ボルダーグレードを上げるためのトレーニング 2020年秋

ボルダーグレードを上げるためのトレーニング 2020年秋

昨秋はボルダリングのグレードを上げることを目指していたと書きましたが、その具体的なトレーニング内容を記しておきます。
どなたかの参考になれば嬉しいですが、後述するようにあくまで当時の僕に必要だと考えたトレーニングです。
なので中身をそのままマネするのはおそらく非効率だったり意味がなかったりするので、トレーニングの方向性や思考を参考にしていただければと思います。

<2020年秋のボルダー成果>

 
 

トレーニングを始める前に

トレーニングに限らず何かを始める前に確認しないといけないのは、「現状」と「理想」です。
『Rock&Snow』の連載「僕らは考える石ころである」でも散々書いていますが、ステップとして以下を踏むのが鉄則ですね。
1. 現状の把握
2. 理想の設定
3. 差の把握
4. 差の埋め方の計画
5. 実行

例えば、”瑞牆のスラブ課題である十六夜(初段)が何が何でも登りたい”という人がいたとします。
その人がピンチを鍛えたり、ランジやコーディネーションの練習ばかりするのは理想への到達という観点からはあまりに非効率です。(総合的にクライマーとして成長するという観点からはgood)
自分の現在のスラブ能力を客観的に把握して、十六夜に対して何が足りないのか冷静にまず見積もり、その差(おそらく足置き、重心移動、カチやポケットの少しの保持、等)を埋めていくべきです。

<考える石ころ第1回のロクスノ。読み返すとここで全て言い切っている>

 
  

自分の弱い環はなんだ

僕の理想は冒頭のリンク記事で書いたように、「納得のいく三段、とにかく四段」だったのですが、大前提として自分のクライミングの「器」を大きくすることを目指していたため、ウィークポイントの底上げ=弱い環の強化をしたかったです。
その先にデルビヨ(三段+)などの真っ向勝負系や大きな動きの課題を目標に据えました。
(ま、結果的にはデルビヨを始めとしてそういうタイプの課題はあまり登れなかったのですが、、、笑)

で、自分の最も弱い環は何なのかと考えたときまず1つは、距離を出す動きとキャンパシングが思い当たりました。
僕は単純に素早く遠い手を出す動きが苦手であり、後述するように僕と同程度のグレードのクライマーがキャンパスラングで簡単にこなす1手ができませんでした。

もう1つの弱い環は、片手での保持です。
こちらも夏にライノの女子クライマー(と言っても二段とか三段登るくらい強いが)と比較したときに、彼女たちはビーストメーカー2000の23mm(下段真ん中)に片手3本指でぶら下がれるのですが、僕は全くぶら下がれなかったのです。

他の、引き付ける力と、両手での保持、なども特別僕は強いわけではないのですが、ひとまず他の能力は過去の自分の高パフォーマンスだったときの水準程度に戻せばOKとして、トレーニングの主眼は
・距離を出す動き、キャンパシング
・片手での保持
の2点に置くこととしました。

<参考 弱い環の話>

 
 

トレーニング内容と結果

具体的なトレーニング内容を自分なりのフィードバックも含めて書いていきます。
このボルダー力向上トレに取り組んでいたのは2020年の8月頭から10月いっぱいまでくらいですね。
11月に入ると目標課題に向け疲れを取るためにトレーニングの頻度は相当落としました。

 

基本は、クライミング

ここまで色々と語ってきましたが、トレーニングの基本は登ることを中心にしていました。
軽く登る日や岩を楽しむ日も入れれば週4~5でクライミングをしました。
クラックやリードクライミングの頻度を落とし、ジムでも外でもボルダリングの課題に触れる機会を増やすことがボルダー力向上に最も直結すると考えたからです。

方針としては、三段や四段など自分にとって難しい課題を何日かかけてでも登り切る力を付けるために、ジムでも宿題を何日かかけて完登するようにしました。
・自作の限界課題
・まだ登れていないテープ課題
・キャンパシング課題
などを中心に触っていましたかね。
instagramにジムで登っている様子などもアップしています。

<夏~秋くらいのインスタ>

 
そして週の中で1~2日は、軽く登った後に弱点克服のためのトレーニングを以下のように組み込みました。

 

キャンパシング

ライノのキャンパスボードは、105度の傾斜に月龍(ユエロン)のスローパーとインカットが約15cm間隔(同型で約30cm間隔)で並んでいて、これをトレーニングで使うことにしました。

<キャンパシングボードの番号>

大きくは以下の4種類に取り組みました。それぞれ3~4セットほど。
■High Touch ハイタッチ(1手の片手距離出し)
 ・当初の僕は1から4を取ることができなかった。これはたぶん二段三段を登る人にとってそれほど難しくない
 ・フレッシュな時にこの動作をまずは練習し、最終的には1→4は両手共に成功

■Bump バンプ(片手だけを1つずつ上げていく)
 ・1→2→3まではできるが4が取れなかった
 ・こちらも最終的には4までは成功

■Double Dyno ダブルダイノ(両手出し)
 ・1→3はすぐにできたが、瞬発的な動きを身に着けるため毎回やった
 ・1→3→2→4などと降りる動きも混ぜてできるようになった

