その後はむっちゃんが再び「Fish Crack」。
僕もリードトライするつもりでいたが、日暮れまで時間が無かったこととThe Phoenixで心身ともに衰弱しきっていたため安易なトライは危険だと考えてトップロープでやらせてもらった。
トップロープって、、、楽しい!笑
、、、次きちんとリードします。
そして夜は、お馴染みのむっちゃんの「Bachar Cracker」(V4)のナイトトライ。
今日はかなり惜しかった!次決めて欲しい!
<むつき on バーカークラッカー>
夜はむっちゃんが完登祝いで肉を焼いてくれた!
信じられないくらい美味かった。
感じたこと&メモ
長期ツアーでのピーキングの話
トラッドクライミングがメインであまり便数を出せない環境のツアーが2週間を超えてくると、よっぽど意識しない限り筋力の低下や疲労の蓄積や神経系の衰えから「瞬発力」「保持力」「持久力」はどうしても落ちる。
その補い方は色々とあるのだろうけれど僕は「岩場への身体の慣れ」「特定の課題の撃ち込みによるムーブ洗練」「体重の減少」で勝っていくというやり方しか今のところわからない。
今回も「The Phoenix」に標準を合わせてからはそれにフォーカスして、質量の軽いお菓子みたいな食事を中心にして体重も1.5kgくらい落とした。
しかしこのやり方だと体力もより一層落ちるので1日に1便出すだけで疲れ切ってしまうし、完登できない日が続くと他の課題も触れないこともあって日に日に気が滅入っていく。
今回も実際にまだツアーは続いてたぶんショートルートにあと3,4日は割けるので、もう1本高グレード課題に費やすこともできるかもしれないが、多分もう一度ピーキングするのは心身が持たないだろう。
長期ツアーでもフィジカルを維持し続けて高グレードを落とせる期間を持続的に長く保つもっと良いやり方が何かあるのかもしれないけれど、今のところ僕にはあまりわからない。
体重なんか気にしないで毎日バクバク食べて登れるだけの地力を身につければ良いのですがね。
ということでここからはマルチピッチを中心に添えつつ、ショートルートは少しグレードを下げた名作課題をトライしよかと思う。
「Heaven」(5.12d)や「Cosmic Debris」(5.13b)はまた次回以降のお楽しみにしておこうかな。
(と、言いつつレストしたら気が変わってトライし出すかもしれないが。笑)
1日における僕とむっちゃんの活動ピーク時間のずれ
僕は学生時代は夜型人間だったのだけれど、仕事を始めてから完全に朝型人間になった。
一方でむっちゃんは典型的な夜型人間。
この2人の活動ピーク時間がずれていることが案外役立ったりすることが多い。
岩場でも僕は狙っている課題を朝にまずトライしたいしナイトは避けたい、逆にむっちゃんは朝に滅法弱く日暮れからナイトに強い。
車の運転も僕が朝でむっちゃんが夜と自然に分担できている。
ただマルチピッチとかで夜明け前から夜まで行動する必要があるときとかはお互いに頑張って苦手な時間帯で力を出さないといけないので、つらい時ももちろんあるけど。
印象に残った言葉
クロヒゲさんこと増本さんは奥さんのさやかさんとアメリカ大陸をクライミングツアーで縦断している真っ最中なのだけれど、ヨセミテに関してこんなことを言っていた。
色々な岩場で登ったけれど、ヨセミテは別格。
やっぱりここだ、と感じる。
ヨセミテには他にはない”厳しさ”がある。
その”厳しさ”があるから世界中から多くのクライマーが集まっているのだと思う。
僕は世界の岩場なんて全然回っていないけれど、今まさにヨセミテで登っている身としてわかる気がする。
とても印象深い言葉だ。
明日は再び「Astroman」にチャレンジする予定です。
<ヨセミテ日記その5,6>
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