V16(8c+,六段)以上のボルダー課題まとめ(2020/7 時点)

V16(8c+,六段)以上のボルダー課題まとめ(2020/7 時点)

※2020年1月7日に書き、複数回追記。最終追記は7月19日

2020年はBack to the Basicが内なるテーマです。
ということでこのミキペディアでも基礎的なデータやファクトを今一度しっかり把握し直す記事をいくつか書きたいと思います。

第1弾は「V16以上のボルダー課題まとめ」
ほぼ、以下のサイトや書籍
Hard Climbs
99Boulders
・『Rock & Snow 067』

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・『ROCK CLIMBING 013』
をまとめ直した形に過ぎませんが、自分の頭を整理するためにも書いてみました。

ちなみに以前書いた5.15c以上のスポートルートまとめもアップデートしました。

<5.15c以上のスポートルートまとめ>

 
 


V16とは?

ボルダリングのグレードは課題の難しさを表し、アメリカを中心にVグレードが使われています。
Vに付く数字が大きいほど高難度であり、現在の世界最高はV17。
V16も世界でもトップ中のトップのクライマーしか登ることのできないレベルです。
日本では段級グレード、ヨーロッパではフレンチグレードという違った表記を使うのですが、V16はそれぞれで六段と8c+に相当します。
各グレード体系のつながりは以下の記事など参考にしてください。

<グレード換算>

 
 

V16以上のボルダー一覧

では早速V16のボルダー課題一覧を載せます。

断っておくと、ここに載せるか迷った課題はいくつもあります。
例えば、以下などです。

Tonino 78:2004年にマウロカリバニが初登。だが立ち入り禁止エリアであるのと、V15という声もある
Gioia:2008年にクリスチャンコアが初登しV15を提唱。第2登のアダムオンドラはV16、第3登のナーレフッカタイバルはV15に感じるとのこと
Story of two world, low start:2012年に小山田大が初登し、小山田大はV15~としている
ハイドランジア:欠損後は2018年に野村真一郎が初登しV15/16を提唱第2登の和久旭はV16を提唱

グレードとはそもそも曖昧なもの。
基本的には初登者が提唱しそれを再登者と共に協議して決めますが、V16ともなると再登者がいないこともざらでありグレードが確定していなかったり変わることも多いです。
なので「これがV16だ!」と絶対的な線を引くことは難しいです。
ですので上記の表は冒頭の2サイトなどを参考にした、あくまで暫定的なものと見なしてください。
(とは言え、明らかにV16と提唱されているのに僕が見逃している課題があったら教えてください!)

この表をベースに考えるならば、2020年7月現在
V16以上は全部で18本
内、
・V16/17がNo Kpote Onlyの1本
・V17がBurden of Dreamsの1本
となっています。

V16以上の完登者は上記の表では16名ですが、小山田大も「那由多」V16を初登しているので計17名ということになりますね。
那由多はチッピングを受けオリジナルは消滅してしまったので上の表には載せておりません。

最も多くのV16以上を登っているクライマーは
・ダニエル ウッズ(Daniel Woods)の6本
やはり、ダニエルが人類最強のボルダラーであることに異論はないですね!
続いて、ジミー ウェッブ(Jimmy Webb)が4本、裸足のクライマーで有名なシャルル アルベルト(Charles Albert)そして史上最強クライマーアダム オンドラ(Adam Ondra)も全て自分の初登課題ではあるものの3本登っています。


V16課題を個別に簡易解説

V16課題の中でも特徴的なものだったり、歴史的に意味があるものを中心に個別に簡易解説します。

 

Hypnotized Minds

世界で最初のV16は何か。
先ほども述べたように、Tonino 78(2004年)やGioia(2008年)と見なすこともできますが、この表をベースにするならばロッキーマウンテンにあるダニエルが初登した「Hypnotized Minds」ということになります。
直訳すると、催眠術をかけられた心。
2010年の初登時はV15を提唱していましたが、その後ダニエル自身でV16にアップグレードしました。
再登者はルスタン ゲルマノフ(Rustam Gelmanov)とデイブ グラハム(Dave Graham)

Hypnotized Minds の初登動画>

Terranova

Hypnotized Mindsがアップグレードされるまでは、最初のV16であったチェコのTerranova。
2011年にアダムが初登し、未だ再登者なし。
意味は ラテン語で、新しい大地。
トラバース課題で、
7C+(V10)→8B(V13)→7B(V8)→8A+(V12)
とのこと。

<Terranovaの動画>


The Process

僕がボルダーと言えば真っ先に思い浮かべる象徴的な岩は、ビショップにあり Lucid DreamingやEvilutionのあるGrandpaです。
そのGrandpaの最も攻撃的なラインを登るのがThe Process。
ダニエル初登で未だ再登者なし。

<The Process>

Drop a Line

ピルミン バートル(Pirmin Bertle)がV16を提唱していますが、再登者なし。
参考:ドイツのピルミン・バートル、V16(?)課題を初登

 

Creature from the Black Lagoon

2016年にロッキーマウンテンでまたまたダニエルによって初登された、Creature from the Black Lagoon。
一宮大介も登っています
6名の完登がある世界で最も登られているV16。

 

La Révolutionnaire Extension

フランスフォーンテーヌブローを中心に活躍する裸足のクライマー、シャルルのV16。
亀山凌平が第2登

 

