リードとボルダーのグレード体系を繋げないか
- 2018.12.13
- データ&ルール ボルダリングルール リードクライミングルール
リードクライミングを始めたばかりの頃、5.11aとか5.12aなどと言われてもイマイチそれがどの程度難しいのかピンとこなかった。
特にボルダリングから入った自分にとってはボルダーのグレード感覚とどう繋がるのかという点がずっとモヤモヤしていた。
今でこそグレードごとにいくつかのルートを登った経験が自分の中に蓄積されているので、多少は自分なりのモノサシや指標が出来上がってはいるがそれでも他人にその難易度を説明するとなるとなかなか難しい。
そこでこの記事では、
リードのグレードはボルダーグレードにどのように対応するのか
を考えてみることにする。
リードのグレードを決める要素
以前ボルダーグレードに関して以下の様な記事を書いたが、リードであっても基本的に僕の考えは変わらない。
「全クライマーがこの課題にチャレンジしたら何%のクライマーが完登できるか(もっと理想的には、合わせてアテンプト数がどのくらいになりそうか)」
という思考実験の元にグレードは決まるべきだと考える。
そしてその難しさを決める要素に関しても上記記事の後編に書いたが、ボルダーの場合
・リスク(Risk)
-身体的なリスク
-アテンプトがかかるリスク
・強度(Intensity
-最大出力としての強度
-持久力としての強度
・複雑性(Complexity)
-ムーブの読みの複雑性
-身体の動かし方としての複雑性
などで決まるという所謂RICという考え方を紹介した。
リードの場合はここに
・持久力の要素がより強く評価
・核心の長さ/位置
・クリップの難しさ
などの要素が入ってくるとは思うが、これらを総合的に含めてリードグレードを考えると煩雑になり難しすぎる。
よってまず今回は、
短しい(短くて、強度が高い)系のリード課題をピックアップしそのムーブ強度がボルダーグレードでどの程度になるのか
という点に絞って考察したい。
比較方法と注記
今回とったリードグレードとボルダーグレードの比較方法、及び注記を書くと
・トポなどで「リードグレード」と「ボルダーグレード」が発表されている課題(短しい系やハイボールとして登られているものが多い)をピックアップしてグレードを比較
・ルート全体としては長くてもほとんど核心のボルダー強度で決まるような課題も比較対象に加えた
・トポだけでなくSNS等で(僕も含む)クライマーが個人的にグレードを書いているだけの課題もあるので“ここに書かれている対応は決定的なものではなくあくまで体感”
・リードではなくトップロープで登った際のグレードの課題もある
という感じ。
僕も内容を全然知らない課題もあるので、中にはボルダーグレードと比較することがふさわしくないリード課題もあるかもしれない。
サンプルを多くして比較したかったのとあくまで実験的なものなのでご容赦願いたい。
リード課題の体感ボルダーグレード一覧
トポやSNSからリードグレードと体感ボルダーグレード(核心強度のみの場合を含む)が併記されていたり、個人的意見が述べられていた課題を並べてみた。
結構眺めるだけで面白い。
さっそくどうぞ!
これだけでも何となくの対応は見えるが、上の一覧を整理したものが下の表。
サンプル数がまだまだ少ないので例えば3級のところなどは少し変になっているが、全体としての傾向は出ている気がする。
リードとボルダーのグレードの対応仮説
上の2番目の表を一応解説しておくと、短しいボルダリーなリード課題のムーブ強度に関して以下の仮説が立つ
・5級は5.10の前半程度
・3級はサンプルが少ないため表では5.10c程度になっているが、4級と2級の間と考えると、5.11の前半程度
・1級は5.11d~5.12a付近か
・初段は5.12は必ずあり、5.12の中盤と考えて良い
・二段は5.13の中盤
・三段は5.13の後半から5.14a
・四段は5.14は必ずあり、5.15にかかるものもある
・五段は5.15の世界
もちろんそれぞれの課題で傾向が全然違ったり、中には無理な比較もあるとは思うがおおよその傾向が見て取れて面白い。
★2020年6月追記★
アダム・オンドラが初登したチェコの「Brutal Rider」というV16(六段)のボルダーは、25手の9b(5.15b)ともグレーディングできるそうだ。
これも参考になるだろう。
★追記終わり★
また以前Twitterで開拓王こと北山真さんが「1級は5.12a」と仰っていたがまさにその通りであった!さすがである。
リードのグレード体系に関する次なるテーマ
これでボルダリーなリード課題のムーブ強度に関してボルダーグレードとはおおよそ対応が取れたわけだが、持久的なリード課題のグレードをどう評価するかに関しては何もわかっていない。
というよりも世の中のリード課題は持久的な要素が大きく絡んでくるものの方が多い。
例えば先日ヤコブ・シューベルトが第2登したEl bon combat(5.15b/c)は ルートの中のどこにも四段や五段のムーブは出てこないがV11(三段+)が何か所か登場するため、5.15中盤という超高難易度になっている。
(ちなみにヤコブは難しめの5.15aを提唱)
また一般的に「3級をずっと繋ぐと5.13a」などと言われているが、3級はそのムーブ強度だけなら今回のサンプルからは5.11中盤であるので、あたりまえであるが一瞬のムーブ強度がなくても持久的なムーブの積み重ねでグレードは跳ね上がる。
よって次のテーマは
・リードグレードに持久的要素をどのように反映させるか
というものになるだろうか。
以前ボルダーグレードで考えた「グレードの足し算」が参考になるかもしれない。
ではこんなところで終わります。
-
前の記事
『Rock & Snow 082』の宣伝&見どころ 2018.12.06
-
次の記事
おすすめクライミングアイテム in 2018 2018.12.18