■Ladder ラダー(左右交互にはしごのように登る)
 ・1→3→5と左右交互に取る動きを目指したが、こちらは最後まで達成できず
 ・最後のしめで1→2→3→4→5→4→3→2→1とロックしながら往復した

まず僕にとっては目標であるハイタッチの1→4ができたことは素直に嬉しかったです。
トレーニングの前後での変化動画を貼っておきますね。

<1→4キャンパトレの変化>

反省点は以下でしょうか。
・もっとラング間隔が細かいキャンパスボードを使用した方が成長を測り易かったかも
・スローパーラングの保持がそれなりに悪いので、持ち易いラングで距離を出すことに特化すべきだったもしれない。

 
 

保持

保持トレーニングはビーストメーカー2000とマイクロスを使用しました。
またそれぞれのラング幅は以下の数値mmとしています。

<ビーストメーカー2000のラング幅>

主体的に取り組んだものは片手ぶら下がりで、その日の疲れ具合にもよりますが3セットくらいをこなしました。
■片手ぶら下がり
 ・4本指と3本指で限界ギリギリまでぶら下がる
 ・大きいラングから小さいラングへ徐々に負荷を上げる
 ・上段中(50mm)→上段端(33mm)→下段中(23mm)→最上段右(20mm)→下段端(15mm)
 ・3本指は当初は下段中(23mm)にぶら下がることができなかったが、最終的には最上段右(20mm)に左右3秒くらいは成功
 ・一方で下段端(15mm)に4本でぶら下がることも目標とはしていたが、こちらはほんのちょっと浮くにとどまった

その他にも、
■両手2本指懸垂
■両手1本指懸垂
■両手クリンプぶら下がり
両手で懸垂やぶら下がりも取り入れましたが、こちらはとりあえず自分が一番調子が良い時まで戻せばよいくらいのつもりで取り組みました。

だいたい僕の中では
・フロント2(人中)とミドル2(中薬)の2本指で下段端(15mm)で3回懸垂ができる
・6mmに親指を添えないでクリンプでぶら下がれる
くらいができれば自分としては調子が良いなと捉えています。
クリンプなどももっと鍛える余地はあるのですが、課題の中でカチをしっかり握る方がまずは優先としました。

 
 

懸垂

懸垂力はかつての自分のウィークポイントでありこれまで何度か鍛えてきましたが、しばらくトレーニングから遠のくと片手懸垂などがすぐにできなくなってしまいます。
まずはキャンパシングの距離出しのためにも少なくとも、片手懸垂が左右1回できるくらいの水準までは戻す必要があると考え以下を取り入れました。
それぞれ4セットくらいやりましたかね。

■片手懸垂トレ
 ・ガバホールドで使って片手懸垂
 ・伸ばしきった状態から無理ならば、少し曲げた状態からおこなう
 ・それでも厳しければ、空いている方の手でホールドを軽く持つなどして補助片手懸垂をする

■フルロック
 ・僕は肘と脇を閉め切ったフルロックが苦手なので、完全に引き付けた状態でロックし留まる
 ・そのまま次のホールドへ手を伸ばしてどこまで届くかなどもしてみた

■素早い懸垂
 ・とにかく早く動くことを意識して懸垂
 ・身体の反動を使っても良いのでキャンパシングの距離出しをイメージする

この素早い懸垂というのが僕のウィークポイントを補うのに良いトレーニングだったかと思っています。
キャンパシングが改善した一助になったかもしれません。

片手懸垂に関しては以下の記事も参考にしてみてください。

<片手懸垂の記事>

 
 

記録を残す

超重要なのが日々のトレーニング内容を記録に残すことです。
僕は普段からすごく簡単に、
・登った場所
・内容
・感想
・体重
などをエクセルに付けているのですが、このトレーニング期間は別途Googleスプレッドシートを立ち上げてトレーニングで達成した回数などを記録しました。
具体的な数を書き込むことで上達や停滞を実感できますし、メモをしておかないと意外と1週間くらい前のことでも忘れがちです。
自分が分かればよい内容でメモしているのでかなり適当にざざっと書いたり前回と同じときは省略したりしていますが、僕の場合は↓こんな感じで「日にち」×「トレーニング内容」の枠に回数やできたかできないなどをメモっていました。

<一見暗号っぽいけれどトレ記録>

 

その時の理想に合わせてトレーニングも変化させる

トレーニングを振り返ってあらためて感じたことは、「その時の自分の理想のクライミングに合わせて、集中的にトレーニングを設定すべき。理想が変わればトレーニングはどんどん変化させるべき」ということですかね。
去年の夏から秋は、”ボルダーで成果出すぞ!”と意気込んでいたのでそこに向かって上記のトレーニングに集中できましたが、その目標や理想の自分がなければやり切れなかったように思います。

そして今はスポートルートで成果を出したいので、ここに書いたトレーニングはほぼしていません。
これまで自分自身リードに集中したことはあまりないのでまずはトレーニングというよりは単にリードや長物に時間を割いて登るくらいですが、それでもだいぶ身体の動きが違ってきます。
なのでキャンパシングとか既にめっちゃ弱くなっているかもしれません。笑


ということで細かく書かせていただきました。
何か少しでも皆さんのためになれば嬉しいです!