Box Therapy

ロッキーマウンテンでまたまたまたダニエルによって登られたV16です!
強すぎるぞこの男。
Spread Eagle(V11) のSDスタート。
ツワモノたちがチャレンジし、ついに2020年7月にドリュー ルアナ(Drew Ruana)が第2登
彼にとって2本目のV16。
そばにBox Lake という湖があるみたいですね。

<Box Therapy>

 

Off the Wagon Low

近年で最も話題になった課題の1つでしょう。
スイスにあり2012年にナーレが初登したOff the Wagon (V14)のLowスタート。
これを2018年にショーン ラバトウ(Shawn Raboutou)が初登しました。
ショーンは98年生まれの21歳。
その後多くのクライマーにトライされているはずですが、彼らを跳ね返し続けました。
そしてついに2020年2月にジミーが第2登3月にはダニエルが第3登
ショーンは次世代のニュータイプクライマー筆頭でしょう。
『ROCK CLIMBING 010』にインタビューが載っていますが、
“V16を登るには、V16にトライしなきゃいけない”
という自明ですが絶対的真理を述べています。

< Off the Wagon Low >

Hypothèse assis

こちらもブローの課題でシャルルによって初登。
再登者なし。

 

Sleep Walker

こちらも昨年1年間に話題に上がりホットであったレッドロックスのSleep Walker。
もともとはナーレのプロジェクトであったらしいですが、ジミーが初登。
ダニエルが第2登でナーレも第3登。
2020年1月にルアナが第4登

<Sleep Walker>

Poison the Well

当時21歳のジュリアーノ カメロニ(Giuliano Cameroni)が昨年スイスで初登したPoison the Well。
ジュリアーノにとって初のV16でしたが、既にこの時点で7本のV15を彼は登っていました。
ショーンと並んで現代ボルダリングを新たなステージへ引き上げている注目のクライマーです。
参考:Poison the Well is New V16 in Switzerland

 

REM

世界で最も有名なボルダーの1つにスイスクレシアーノのDreamtime(V15)があります。
2000年にフレッド ニコルによって初登され、世界初のV15とされました。
そのDreamtimeの直登プロジェクトがジュリアーノによって昨年初登!
その名もREM。
見えている世界が違いますね。

2020年3月にポール ロビンソン(Paul Robinson)により第2登が成されましたが、ポールはなんとV14を提唱
ジュリアーノとは使用したフットホールドが違うようですが、それはグレードとは直接的には関係なく、彼がこれまでのぼったV15等と比べた上でのグレーディングとのこと。
ただまだ2人しか登っておらず判断が難しいので、REMは暫定的にV16リストに載せておきます。

<Poison the Well とREM>

<ポールのREM>

Ephyra

ジミーも黙っちゃいないと、スイスのキロニコでEphyraを初登!
From Dirt Grows the Flowers V15 の左上ラインだそうです。
Ephyraはクラゲの幼生とのこと。

 

United

昨年最も日本で話題になったボルダー課題と言えば、瑞牆のDecided(V15)でしょう。
中嶋徹によって初登された課題であり、猛者達が果敢にトライし楢﨑智亜によるフラッシュなど多くのストーリーを生みました。
そのDecidedのSDスタートがUnited。
こちらも近年日本のトップクライマー達がチャレンジしていましたが、昨年11月に世界レベルで目覚ましい活躍を続ける村井隆一が初登!
この岩に一つの終止符を打ちました。

<United>

Brutal Rider

2020年5月にアダムによって初登された、チェコのブルノにある岩場の課題。
マーティン・ストラニク初登のGhost Rider (8C/V15)のロースタートで、Brutus (8A+/V12)という課題を繋げた形になります。
25手の長いボルダーでありアダムは、9b(5.15b)のスポートルートともグレードできると書いています。
アダムの感覚だと、(一般化できるかはさておき)V16を5.15bと感じているというのも面白いです。

<アダムのインスタ>

 

Ledoborec

Brutal Riderと同じくチェコのブルノでアダムはもう一本のV16であるLedoborecを同じ時期に初登しています。
28手のボルダーでルート換算で5.14b/c (9b/9b+)程度とのことで、自身が初登したIceberg (V15)に途中で合流するようです。
ちなみにIcebergは氷山、Ledoborecはチェコ語ですが英語だとIcebreaker(砕氷船)を表します。

<アダムのインスタ>

 

No Kpote Only

こちらも昨年話題になったブローのNo Kpote Only。
シャルルによって例のごとく裸足で登られ、V17という世界最高グレードが付けられました。
その後、こちらも亀山凌平によって第2登がなされ Burden of Dreamsよりは簡単だろうということで暫定的にV16/17が提唱されています。

 

Burden of Dreams

現在世界で唯一のV17とされている、フィンランドのBurden of Dreams。
ナーレによって4年間、およそ4,000トライの末に初登されました。
ナーレの執念の完登劇は世界中のクライマーに勇気を与えましたね。
こちらも多くのクライマーによってトライされていますが、いまだ再登者はなし。

<Burden of Dreams>

分量が多くなってしまい、途中かなり駆け足になってしまいました。

さぁこれからどのようなネクストレベルの課題達が生まれるのか、楽しみですね。
V18が登られる日はいつかくるのか。
ではでは。